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底なしのビールジョッキ

------世界の原油が枯渇しそうにない理由

(The Economist Vol 375, No. 8424 (2005/04/30), "A Survey for Oil" 所収の "The Bottomless Beermug," pp. 13-15)


「石油は人の心の中にあるのよ」というのは、アメリカの産油地帯でよく見かけるバンパーステッカーだ。これには一理ある。ダニエル・ヤーギンはピューリツァ賞受賞の石油史『石油の世紀』を書いたが、かれは石油の歴史が驚異的なイノベーションの連続だと論じている。1859 年にはエドウィン・ドレイク大佐が、露天掘りではなく掘削によってペンシルバニアで石油を掘り当てた。これは古代中国の塩掘削の技法を応用したものだった。これが世界初の原油バブルを引き起こし、当然ながら原油が市場にあふれて価格が暴落してバブルは破裂した。

 1901 年に、意外なイノベーターたちが、テキサス州スピンドルトップというまったく見込みのなかった場所で石油を掘り当てた。かれらは掘削管を単にたたき込むのではなく、回転しながらねじこむことで、ずっと深いところまで到達できるようにした。これはすさまじい自噴を引き起こし、10 日で 1,100 万バレルの原油が吹き出してきた。これが現代石油産業の誕生を記すことになった。これまた当然ながら、このバブルも原油がますます豊富になるにつれて崩壊した。

 それなのに、このイノベーションと過剰の歴史にもかかわらず、枯渇の懸念がまたもや業界の未来に暗雲を投げかけている。今回は本当に枯渇が近づいていて、過去とはちがってテクノロジーは助けにはこないぞ、と不幸の予言者たちは言う。もしかれらが正しければ、現在の原油価格は今後のますますひどい事態の先触れでしかない。

 明らかに原油は更新できない資源であり、いつかは枯渇する。その日が遠からず間近に迫っていると考える人々は、普通はハバードのピークを指摘する。M・キング・ハバードはシェル社にいた地質学者で、1956 年にアメリカの原油生産が 1970 年代初期にピークを迎え、その後は減少すると予言した人物だ。確かにアメリカ 48 州からの原油生産は、実際に 1970 年頃にピークを迎えた。現在の枯渇をめぐる論争は、世界的な「ハバードのピーク」がいつやってくるか、という話についてのものだ。

 アメリカ地質研究所は、2000 年に包括的な調査を行い、そんなピークははやくても20年は先だと結論づけた。IEAも大まかにどういしていて、必要な投資さえ行われれば、原油供給は 2030 年以降まで制約されることはないと論じている。だが、真っ向からこれに反対するアナリストもいる。

 石油悲観論者たちの希望の星は、コリン・キャンベルとジャン・ラヘレールだ。引用されることの多い 1998 年の「サイエンティフィック・アメリカン」論文で、かれらは世界的なハバードのピークは、ちょうど今頃(2005 年頃)だと予想していた。『ガソリン切れ』だの『石油の終わり』だのと題名の陰気な本も山ほど出ている。そして石油悲観論者の投資銀行家であるマシュー・シモンズ氏は、五月にサウジアラビアの原油生産の維持可能性を疑問視する本を刊行予定だ。

発見し尽くされたか?

 基本的には、悲観論者たちの主張では、地中には固定量の原油しかなくて、人類はそのすべてをすでに見つけ尽くした、ということになる。イギリスのシンクタンクである原油枯渇分析センターのジム・メイヤーによると、「発見は明らかに1960年代にピークを迎えた。もうこれ以上北海油田は見つからない」とのことだ。かれによれば、年間原油消費量は 1980 年代以来、新発見を上回っており、世界が「発見済み」の原油ストックを食い尽くしつつあり、主要産油国 18 ヶ国(現在世界総生産の 3 割を占める)はすでにピークを過ぎている。

 石油会社が一世紀以上にわたって(南極以外の)全世界をつつきまわしてきたことを考えれば、サウジアラビアのガワールのような日産 500 万バレルの「超巨大」油田はあり得ない、と悲観論は続ける。キャンベル氏は、こうした問題の見方をきれいにまとめている:

 「枯渇を理解するのは簡単だ。アイリッシュ・パブを考えてほしい。ビールのジョッキは満杯から始まって、空っぽで終わる。閉店時間までに飲めるジョッキの数は限られている。原油もおなじことだ。ジョッキを空けられる前に、バーを見つけなくてはならないのだ。」

 だがこの議論は理念的にも現実的なレベルでも間違っている。コンサルタント会社 EnergySEER のマイケル・リンチによれば、理念的な問題は掘削可能な原油資源の量を固定したもの――つまりジョッキの中のビールのようなもの――と見ていることだ。実際には世界がすさまじい勢いで原油を消費し続けているにもかかわらず、最終的に掘削可能な原油量の専門家推計は、過去数十年にわたってどんどん増え続けている。

原油確認埋蔵量は過去20年にわたり増え続ける一方である。

 ロッテルダムのエラスムス大学のピーター・オデルは、「1971 年以来、確認埋蔵量は 1.5 兆バレルも増えています。同じ 35 年間で消費された原油量は、0.8 兆バレルにすぎません。ですから世界の原油は枯渇しているどころか、あふれているとさえ言えるわけです」と述べる。

 なぜ推計埋蔵量が増えるかと言えば、それは絶え間ない経済と技術革新の組み合わせだ。IEA はこのプロセスを以下のように説明する:「埋蔵量は絶えず、新発見や価格変動、技術進歩にあわせて改訂されます。こうした改訂はすべて埋蔵量を増やす方向に動きます」

 数十年前には、油田からの平均回収率は 20 パーセントだった。めざましい技術進歩のおかげで、これが今日では 35 パーセントに上がっている。だがこの改善にもかかわらず、油田にあることがわかっている原油の三分の二は、不経済だとして放棄されている。将来の発見や技術革新があれば、世界的なハバードのピークは魔法のようにさらに先に押しやられるだろう。評論家たちは、イギリスの北海油田は 1990 年までには生産のピークを迎えると予想した。実際には、ピークを迎えたのはやっと最近になってのことだった。

 世界中のこうした事例が積み重なって、世界的なハバードのピークがそろそろやってくるというキャンベルの予想ははずれ、そんなことはまったく起きていない。それどころか、伝説のハバードですらかなり外している。アメリカでの生産量に関するかれの予測は、メキシコ湾海底にあった大量の原油を見落としていた。これは批判として不公平に思えるかもしれない。ハバードは、過去 10 年で発達した海底掘削技術の大進歩について、知りようがなかったからだ。だが、それこそまさにここで指摘したいことだ。今日の評論家たちには、明日のイノベーションは予想できないのだ。

 原油楽観論者は、原油の将来は明るいと論じる。オデルは近著『なぜ二十一世紀の地球エネルギー経済は化石燃料が主役になるか』において、伝統的な原油生産は今世紀半ばまではピークを迎えないし、カナダのタールサンドのような非伝統的な石油資源がピークを迎えるのは、やっと今世紀末頃だろうと予想している。マサチューセッツ工科大学のモリス・エイデルマンは、「今後 20 年から 50 年にわたり市場に供給されている原油の量は、どう見積もっても無限に等しい」とまで断じている。

発見の新世紀

 だが、陰気な予測には、もっと現実的な誤謬が含まれている。「新規油田の発見の時代は終わったという見方にわたしは反論したい」とトタールのド・マルジュリー氏は述べる。冷戦などによる西側投資の制約から、世界の多くの地域ではまだ最新技術による探索が行われていないのだ。

 いい例がロシアだ。エリツィン大統領の下でロシアに民間投資が認められるようになると、最新技術や企業運営技能が大量になだれこみ、生産量は飛躍的に増大した――が、これはプーチン大統領による石油セクター弾圧で阻害されている。

  同様に、世界の他の地域もまだ「掘削不足」であり探索不足となっている。中国海洋石油総公司社長の傅成玉氏によれば「我が国の海底油田の見通しは始まったばかりであり、北海二つ分に相当する面積が未探索で残されています」。インドが近年、石油探索業界を自由化すると、すぐにイギリスのケアン (Cairn) 社がラジャスタンで石油を掘り当てた。インドの炭化水素担当総主任V.K.シバル氏は、すっと多くの埋蔵資源があり、「ミャンマー沖に超巨大油田があるかもしれない」と述べる。

 中東における未探索の可能性も大きい。石油探索コンサルタント大手のIHSエナジー社ピート・スタークは、イラクの未採掘見込みは 130 カ所以上あって、確認埋蔵量はいずれ急増すると見ている。隣のサウジアラビアは、今日すでに 2,600 億バレルの確認埋蔵量を持つ。ナイミ石油相は、現在と未来の技術により今後数十年でこの数字がさらに 1,000 億バレル増えると自信を持って述べており、さらにカリフォルニア州並の大きさを持つ、サウジ・イラク国境地域が未探索であることも指摘する。

 トタールのド・マルジュリー氏は、技術が拓くフロンティアを指摘する。「華々しいガワール級の油田は、少なくとも地上にはないかもしれませんが、『深い地平』を見てやればすさまじい機会があります」。かれの考えでは、地下一万メートル以上の大深度には巨大な油層があるはずだと言う。ただし、それらは極めて高圧か高温で、しかも酸度が著しく強いかもしれないということだ。だが技術の改善に伴って、「こうしたかなり奇妙な炭化水素」も経済的に引き合うようになるとかれは考える。

 すでに業界は、ほんの十年前には想像もできなかった深い水深で探索を行っている。メキシコ湾などでは、石油リグは水深三千メートルの海上から掘削を行っている。こうした奇跡のような技術は、最新のロボット工学や電子センサ、人工衛星機器を備えている。四方八方にくねって広がる「多方向」油田を使うことで、リグから何キロも離れた石油のポケットでも掘り当てられるのだ。

 一言で、未開拓の地域はまだたくさんある。だが、地下にはたっぷり原油があるにしても、それを市場に運ぶのには問題が伴う。必要なところに動かすには、大量のイノベーションと、勇気に資本が必要となる。

 これが石油悲観論者の二つめの大きな疑念につながる。石油産業は技術の矢玉が尽きたのではないか、というわけだ。かれらに言わせれば、技術というのも良し悪しであり、多方向油田のような技術進歩には、油田を早く枯渇させるという欠点もある。また、業界を一変させる、3D 震探波油層画像化技術といった「キラーアプリケーション」はもう出てこない、とも主張する。そして最近の石油メジャーは、まちがったコスト削減運動の結果として、上流研究開発への投資という重要な仕事を放棄している、とも指摘される。

石油悲観論

 これはハバードのピークなどに関するものよりずっと深刻な批判だ。というのもそれは、石油メジャーの生死を分ける問題の核心を突くものだからだ。だがトタールのド・マルジュリー氏は、どちらの石油悲観論も否定する。「そりゃピークはくるかもしれませんが、頂上の高原部は技術さえあれば長いこと横ばいにできます」。で、正しいのはだれだろう?

 まずは、技術も良し悪しだという議論を考えよう。確かにメジャーの持つ油田の一部では、最新技術への投資が生産を増やして、枯渇を早めようとしているのは事実だ。批判者に言わせれば、こうした技術は単にストローを太くしただけで、液体をもっとたくさん吸い出せるようにするが、でもコップが空になるのも早まる、というわけだ。

 コロンビア大学のロジャー・アンダーソンは、この「枯渇加速効果」と称するものが実在するか探して、最新イノベーションを使う 40 以上の油田やガス田を探し回ったが、それを裏付けるものは一つも見つけられなかった。かれはこう述べる:「ずっと多い問題は、石油会社は黒い黄金で金儲けをしようと必死なのに、最新の資産管理技術を無視しているということです」。かれは先進「4D」震探波生産技術を使いながら、原油がガスの生産をその時の市場や価格状況と連動させずにいる企業を例に挙げる。

 さらに、こうした批判の根底にある想定は、利用可能な埋蔵量が固定されているというものだが、それ自体が間違っているようだ。資源量が増えるなら、太いストローは今も将来も生産量を増やせる。ほとんどの場合、最新技術は明らかに油田の寿命を延ばし、利用可能な埋蔵量を増やしている。

 シュランベルジェ社長のアンドリュー・ゴールドは、25 年前には油田の試掘の成功率はたった 1/6 だったことを指摘する。いまはそれが2/3だ。同じ期間に、見つかった油井の開発成功率は、五分五分からほぼ百パーセントまで上がった。将来は、デジタル坑内センサ、リアルタイム通信機器などの組み込み機器が、スマート油田を創り出してくれるとかれは確信している。

 油井掘削のとき、企業はすでにこうした技術を使っているが、ゴールドは各企業がこうした技術をしょっぱなから油井の監視に使うべきだと考えている。過去のマネジメント哲学は「段階的な啓蒙」だった。「進むにつれて学習するわけです。いまでは最初からずっといい画像が得られて、初日から埋蔵状態を慎重に検討できます」。民間企業はそんなお金を最初から出したいとは思わないが、ゴールドはサウジ・アラムコの長期的な発想をほめている。

ハイテク砂漠

 サウジアラビア東部の吹きっさらしの砂漠の中にそびえるのは、ヒューストン最高の施設にもひけをとらない石油可視化センターだ。それを支えているのは、アメリカの NASA 以上のデータ保管能力を持ったコンピュータ群である。多くの民間企業とちがって、アラムコは油層の状況をリアルタイムで監視する観測油井に投資している。同社親玉のジュマ氏は、何百キロも離れた油井の地下深くで何が起きているかをラップトップから調べれられると説明する。同社の地質学者たちは、この監視技術でシモンズ氏の言うような油層の劣化問題はすぐに防ぐよう行動できると述べる。

 石油産業を一変させるような、新技術はないという技術はどうだろう? 推計によれば、3D 震探波画像による世界石油産業への純便益は(掘削費用の削減、探索の増加などから)年額 110 億ドルにのぼる。だが、目に見えるような大技術はないにしても、もう少し細かいアイデアが検討されているところだ。たとえばエクソンとシュランベルジェは、震探の音響調査に電磁解析を加えれば油層の可視化を改善できるのではないかと検討しており、またアパッチは大規模円形劇場 (amphitheatre. 資源工学はあまりやらなかったので、もし正式な日本語名称をご存じの方がいればご教示たもれ。なんかアイマックスのようなもの?)や特殊ゴーグルなしに 3 次元可視化が可能となる技術に投資している。

シェヴロン社副社長のピーター・ロバートソンは「会社の未来を新しい 3D 震探に賭ける気はしない」と述べる。だが段階的な技術革新は、回収率を数パーセント上げたりできるから重要だ、とも確信している。「回収の減衰曲線を平らにすれば、巨大な新発見以上の意味があります」

 ハリバートン社親玉デヴィッド・レサーは、巨大な技術革新の希望を捨てていない。かれの主張では、「3D 震探や指向性ドリルが登場したときには、だれもその可能性を見抜けなかった。重要だったのは、そうした技術の予想外の応用だった」。かれは、今日では大したことがないように思える技術も、業界がイノベーションを奨励し続ければ、明日の突破技術になる可能性は十分にある、と考えている。

 これが、石油メジャーに対する最も破壊的な批判につながる。かれらはもはやイノベーションを行うだけの余裕がないというのだ。数十年前には、こうした企業は独占技術を極度に誇り、それが自分たちの競争力の源泉だと考えていた。だが1990年代を通じて、多くのメジャーはこの分野の予算を削り、その隙間を埋めたのはシュランベルジェやハリバートンといったサービス企業だった。

 「10ドル原油が上流研究をつぶしてしまいました」とある重役は語る。コンサル企業マッキンゼーのイヴォ・ボゾンによれば、メジャーの研究開発支出は1990年には30億ドルだったのが、2000年には20億ドル以下となった(いずれも 2005 年ドル換算)。同じ時期に、サービス企業は研究投資を11億ドルから17億ドルに増やした。ちなみにボゾン氏によれば、最も大きな研究開発費削減を行ったのはアメリカ企業だった。

 「あの連中は探索しなきゃならないんですが、もうそのやりかたがわからなくなってるんです」と原油産業のために油層可視化ソフトを開発しているジオキネティクス社のロイス・ネルソンは語る。ネルソン氏は可視化ソフトの業界パイオニアであるランドマーク・グラフィクス社の創設を支援した人物なので、その批判はなかなか耳の痛いものだ。かれに言わせれば、業界は最高の技術職員をクビにしてしまい、いまや石油工学を志望する学生は相対的に少ない。「われわれは80まで引退できませんや」とかれはため息をつく。

 メジャーたちは今では、かつて自分たちの中核的な強みだった技術から離れたのはまちがいで、おかげでライバル三種類に塩を送ることになってしまったと悟っている。その三種類のライバルとは、サービス企業、「ミニメジャー」そして国有石油会社たちだ。ハリバートンのレサーは大喜びだ。「技術の所有と開発においては、メジャーからサービス企業へという根本的な変動が起こりました」。問題は、サービス企業はメジャーよりも小さいので、長期的な投資が行いにくいということだ。さらにそうした新技術が元を取るためには顧客が採用してくれなくてはならない――だが顧客のメジャーたちは尻込みしがちだ。

 イノベーションのシフトは小規模石油会社には福音だった。かれらはそれほどリスク回避的ではない。特に合併の波以来、メジャーはリザーブを置き換えるために、超寿命の大規模プロジェクトを必要とする。シェブロンのロバートソン氏は、長いリードタイムと大規模投資を必要とするプロジェクトに乗るのは、自分の企業にとってはリスキーすぎる、と言う。一方、アパッチ社長ファリス氏はまったくちがうアプローチをする。「われわれはサービス企業に行って、『なんか新しいのある? 金出すから試してみようよ』と言うんです」

インディーズの台頭

 これはみんな、大石油企業を別の形でも困らせる。国有石油会社たちは、もう最新技術を手に入れるのにメジャーの世話にならなくてもいいのだ。国有石油会社の中でも、サウジ・アラムコのような高度なところは、サービス企業から直接技術を買っている。だが他の国の多くは、「インディーズ」として知られる小規模な独立系メジャーの助けを仰いでいる。

 アメリカのアナンダルコ社社長ジム・ハケットは、市場価値 200 億ドルで年間投資 30 億ドルの規模の同社が大メジャーと張り合えるだけの規模を持っていると述べる。「そりゃ 20 ヶ国でエクソンと張り合うことはできません。でも数カ国でなら勝てます」。意志決定がはやいのと新技術を進んで採用する点以外に、資源ナショナリズムが小規模西側石油企業に有利に働く、とかれは見ている。「われわれは脅威にはなりません。セブンシスターズにも絡んでませんし。現地の人たちは、われわれがアメリカ企業だというのを知らないこともあるくらいです」

 メジャーたちが技術イノベーターとして復活するかどうかはわからない。例えばエクソンは、この点で大きな努力をしている。同社は上流の研究開発に年間6億ドルを費やし、これはライバルたちより多い。かれらは未来の油層を掘り出すには、技術が鍵となると見ている。

 国有石油会社と資源ナショナリズムの台頭は、メジャーが将来は安く手軽に石油を手に入れられないということだ。生き残るためには、かれらは適応して変化しなくてはならない――そして石油以外のものにも目を向ける必要があるかもしれない。これが次章のテーマだ。


訳者コメント:気が向いたんで訳しました。どうせ冒頭にあがってるシモンズの本は絶対どっかに翻訳されたり、またぞろだれかが受け売りで騒ぎはじめたりするから。一部の馬鹿な環境論者は、最近の原油高が石油資源枯渇の証拠だなんて無知蒙昧なことをわめきたてるし。また例のロンボルグ『環境危機をあおってはいけない』が出たとき、環境保護論者は、世界のエネルギーが枯渇しかけているという信念(中略)を実際に抱いている環境保護論者は、ほとんど(まったくではないにせよ)いないとのたまっていたくせに、ちょっと状況がかわると「実は京都議定書は石油枯渇対策だ」なんていうことを言い出す安井至のような人が出てくる。どこにそんな証拠があるんだ! 言っていることはロンボルグ本と同じなのですが、特にキャンベル論文は発表当時(1998)えらくもてはやされて、石油埋蔵量予測の決定版と言われていまだに信じている人が結構いるので、それをはっきり批判してある文章をネットにあげとくのも重要でしょう。

 ここでの論点はつまるところ:

 ちなみにここで訳出したような議論に対して必ず出てくるのは「そんな技術が今後開発される保証はない」という話だけれど、将来予想をあらゆる技術が現状で止まるという想定で行うべきだというのはあまりに極端。


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