それはジョージがそうイメージしてたからで……しかもしょっぱなから。

© 1997 Jamie Zawinski <jwz@jwz.org>
because george envisioned it that way... all along.

最近、ぼくは伝説の映画作家ジョージ・ルーカスにインタビューする機会がありまして。で、最近発売されたスターウォーズ三部作スペシャルエディションの話をしたわけなんですな。その会話の抜粋を少々。
(承前)

JWZ ところで、映画にいろいろ変更を加えたのが、かなり議論を呼んでますよね。

GL うーん、いや特に聞いてないが……

JWZ たとえばあの酒場のシーンですが……

GL ああ、ソロより先にグリードが撃つようになってる場面、のことかね?

JWZ いや、そうじゃなくて、言いたかったのはバンドのことで……

GL ああ、あれ……

JWZ みんな、あのおなじみのエイリアン管楽器楽団の部分が、目下売り出し中のグランジ系人気バンド「サウンドガーデン」の演奏に変わっていたので、かなり驚いたんですが……

GL うん、確かにみんな驚いたかもしれないけれど、それはだね、変更というよりは復元といったほうが正しいんだ。というのも、もとの意図はずっとああいうもので、ただ 1976 年のあの時点では、あれに類するものを映画で使うだけの時間も予算もテクノロジーもなかったってだけなんだよ。ほかにもそういうすごいものはいっぱいあるだろう! たとえばTHXサウンドシステムは1982年の、われわれが三番目のジェダイの作業をしている頃にやっと使えるようになったわけで。

JWZ でもサウンドガーデンが当時検討されてたはずは絶対にあり得ないと思うんですが――ぼくの記憶する限り、かれらのファーストアルバムは1988年かそこらですよ! スターウォーズの公開から11年後。

GL うんまあ、それはその通りだが、いや別にサウンドガーデンそのものの話をしてたわけじゃなくて――説明しよう。つまりだね。スターウォーズ三部作の復元にあたってわたしたちがやろうとしたことは、単にプリントを元の形に戻すだけじゃなくて、もともとの意図をあわせて復元する、ということだったんだ。たとえば、昔っからもっといろんな生き物がうろついててほしかったんだな、わたしたちは。現代のデジタル技術によって、それがやっと可能になった。それに類するタッチがたくさんあるわけだ。昔、それができなかったのは、主に予算と時間の制約だったわけだね。

そして同じように、あのバンドだが――わたしは最終的に、あの場面でプリントすることになったものにずっと不満だった。最初っから、当時製作現場で働いていた人ならだれでも証言できることだけれど、あの酒場には人気の高いロックンロールバンドを入れて、若い観客にアピールするようにしたかったんだよ。それと、あれがモス・アイズリーですごくナウな場所だという印象を与えたかった。

JWZ ふーん……

GL さて、新しいエフェクトの多くはデジタルで、現代テクノロジーを使ったよね。いまはそういうのが使えるし、70年代半ばの技術に縛られることはない、そんなことをするのはばかげているし無駄だし、最終的な結果は足下にも及ばないだろう! クレイメーションの恐竜を使ったらどうなったか、考えてごらんよ。レイ・ハリーハウゼンをバカにするわけじゃないがね、でも……

JWZ つまりおっしゃりたいのは、もし当時、人気バンドを映画に使うだけの予算と名声があれば……

GL まちがいなく人気バンドを使っていただろうね。もちろん。

JWZ たとえば……?

GL さあねえ、スティックス? REO スピードワゴン?

JWZ ラッシュ?

GL ラッシュ! そう、ずばりそれ。わたしの言ってることがわかるだろう。

JWZ でも今見たら、そういうバンドはえらく古くさく見えるでしょう……

GL そうそう、その通り。ちょうど、宇宙船がぶら下がってるワイアーが見えたらとか、ときどきライトセーバーがただのプラスチックの筒だとわかっちゃうとかいうのと同じだろう。そういう問題をわれわれはなおそうとしたわけだ。今回はきちんとやろう、と。もしそういうバンドを使っていたら、そして別にかれらがまるでだめなバンドだとかそういうことを言いたいわけじゃないが、たぶんその場合にもかなりお掃除作業は必要になってただろう。

JWZ たとえば、他のバンドの曲とすげかえるとか?

GL うん、そういう手もあるかな。うん、REOスピードワゴンの場合には、まちがいなくそうだ。でもあるいは、そのバンドをもう一回呼ぶとか、バンドの生き残りメンバーとかそういうのをまた集めて、再結成させて、新しいバージョンをレコーディングさせるとかね。デジタル的に。テクノビートとか入れてとか、まあわからないけど。

JWZ なるほどぉ。うん、それでいろいろ混乱がすっきりしましたね。読者のみなさんも、たぶん話がはっきりわかるようになったことでしょう。で、次の質問は、レイア姫のことです。

GL なんだね?

JWZ 具体的には、彼女の胸です。ここに書いてあることによれば、「ジェダイの復讐」の新リリースでは、奴隷娘のコスチュームを着ているのは、もうキャリー・フィッシャーじゃなくて、首から下は実はパメラ・アンダーソン=リーだとか。

GL うんそれはだね、もちろんきみだって、1970年代の美容整形技術はまだまだ揺籃期だったことはわかるだろう……

(後略)


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(皮肉ですのよ。訴えちゃいやよ。おねがい。)