ハロウィーン文書FAQ

The Halloween Documents FAQ
http://www.opensource.org/halloween/halloween-FAQ.html


著者:エリック・レイモンド <esr@thyrsus.com>
訳者:yomoyomo <ymgrtq@ma.neweb.ne.jp>



 1998 年 11 月 1 日にハロウィーン文書が初めて公開されてから、僕の元に文書 に関する電子メールの質問が驚くほど洪水のように押し寄せた。いちいち対応していると、ほかの仕事がなにも進みやしないので、最も一般的な質問とその答 えのリストを挙げておく。



Q. これってホントに本物なの?

 イエス。マイクロソフトも、一連の文書が本物であることを認めている


Q. どうやって手に入れたの?

 三つの異なる情報源から、僕の元に電子メールで送られてきたんだ。どんな 善良な調査報告者でもそうだろうけど、僕も情報源を明かすつもりはない。

しかしながら、ハロウィーン Iハロウィーン II に載っている、作者/ 貢献者/批評者のいずれでもないことは言っておく。


Q. 文書を公開した動機は何?

 ほぼ二十年間にわたり、僕はマイクロソフトがずる賢いマーケティングで二 流の技術を売り捌き、汚い手で競争相手を滅ぼし、面倒をさけるのに買収す るのを見てきた。内情を知る多くの人たちと同様に、僕は同業者にそれにつ いてこぼしたものだ。僕は、レドモンドのボーグ(訳注:スタートレックの、 ですよね)どもにマイクロソフトの製品を拒否し、替わりとなるオープンソ ース・ソフトウェアの開発の手助けをすることで、抵抗の意思表示をしたん だ。でも結局のところ、ソフトウェアの消費者が気付かないままなら、 何ができるというんだ?

 僕は、いつの日か真実が知れ渡ることを願って止まなかった。だから、そい つら自身の言葉を使ってマイクロソフトに審判の笛を吹くチャンスが僕個人 に訪れたとき、にこやかな外面の裏に潜むものを世間に示すため、僕は喜ん で応じたんだ。

 僕のことを、成功を憎んでいる、ビル・ゲイツを妬んでいる、挙げ句には ”ソフトウェア社会主義”などと非難する輩もいる。やれやれ、580 億ドルの純資 産だって、僕の基準では成功とはいえない。それがクズみたいな技 術と非倫理的なビジネス慣習で買った代物ならね。僕は僕のままで結構、お世話 様。それとね、社会主義者どころか、僕は筋金入りのリバータリアン(自由意 志論者)なんだぜ。僕は、前時代的な自由市場主義に基づいた反トラスト法 には反対で、司法省の訴訟に協力しないことを公に宣言しているんだ。

 僕は、マイクロソフトが政府の命令でなく、啓発された消費者の選択によっ て瓦解するのを見たいんだ。それこそが僕が一連の文書を公開した理由だね。

 もしその気があれば、より詳細に論じた憤怒のわめき声を、僕個人のサイトで 読むことが出来るよ。それを読んで不快になったとしても、それを OSI の声 明だと誤解しないでね。


Q. 注釈のついてないバージョンを手に入れられないのでしょうか?

 ダメ。こういう状況だから、著作権侵害でマイクロソフトに訴えられないよう防御するに は、ジャーナリズム、風刺作品、そして記録などに関連する著作権の判例法 における免除を、独創的に利用しなければならない。注釈なしバージョンの コピーを提供すると、僕が法律上、きわめて大きな危険にさらされることに なってしまうのが恐いのだ。


Q. リーク自体 Microsoft の差し金だった可能性は?

 一連の文書が、進行中の独占禁止法訴訟に対し、マイクロソフトが 防御を固める目的で、故意にリークされたと考えている人たちがいる。つま り、Linux の脅威を喧伝することで、マイクロソフトに現実に競争相手がい て、独占企業でないことを立証しようというのだ(というのが理屈だ)。オープンソー ス・コミュニティのエネルギーをマイクロソフトへの猛烈な非難へそらし、 Linux の進歩からもエネルギーをそらそうという、出来の悪いたくらみだと主張する人たちもいる。

 僕はどっちの説も信じない。一連の文書は、故意にリークするには、マイク ロソフトにとって危険すぎるシロモノだ。「プロトコルとサービスの脱共有 化」「OSS(オープンソース・ソフト)製品が市場に出回れないようにする」なんて ことが書かれたマテリアルは、Sherman 法違反行為の証拠として成立してしまう。 マイクロソフトのために働くどんな弁護士だって、あんな悪態をリークさせるなんて 絶対にあり えないね、特に司法省が活発に反トラスト法違反を立件しようと 活発に動いてるこの時期には!

 そのうえ、情報源の一つである、僕が個人的に知る男性は、ハロウィーン I が世に 出るまで、だれに見せればいいか判断がつかなくて、ハロウィーン IIのコピーを数ヶ月伏せていたと確認してくれたんだ。

 最後に、マイクロソフトは、ハロウィーン I が暴露されて数時間くらい、公式な対応をまとめきれなかったらしい。これについては、この件についてマイクロソフトに 問い合わせを行った最初の記者から状況をきいている。 最初にコンタクトしたとき、覚え書きの著者は「肯定、否定のコメントを拒 否し」、記者に彼のボスであるエド・ムスに話をふった。エド・ムスに連絡 を取ると、それについて話すのを拒否し、電話を一方的に切った。マイクロ ソフトの PR 会社に二本電話をかけた後に、やっと記者は声明を得ることが出来た んだ。

 複数のジャーナリストが、マイクロソフトの僕に対する最初のリアクション を、「完全にパニック状態(中略)見るにたえない」と描写したんだよ。


Q. 一連の文書はマイクロソフトという企業のポリシーを象徴している?

マイクロソフトはそうでない、と主張している。つまり、ハロウィン I と II を、現場レベルの技術報告だとしりぞけている。

 さよう、「ハロウィン I」は、スタッフエンジニアが書いているのは確かだ――でもそれに プログラムマネージャ二人と NT 開発担当重役のシニア副社長と、8 人構成 の重役会議(マイクロソフトの政治官僚組織トップで、ビル・ゲイツの要望 にのみ応える会議だ)の役員 2 人から加筆や承認、レビューを受けている。 このグループがこれ以上「公式」になるには、ビル・ゲイツ自身が参加でも してくれるしかない。

 参加者とこの内容から考えて、これに「公式」のスタンプがないのは、なに よりもなにかあったときに、知らぬ存ぜぬを押し通せるようにしたかったた めだというほうが、筋が通っていそうだ。

 皮肉なことに、もしマイクロソフトのことばを額面通りとるなら、このメモ はもっとずっとずっとのろわしいものとなる――だってもしそうならば、こ の組織においては FUD や独占支配の汚い手口が、単にトップ重役数人の思 いつきにはとどまらずに、スタッフエンジニアのレベルまでずっとここの文 化に根深く浸透しているということになるからだ。


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YAMAGATA Hiroo<hiyori13@alum.mit.edu>