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Dias/DiTo の短命連載

 Dias は、週刊宝石の後がまとして、光文社が 2001 年夏に創刊した AERA もどき雑誌だ。ちょっと AERA よりは低い年齢層をねらっているらしく、なにかというと 30 代 30 代とお題目のように繰り返す雑誌だな。薄い(物理的にも中身的にも)のと、あと甘糟りり子というまったくどうしようもないライターが、見識もなければ品も情報もなにもない、自慢と優柔不断とあほさ加減だけをさらけだした連載コラムを書いたり、あるいは表紙の人間が30代のはずが、20 代の小雪を引っ張り出してみたり一貫性もなかったり、いろいろダメなところ山盛りの雑誌。たまーにアフガンがらみの記事とか、ちょっとましなこともある。が、なんせ赤字が累積しまくって、存続も危うく、2002 年にはリニューアルの噂がとびかっている。

 ここに、なんかしらないけれど書評を書くことになって、3 年以上たっても色あせないビジネス書、ということで、隔月で登場ということで引き受けたんだけど……二回書いたら、もうさいそくがこなくなったなあ。切られたみたい。

パーキンソンの法則 スーパーエンジニアへの道

 DiTo は毎日コミュニケーションズが 2001 年夏に出した雑誌で、最初は隔月(で月刊タッチPC 別冊扱い)、いずれは月刊に、という雑誌(関連情報)。文化がかった PDA モバイル雑誌にしたいみたいだが……1 号目ではモバイルの哲学がどうしたとかで、開発理念みたいなのをいっしょうけんめい聞いている。まあ読めるところもなくはないが……んでもって 2 号では、モバイルスタイルが云々とカッコつけに走り、はやくもただのすかした PDA 雑誌になり下がっている……と思った次の瞬間に、もう2号で休刊してしまった。新刊雑誌はなんでもとりあえず叩かれる、あの2ちゃんねる雑誌板ですら、まったく話題にならなかったなあ。ここでもサイバーっぽいネタで書評ということで。同じページにSFマガジン編集長にして中島梓の旦那のなんとかいう人が書いていて(そうだ、今岡清だ!)、こんなやつと同格かよと思ってかなりげんなりしたのは覚えている。あと最初の号は、SFの本編集長だった志賀氏がいっぱい出てきていて、ああそういう本かという感じ。

rootから/へのメッセージ (なんだっけ? 忘れちゃった)

なんでこの両雑誌をいっしょのページにしているかというと、特に深い理由はない。えーと、どっちも D で始まるアルファベットタイトルだからってのじゃダメ? なんとなく同時期に頼まれて、まあ隔月で、さらにネタの使い回し可、ということで引き受けていたのだ。だから扱った本が、どれもどっかで見たようなのばっかでしょ? まあそういうことだ。



ビジネスマン必読。

パーキンソンの法則 連載第 1 回(『Dias』2001 年 8 月?日)

山形浩生

(原稿ファイルが見つかんないのでまたいずれ)

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リーダーシップのために:ワインバーグ「スーパーエンジニアへの道」

スーパーエンジニアへの道 連載第 2 回(『Dias』2001 年 10 月?日)

山形浩生



 この本のタイトルは必要以上に読者を狭めているし、またこれが共立出版という技術屋しか知らない出版社から出ているのも、かわいそうかもしれない。が、一方では、それは幸運でもある。それだからこそこれが10年も絶版にならずに出続けているからだ。ビジネス書をよく出すN社とかD社とかから出ていたら、とっくに絶版だったと思う。

 それがこのワインバーグ「スーパーエンジニアへの道」(共立出版)。これは技術的に優れたエンジニアになる方法の本じゃない。文系にもまったく問題なく適用できる。技術系プロジェクトの多くは、多数の人間がからむすさまじい代物になる。そういう大規模プロジェクトを成功裏に動かせるようなリーダーシップというのはどうやって構築されるのか、というのがこの本のテーマだ。

 それは技術的な卓越性、ではない。いくつかの心構えと信念。そして努力によるものだ。アイデアをどう拾い上げるか。どう育てるか。他人にどうやる気を出させるか。人を助けることがいかにむずかしいか(多くの善意の人は、これがまったくわかっていない。よいリーダーとただのお節介なバカな差は、ここのところの認識からくる)、そして組織の力を発揮するにはどうしたらよいか? そういうリーダーシップに本当に必要な能力とその育て方について、本書は実にていねいに読みやすく解説している。

 でもこの本のいちばんすばらしいところは最後に出てくる――そもそもあなたは本当にリーダーになる資格があるのか。リーダーを気取りたがるやつは多い。そしてその能力がない人間が、なんかのめぐりあわせでリーダーの地位についていることがいかに多いか(その下についた人間がいかに苦労するか)もぼくたちは身をもって知っている。本書は問うのだ。あなたは本当に、リーダーになる資質があるだろうか。単にいばりだいだけ、肩書きがほしいだけじゃないだろうか。

 本書を読んで、世の中の「リーダー」であるはずの人たちを見ると、ぼくたちは深い絶望にとらわれざるを得ない。が、あきらめるなかれ。隗より始めよ。まず、自分が少しでもよいリーダーシップを発揮しよう(あるいは必要ならそれをあきらめよう)。本書にはそのためのヒントが実にわかりやすく書かれている。肩書きに「長」がつくようになる前に、是非この本を読んでおこう。あなた自身のためにも、そしてあなたといっしょに働く人々のためにも。

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おもしろさからつかみとる知恵の本:高野豊「rootから/へのメッセージ」(アスキー)

「rootから/へのメッセージ」 連載第 1 回(『DiTo』2001 年 6月)

山形浩生



 ぼくたちの多くは、日々を漫然とすごしています。なんとなく起きて、飯を食って、適当にだべり、適当に仕事をこなして、「まあこんなものか」というところで妥協して、ちょっと興味をおぼえるものがあっても「またこんどにしよう」とそれを記憶の奥のブラックホールに追いやって、その「またこんど」は決してやってくることがない。なんとなく仕事がひけると、なんとなく遊びにいったり家に帰ってぼーっとテレビを見たりして、そろそろ寝るか、と漫然と布団に入る。そして寝際に、「あーあ、今日もつまんない一日だったなあ、おもしろいことないかなー」と思いつつ、気がつくとまた翌朝で、またつまんない一日が繰り返される。ぼくたちの生活ってのは、ほとんどがそういうものです。忙しい忙しい、と言っている人も、実はせわしないだけで、特に充実しているわけでもない。惰性で忙しいだけです。やがてだんだんと「あたし一体、なにしてんのかなー」という思いばかりが強まり、なんかしなきゃと雑誌を見たり習い事をしたりしてみるけれど、それでも事態は一向に改善せず、つまらない漫然とした生活が日々繰り返され、みんな悶々として日常を送っているのです。そう、あなただけじゃないんです。みんなそうなんです。

 この本は、そういうあなたのための一冊です。

 本書を一読するだけで、あなたはこれまでの己の不徳をば悟ることでしょう。おもしろいことが、「なんか」「どこか」にあって、それがいつか空からふってきてくれるのではないかという己の怠惰な発想を、あなたは深く恥じ入ることでしょう。どこにでもあるものの中に、著者は他の人には見えていないおもしろさを見て取ります。それは時には仕事がらみで必要となる技能の修得がきっかけだったり、出張や通勤のついでだったり。でも、ちっとも特別なものじゃない。そう、「おもしろいこと」はいたるところにあったのです。「つまんない」のは世の中でも一日でもなく、目の前のものにおもしろさを見いだせない、自分の怠慢な目や耳や鼻や手足や頭だったのです。

 電子オルガンを作るため、自分で電子オルガンの勉強をしてしまう著者。息子のつきあいで四駆のラジコンにどんどんのめりこむ著者。かつての国鉄の、蒸気機関車による峠越えのシンクロ方式の話。新潟地震とその復旧の話。子育て。この本で採り上げられるネタは、ほとんどわけがわからないほど広いのです。それらはすべて基本的には、コンピュータをどう管理運営していくか、という話の前フリなのですが、でもそれは天声人語等のくだらんおっさんおばはんコラム群のような、昨日週刊誌で読みかじったネタを半可通丸出しで持ってきた前フリとはぜんぜんちがった、本当に本質のところで通じているエピソードなのがわかるでしょう。

いま、この本に書かれたコンピュータ管理の考え方はすでにかなり時代遅れです。この本がとりあげているのは、一台のマシンを全社の人間が使うような、そんな環境です。いまの一人一台環境とはまったくちがいます。それでも、ここに書かれていることは重要なのです。コンピュータではなくても、たとえば需要の多いものをどうやって配分するか、非常時にはどう対応すればいいのか――そういうコンピュータ以外の分野でも応用の効く真の知恵が、本書には満載です。そして頭ごなしにその知恵を説教するのではなく、目の前にあるいろんなできごとから、おもしろさを媒介にして、どうやってその本質を抽出するかというプロセスまでが、この本には書かれています。名著。一読したその日から、あなたが世界を見る目は変わるかもしれません。

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(何書いたかも忘れた。激裏情報、だったかも。原稿ファイルが見つかんないのでまたいずれ)

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