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SIGHT Book Review: Business & Science



 ロッキング・オン社の新雑誌(1999 年現在)。前に一度、渋谷陽一が「いやあ、ぼくももうおっさんだからねえ、中年向けのおっさん雑誌を出そうと思って」とか口走っていたことがあって、あとぼくが CUT 書評を始める前に、CUTのコラムで中年向けの新雑誌(なんだっけ、「ほんとうの時代」とかなんとか、あの手のやつ)のあまりの枯れ具合に「おれもいいおっさんだが、こんな雑誌読みたかねーぞ」と怒っていて、だから企画としてはずいぶん長いことあったものだと思うけど。それが 1999 年になって、まず「だれに書かせたらいいと思うか」なんて話で呼ばれて、次におまえも書け、という話になった。

 でも CUT みたいな、書評と称しつつ実は書評以外の能書きが中心というものじゃなくて、ちゃんとバイヤーズガイドになるようなものを書け、ジャンルは SF、ホラー、ミステリーの新刊レビューを、という話だった。それは絶対に無理だから(だってオレ、そんなものの新刊なんて一つたりとも読んでないもの)、というので、じゃあなんだ、と言われてビジネス、経済、科学技術、といったあたりにしてもらったのだ。雑誌として、おっさんといってもコアな油ギッシュなおっさんではなくて、むしろ30代あたり狙いって感じの雑誌だし、そういう連中相手だとたぶんビジネス経済書みたいなのとか、あと科学技術系の話とか絶対にニーズあるでしょう。んでもって、それじゃあSFとかホラーとかはだれが、という話で、じゃあ大森望くらいでしょう、というような話になったのだ。大森望は、長期的な価値は低くて、2 年で消えるあぶくみたいな文章しか書けないけれど、手際いいガイド的な紹介はうまいから。バイヤーズガイドという意味では適任でしょう。

 ちなみに大森望は、「山形がおとなしくビジネス書だの科学書だののレビューでおさまってるだろうか」と案じていたそうな。まあ、おさまっているかは仕上げをご覧じろ。あと、科学方面は森山和道をいっしょうけんめいプッシュしたんだけれどダメだったみたい。残念。

 しかし、ほかのライター選びのセンスを見ても、確かにうまいし目は確かだよなあ。経済がらみの話でも、いきなり小野善康に目をつけるってのはなかなか。それも別に、小野善康のなんたるかを知っているわけじゃないのね。あるところで見たかれの文がおもしろかった、というそれだけ。すごいなあ。ただし森岡正博にひっかかっちゃったりはするんだけれど、でもまあ森岡も最近の急降下凋落自己満ぶりってのは、いままでのふつうの文ではわからないし、あたりさわりのないことを言わせておけば、無難におさまる人選ではあるのだ。

 なんかいろんな雑誌を見ても、まあ書いてるやつも書いてある中身も、みんな無難な線ばっかなんだよね。小林弘人はすかしてる、と批判するけれど、でもまあこういう見識があることは否定できないと思うし、手堅いなかでちゃんと冒険もするし、ロッキングオン社はその意味でかなり高く評価するべきだよなー、とは思うのだ。

 その後、書評の形式が変わって IT ネタを中心にした「サイバー砂漠にただ一人」とコラムが変更になった。その間に筆のすべりで編集長には大いにご迷惑をおかけすることとなったのは汗顔の至り。さらに少しずつデザインが変化して、2006 年に文藝春秋サイズに縮小したのにあわせてコラムの分量も減ったが、リニューアル後の記事の傾向が安易すぎるように思えたのと、あと扱うネタが同じ連載中の東浩樹とかぶっている感じがして動きにくいなと思ったところで連載終了。お世話になりました。


1999 年

SIGHT 01号

SIGHT #01 (1999 Fall)

2000 年

SIGHT 02号   SIGHT 03号   SIGHT 04号   SIGHT 05号

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SIGHT #06 (2001 冬) SIGHT #07 (2001 春) SIGHT #08 (2001 夏) SIGHT #09 (2001 秋)

2002 年

SIGHT 06号

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