原ページ


Google
WWW 検索
cruel.org 検索

新古典派の生産理論

― はじめに ―

Back

商品に対する需要を、要素サービスの需要に翻訳するには、はっきり定義された技術があって、そうした商品がどう生産され、要素がどう分配され、加えてサービスから商品への変換プロセスがいくらかかるか、という明確な技術を必要とする。要するに、間接的な取引として生産を理解する必要があり、純粋交換の文脈で導いた分析ツールを、生産分析に拡張する必要がある。

 生産というのが間接的な交換だという発想は、 レオン・ワルラス (1874) とヴィルフレード・パレート (1896, 1906) のローザンヌ学派理論の核心にあるものだ。ローザンヌ学派の生産理論は、それを最終的には一般均衡体系に埋め込まねばならないのを念頭に構築されていた。だから基本的な生産ユニット——「企業」——は補助的な役割に貶められた。実はワルラス派、生産者の意志決定の役割を完全に無視している。

 ここでぼくたちが、利潤最大化、要素投入の選択、そしてその大きな結論である分配の限界生産性理論は、相当部分がワルラス以外の学者、特にヴィルフレード・パレート (1896, 1906), エンリーコ・バローネ (1895, 1896), フィリップ・ウィックスティード (1894), ジョン・ベイツ・クラーク (1889, 1890, 1899) 、クヌート・ヴィクセル (1893, 1901) によるものも多い。だが各種の生産理論の流れは当初はバラバラで、1930 年代に「パレート派」が絶好調に達してようやく、ジェイコブ・ヴァイナー (1931) とハロルド・ホテリング (1932)、ジョン・ヒックス (1932, 1939), スネ・カールソン (1939), ポール・サミュエルソン (1947) そしてかれらしく実に長い準備期間をおいて発表されたモノグラフであるラグナー・フリッシュ (1965) でまとめられた。さらなる進歩、特に生産への双対定理の適応を行ったのは、その後のR.W. Shephard (1953), 宇沢弘文 (1962, 1964)、ダニエル・マクファデン (1966) だ。生産理論のパレート派一般均衡理論 への組み込みは別のところで扱う。

 これに対し、「企業」の理論が豊かで詳細な部分均衡の栄光に包まれた形で生まれたのは、オーギュスタン・クルーノー (1838) の独創的な業績によるもので、それを発展させたのがアルフレッド・マーシャル (1890) と ケンブリッジの新古典派だ。このマーシャル派の伝統に対し、ピエロ・スラッファ (1926) は有名な批判を投げつけて、これによる瓦礫の中から、不完全競争の理論がジョーン・ロビンソン (1933) とエドワード・チェンバリン (1933) によって生まれた。クルーノーの寡占理論を復活させたのはハインリッヒ・フォン=シュタッケルベルク (1934) などで、これはその後組織理論の前面に登場してきた。

 第二次大戦後、生産理論は別の方向へと舵を切った。コウルズ委員会が開発した活動分析と線形プログラミングを活用するようになったのだ。このため、「新ワルラス派」生産理論 (e.g. T.C. クープマンス, 1951; G. ドブリュー, 1959) はパレート理論とかなり重なる療育をカバーしつつも、使う手法がちょっとちがう。その過程で、パレート派の主題がいくつかこぼれ落ちてしまったという議論もあるが、それでも新ワルラス派たちはじぶんたちの手法のほうが「一般性」が高いと主張している。

 生産理論の簡便で包括的なまとめは、ほぼどんなミクロ経済学の教科書にでも載っている。スネ・カールソン (1939), Ronald W. Shephard (1953), C.E. Ferguson (1969), M. Fuss and Daniel McFadden (1978), M. Ishaq Nadiri (1982), Werner E. Diewert (1974, 1982) および R.G. Chambers (1988) などのサーベイ論文を挙げておく価値はある。またジョージ・J. スティグラー (1941) の見事な歴史分析は十分に参照する価値がある。

 最後に一言注意を。ぼくたちは生産理論で例を議論するときに、「資本」という言葉をしょっちゅう使う。でも、読者のみなさんには気をつけてほしいんだが、今後生産の理論を扱う部分では、資本というのは生産要素として与えられたものとされ、生産の要素として新たに生産されたりするものではない資本 そのものについては別のところで独自に扱う。

topページのてっぺんに戻る

back戻る (生産理論:目次)  「生産理論:目次」  進む (『生産関数』)next

book4.gif (1891 bytes)参考文献


ホーム 学者一覧 (ABC) 学派あれこれ 参考文献 原サイト (英語)
連絡先 学者一覧 (50音) トピック解説 リンク フレーム版

免責条項© 2002-2004 Gonçalo L. Fonseca, Leanne Ussher, 山形浩生 Valid XHTML 1.1