経済思想史トリビア

- 経済の仕組みをあらわすために、ホントに機械を作っちゃったのはアーヴィング・フィッシャーと、アルバン・フィリップスだ。
- 同じく機械が好きだったのは、もと論理学教授だったスタンリー・ジェヴォンス。かれは論理学をやっていた頃に、いまのコンピュータの原型ともいうべき「論理ピアノ」を実際に作っている。
- アーヴィング・フィッシャーは、ロロデックス(あのアメリカ人の机によくある、ぐるぐるまわすみたいなカード式住所録システム)を発明して大もうけした。(その後、ブラックマンデー直前に「アメリカの株式市場はだーいじょうぶ、とお墨付きを出して、一気に評判と財産を失う)
- 貨幣数量説を初めて唱えたのは、コペルニクスだったらしい……が、時期だけで言うと、管子にも貨幣数量説に近い議論は出てくるのだった。
- ニュートンは、経済学方面ではあまりできがよくなかった。かれのせいで金本位制が導入され、そして造幣局長になったかれは、インフレ対策として通貨偽造者や変造者の処刑法や拷問手段をいろいろ考案して過ごした。
- 同じ物理学者でも、ベルヌーイはすごくて、限界効用の逓減(つまり、文無しの時にもらう 100 円は死ぬほどありがたいけれど、年収一億円になったらそんなのさほどうれしくない、という話)を考案して経済理論に取りこみ、いまの新古典派経済学の基盤を提供している。
- ピエロ・スラッファは、原爆投下で日本の敗戦が確定した直後に、日本国債を買いあさっている。かれはその時点で日本の高度経済成長を信じていた。
- 経済学は、実は 20 世紀哲学に大きな貢献をしていたかもしれない。ヴィトゲンシュタインは、『論理哲学論考』を書くにあたってピエロ・スラッファに恩がある。またそれを訳したりして手伝ったのは、ラムゼイだった。
- ゲルシェンクロンはロシア文学批評でも有名で、ナボーコフのプーシキン翻訳にケチをつけて大バトルを展開した。
- ルソーの「自然人」だの「高貴な野蛮人」だのというお題目に感動して、文明よくない論に走る人は多い。でも、ルソーの「自然人」というのは「自分」をもたず、なにやら集団意志にしたがってうろうろするだけのアリみたいな存在で、個人主義とまるで相容れない存在なのは知っているだろうか?
- ノーベル経済学賞は、実は他のノーベル賞とはまるっきりちがうもので、ノーベルからのお金は全然出ていない。
- なんと夫婦が両方とも別々のノーベル賞をもらった一家がいる。ミュルダール一家は、夫が経済学賞、妻が平和賞をもらっているのだ。
- グリリカス は、ナチスの強制収容所で死にかけていたのをからくも逃れ、シオニスト運動に参加してイギリス軍の収容所にもぶちこまれ、その後独学で天下の大計量経済学者になった。
- ロバート・ソローによる(とされる)根源的なマネタリズム批判:
「わたしとミルトン(フリードマン) とのもう一つのちがいはだね、ミルトンは何を見ても
マネーサプライを連想しちゃうんだよ。わたしはと言えば、何を見てもセックスのこと
を考えちゃうんだが、でもそれをいちいち論文に書いたりはせんのだよ」
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