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CUT 連載書評


 CUT はいったいなんでぼくになんかこんな書評を続けさせてくれてるんだろう。渋谷陽一が「死の迷路」訳者解説を見て、こいつはなんか書けそうだと思って依頼してきたのが最初なんだけど、当時は(いまも?)ほとんど実績のなかった人間に、なんと大胆な。
 新刊だろうと旧刊だろうと写真集だろうと経済書だろうと、なんでもできるのはホント得難い場ではある。でも、つまんないのが続くと怒られるし(「最近は山下達郎より反響が少ないですよ!」(涙))、しかも途中から吉本親子とタメはらなきゃなんないっつー……いつ打ち切りになるかとヒヤヒヤしながら書いてて、先日も「実はこんどから月刊になってコラムを刷新するんですが……」という電話がかかってきて、ああきたか、ついに終わるか、と腹をくくったら「山形さんには続けて書いていただくということで」と続くことになってしまった。なんで?!? 気がつけば、ぼくが CUT 最古参のコラム書きになってるじゃん!
 なお、下の月表示は、その号の発売月ね。執筆はその一ヶ月前。表紙の号数は、その翌月。

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CUT 2001/02 表紙は……なんか知らないアジア男 2001.01 『オカルティズム、魔術、文化流行』

 エリアーデのこの本は、理論書の中で『鍛冶士と錬金術師』と並んで好き。でも小説のほうが好きかも。ちょうどこの前の号から、CUT では、ベベ・ビュエルのぽじちぶ・しんきんぐ人生相談に変わって、星占いのコーナーとやらが始まって、その初回の軽薄さというか深みのなさにあきれて書いた。この本は、実は Harpers Bazaar や bk1 のコラムでも最近使ったばっかりでちょっと抵抗があったんだけれど、でも特に年末進行で締め切りがはやくて、新しい本を読んでいる余裕がなかった。

CUT 2001/03 表紙は RadioHead 2001.02 ナボーコフ『ディフェンス』

 ナボーコフについては、いま書いているバロウズ関連の本でも採り上げていて、まあそれとのからみで、その中で思いついたような話を書いている。ナボーコフとバロウズは、本人たちはいやがるだろうけれど、結構共通点があるのだ。たぶん、ナボコフをバロウズ風に書くことだってできてしまう。こんどの本ではそういうことをやっているのだ。
 なお、この回からレイアウトと配置がかわって、行数のしばりがきつくなったのと、あと雑誌の真ん中にコラムが移動した。探しにくくなったね、ちょっと。

CUT 2001/04 表紙は永瀬正敏とだれか 2001.03 チェスタトン『木曜の男』

 書評用にチュニジアに持っていったほかの本が全滅。結局、これだけがかろうじて何か書けそうなものだった。うーん、だからちょっと苦しい感じはあるな。あと、もう一つチェスタトンがベロックのまぶだちだというのは知らなかった。ベロックの奴隷の社会だっけ、奴隷の国家だっけ、あれは読みかけて結構おもしろいと思っていて、いつか書きたいのである。

CUT 2001/05 表紙はアンソニー・ホプキンス@ハンニバル 2001.04 小谷野敦『恋愛の超克』

 わが広報部長どののリクエストにしたがって読んだ本。もともと、「もてない男」の落ち穂拾いかと思って、あまり読む気がなかったんだけれど、いやどうしてどうして。読んでよかった。最後の新近代主義者宣言ってのがなかなか堂に入っていておもしろいし、あちこちに書いた雑文集のくせに、ずいぶんと一貫性のある本になっている。表紙はなんか恥ずかしい感じだけれど。かんちがいして買うやつが出るのを期待したのかな。

CUT 2001/06表紙はなんかベッドでごろごろしてる子 2001.05 Richard Rorty 『Philosophy and Social Hope』

 ローティ。憎めないんだけれどね。でもいちばんの根っこのところで読んでいて疑問が起きるのだ。この人が、トロツキーへの傾倒と蘭の花が好きなのをなんとか折り合わせようとして、やがてあきらめていまの考え方に至るところは結構いいし、個別の部分もそこそこいいし、現代科学の成果を前にしたときの相対主義者の考え方としてはいちばん穏当なところだとは思うんだけれど、でもぼくが考える程度のことはみんな思いつかないのかなあ。この人のどこがそんなにすごいのかな。

CUT 2001/07 表紙はAIのなんとかいうこまっしゃくれたガキ 2001.06 Brian Aldiss『Heliconia Summer』

 オールディスが原作の、キューブリック遺作『A.I.』公開に絡んで、基礎知識収集のために読み始めたけれど、なかなかいい。でも、オールディスはいつも印象の薄さがついてまわって、それはこのヘリコニアでも例外ではない。本を読んでいる間は各種の関連記憶も続いているのに、それが閉じたとたんに急速に薄れる、という感じ。

CUT 2001/08 表紙は猿の惑星 2001.07 スティーブンスンCryptonomicon, 『スノウ・クラッシュ』

 かなり前に読んだCryptonomiconでございますが、あんだけ分厚い本を読んでそれを何にも使わないのはいやじゃ。それに早川書房が翻訳する気でいるらしいし。あと、スノウクラッシュについては昔書くと言って、書いていなかったんだよね。文庫出版記念に。やっぱりかれはスピード感で細かいところをすっとばして読まないとダメだと思う。そういう粗雑さを、いいとするか悪いとするかは人によってちがうような気もするし、またそれは対象の選び方にもよると思うんだよね。

CUT 2001/09 表紙は醜悪な bjork 2001.08 『spoon.』『ARIgATT』

 久々の雑誌。雑誌レビューってもっとあっていいと思うんだよね。『オリーブ』の遺髪を継げるかもしれないとっても配慮のいきとどいた雑誌『spoon.』と、レストラン経営雑誌『ARIgATT』は最近のお気に入りです。書いてしばらくして資生堂の講演の際にspoon. の話をしたら、「あ、あれはもとロッキングオンの人が編集してて」と言われて、えー!! という感じ。関係者のヨイショとか思われるといやだなあ。でもそういえば、市川実日子に緒川たまきにホンマタカシ、と確かに『H』っぽい。なお、その時に同席していた別の人が、緒川たまきの写真を見た瞬間に「こいつ嫌い! すごいbitchで、あとこいつの母親がまた……」と爆発していて、ひょえー。それ以上の詳細を聞かなかったのが、いまにしては残念ではある。

CUT 2001/10 表紙は変にかっこつけてるジョニー・デップ 2001.09 激裏『WWW 激裏情報』ルナ『完全に行方をくらます方法』

 ネタがなくてかなり苦し紛れな本の選択。ちょうどこの頃、シュナイアー『暗号の秘密とウソ』の翻訳突貫工事に入っていて、さらにその他いくつか読んだ本が空振りばかり。うーむ。
 激裏情報に関していえば、その中身はそこそこおもしろかったんだが、ぼくが本当に気に入っていたのはにらけらのマンガのほうだったのだ。こいつは5冊買って、内外のその筋の好きな連中に配って歩いた。
 もう一つのほうは、かつての『ラジオライフ』とかののりで、住所を隠して生きるにはどうしたらいいか、という本。個人情報保護って話を究極まで進めようとすれば、どうしてもこういうところに落ち着くんだけれど……これを実践する人がいる、というのもすごいね。
 なお、この頃にいつのまにか小田島なんとかいうおばさんのつまらない星占いコーナーが消えていた。2001年の頭に始まって、星座一周くらいは保つかと思ったら、それもできなかったんだね。かわいそうに。

CUT 2001/11表紙は窪塚ようすけ……ってだれ? 2001.10 『ハリー・ポッターと炎の杯』

 ハリー・ポッターは、ぼくは最初はあまり好きじゃなかったんだが。でもこの巻でかなり評価をあげた。むずかしいネタをわざわざとりあげる勇気とかね。マラウィ行きの飛行機の中で読んで、オーストラリアで書き上げました。ただ、いまにして思えば、この展開だといろんな難しい問題をうやむやに終わらせることも可能ではあるわけで、ちょっとほめすぎたかも。実はこの回は、これだけじゃなくてベロック『奴隷の国家』もやるつもりだったが、スペースがなくなっちゃったのと、ベロックをきちんと読む余裕がなかったのとでハリポタだけになりました。

CUT 2001/12 表紙はスターウォーズ 2000.11 Duff『A Handbook on Hanging』

 メルボルンでふと買った本。いやぁ、おもしろい。最後の「首の骨を折るために必要な重量の計算表とか。それにしても文中にも書いたけれど、わからないのがふつうの首吊りがどれだけ苦しいか、ということ。鶴見済は、すぐに意識がなくなると書いているんだけれどね。どうなんだろう。情報キボンヌ。

CUT 2002/01 表紙はハリウッド有名人大集合 2001.12 『How to Take a Japanese Bath』

 これもメルボルンで買った本。いやいや、丸尾末広がこういう平和なイラストを描くと違和感というかくすぐったいというか。しかしこういう変なマナーをまともに解説した本というのはかなり貴重ではないかしら。ちょっと古めの本だけれど紹介しておく価値は……というのはウソで、締め切りと出張が重なって苦肉の策というのが正しいところ。



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