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次のオリンピック開催地


 これは、確かどこか海外出張に出る直前に舞い込んだ、アンケートというか議論用の材料をくれということで書いた代物だ。出張先でうなったのをちょっと覚えている。メールでこれを送ったのが 1998 年 11 月だから、バングラの前だな。どこだっけ。

 趣旨としては、今度のオリンピック開催地はどこがいいか、というのでアイデアをくれ、というものだった。「たとえば国際問題のあるところで開催してその問題に目を向けさせるとか」「宇宙ステーションでやるとか」と、例にあがっていた回答例はかなり(ぼくの嫌いな)善意に満ちていて、どうしようかな、と思っていたんだけれど。その後、いろんな人の回答例が送られてきて、見ているうちになんかあまりにみんな脳天気で、社会問題ばかりが好きで、善意で、どうしようもないな、という感じがプンプンしてきて、さらにだれもオリンピック本来の楽しみみたいなものを考えてくれないので、つまらん。もっと単純に、世界中でかけっこしよーぜー、とかいうのが最初の発想ではないの。それをとことんやったら楽しかろう。ということで、以下の回答だ。なんか間に合わなかったらしけど。


オリンピック開催地 山形案:



 目新しい変な環境を提供できるところ。

 中身から全面みなおししないと、あの宴会はどうしようもないと思う。場所はもうどこでもいい。オリンピックに紛争解決だの平和云々だのみたいな政治性をくっつけようとする考え方は、もういいかげんうんざり。オリンピックをきっかけに、政治的課題が解決した例なんかない。課題に世界的な関心を集めた例だって、一つたりともない。オリンピックはいつもその開催地の国威発揚に利用されるだけで、その過程でいろいろな問題はむしろ拡大し、政府がオリンピックだからと勝手な強権発動して抑圧は高まり、不都合はひたすら排除されるだけなんだ。そういうふうにオリンピックを利用しようという下心が、あの宴会をつまらなくしている大きな原因だと思う。たかが広告塔とドーピング合戦と肉体面だけ肥大化した片輪の展示会なんだから、それを隠そうとせずに堂々とやればいい。ドーピングありあり、一部の競技では機械移植もやりやりオッケーにして、どこまで異常なバイオメカノイドがつくれるかを競えばいい。おもしろいよ。それにこれで、いまのオリンピック停滞の一つの原因でもある、収益逓減にも一定の解決が見られるだろう。0.01秒の差とかで大騒ぎされても、多くの人はまったく実感がわいてないと思う。そんなものに関心もてない。

 それに関連して、単に走るとか投げるとか泳ぐとか持ち上げるとか、機械のほうが優秀なことをいくら競ってもらっても、もはや無意味にしかうつらない。だから陸上とか水泳とか全部やめ。レイド・ギャロワーズみたいな発狂したような耐久とか、人間でなければできない柔軟性や適応力や総合力が要求されることをやってほしい。陸上やるにしても、もう整備・コントロールされた競技場なんかでやってもつまらない。極寒地とか砂漠の極暑地とか、ジャングルとか泥濘地とか、なるべく未整備のところでやって、しかもなるべく直前まで環境をアナウンスしないほうがいい。あるいはラッシュアワーの山手線の中でリレーさせるとか。

 すると開催地は、なるべくわけのわからない予想外の環境を提供できるところ。どこだろう。南極、シベリア、サウジアラビア、ナミビア、コンゴ、ブラジル、あるいはボリビア? 先進国でも、金にあかせて変な環境をつくりだしたり、あるいは都市環境で難しさをつくりだしたりする手はあるはず。そういう創意工夫の余地が、オリンピック(いやオリンピックに限らず)をおもしろくする鍵だろう。

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