ムシびん夢。

© 1995 Jamie Zawinski <jwz@jwz.org>
bug jar dream.


 ホント、寝不足だと夢がおもしろくなると思う。いい夢が見たい? 起きてろ! 毎晩寝るというぜいたくができた人生の一時期には、自分の夢なんか思い出せなかったし、特におもしろかったりシュールだったりする夢は見なかった。でも動態幻覚はホントに頭痛の種で、朝の4時頃に車を運転して家に向かうとき、家の外の木が実は木じゃなくて、青白い裸のキリストみたいなホームレス男で、妙な仕草をしているんだと思いこめちゃったりする。あるいはこんなのもある:

 それはでっかい木造 台所での早朝のことで、光がかなり上の方から差し込んできていた。向こうのトースターの横の隅っこには、大きい透明なびんがあった――2ガロンくらい入りそうな、分厚いふくれたガラス性で、古いコークのびんみたい。そのびんはコーヒー豆でほとんど満杯になってる。

 部屋を横切ろうとすると、びんの中に動くものが見えた。

「はいその通り。たぶんまたゴキブリが出てるみたい」と声が説明してくれる。

 この時点で、床を縦横に横切るアリの列が明らかとなる。こいつらはタイルの目地のところだけを通っていたので、ぼくの裸足の真下を通過していたのだった。

 ぼくの注意はコーヒー豆のびんとその中の動きに戻った。近寄りながら、これから見るはずの光景を想像しはじめた――体長3センチほどのカナブンみたいな昆虫が何十匹も、似たような色の豆の中を出たり入ったり。でも実際には、びんのなかにはゴキブリが一匹いただけで、そいつは体長が25センチ近くもあった。

「これってまるで クローネンバーグ版の『 裸のランチ』みたいだな」と思った。「じゃあこいつもしゃべれるかな」

 そいつは人間の目をしていた。驚くほど青い目。

 そいつにさわると、その皮殻の一部がむけてきて、べとべとした、汚泥みたいな内部があらわになった。そいつをよく調べるだけの暇がないうちに、もう行かなきゃと思った――ぼくの名前が 呼ばれていたからだ。もっとも、何か言われたのを耳にしたわけじゃなかったけれど。

 夢でよくあるように時間と空間がぼやけて、ぼくは外にいて木の茂った斜面を急いで 歩いていた。秋で、どこか当部のいなかで、木は枯れかけていた。地面は枯葉で覆われ、それが均質な茶色がかった灰色をしている。ぼくはえらく急いでいて、とても疲れてきて、するとまわりの森の変化に気がついた――木がもっとむきだしになってきて、歩けば歩くほど、その高い枝の部分がクモの巣でびっしり覆われてきている。地面の枯葉はどんどん細かい粉末状になってきた。夢の中ではこれがどういう意味かを理解していたので、ちょっと不安になったけれど、でもいまはその意味を思い出せない。

 急速に寒くなってきていた。ぼくは風に身震いして、そこで目が覚めた。

 数週間前に、果物とネズミの入ったボウルの夢を見た。でっかい粘土のボウルで、リンゴとオレンジとバナナでいっぱいで、果物の上や間をネズミがたくさんはい回っている。なんだかかわいいネズミだったけれど、そいつらを脅かしてかみつかせることなしに果物をボウルから取るのはちょっと骨だった。

 なんかここに「自然なんて キモチワルイ」テーマがあると思わない? それともぼくの気のせい?


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