シェリングはアメリカ経済学会会長を務めたこともあるものの、その経歴や研究は、むしろゲーム理論的なミクロ経済学的視点を使った、戦略研究に近いものといえるだろう。RAND 研究所などでこうしたアイデアを軍事戦略分析に適用しており、また経済学の分野でかれを有名にしたのも類似の発想である。その最も有名な著書 Micromotives and Macrobehavior (1978) でシェリングは、人々のごく些細な感情や動機が、マクロ的に大きな変化となって生じることを示した。有名なのが、人種ごとに居住地がわかれる現象だ。それまでこの現象は、人種差別的な有形・無形の制約によって生じるものとされていた。しかしシェリングは、「地域の中で少数派にはなりたくない」という欲望を人々が持っているだけで、居住地が自然に分離されてしまうことを簡単なモデルによって示している(後にロバート・アクセルロッドがこれをアルゴリズムとした Pascal コードを書いている。下のリンクにはその C バージョンがある)。現在はやりの複雑系/創発的な研究のはしりだ。また経済地理的な応用はポール・クルーグマンが行っている。
かれはまた、理論だけでない政策的な応用も行っており、地球温暖化、教育などの問題でも研究のみならず積極的に政治の場に関与している。
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