ケネス・フレンチは、ユージーン・ファマとセット販売で語られることが多い。経歴は一風変わっていて、学部時代は機械工学専攻、大学卒業後はしばらくコダック社で機械設計を手がけている。その後ロチェスター大学の MBA コースに入り、ファイナンスの世界に入ってそのまま博士号を取得した。その後はシカゴ大学、イェール、MIT で教鞭を取り、現在はダートマス大学のファイナンス教授とファンド会社の掛け持ちをしている。
フレンチのスタイルを一言で言うなら、データマイニング式のファイナンス研究とでも言おうか。似たような分野や指向でもファマの場合には効率的市場仮説やランダムウォーク仮説の検証といった理論的な貢献がある。でもフレンチのスタイルは、実際の株価の動きをあれこれ切って分析することにより何か特徴的な動きを見つけ、それに対する何らかの説明、ないしは実地運用上の方向性を提案する、という形式となる。フレンチがファマと共同で行った研究で最も有名なものは CAPM 理論から導かれたベータと期待収益との相関の低さをもとに、それ以外の期待収益決定要因をいろいろと指摘した 1990 年代の各種論文だ。
特に有名なのは、フレンチとファマの 3 factor modelだ。あれこれ株価の動きを見ていると、二種類の株の期待収益が CAPM での予測値よりかなり高いことがわかった:総市場価値 (market capitalization) の小さい株と、株価に対して簿価の高い企業だ。これを織り込んで、株の期待収益を求めるに際してベータに加えてこれらの要因も考慮したのが 3 factor model だ。
このモデルは CAPM と比べて抜群に予測力は高い。が、その弱みは、なぜそうなるのか、という理屈がまったくないことだ。いくつか仮説はあるけれど、それはきちんと確立されていない。このため、この「モデル」は理論的に無価値だ、とする理論家たちは多い。が、「そうなってるんだから仕方ないでしょ」というフレンチの態度はある意味で、モノができれば勝ち、という工学的な指向を反映したものといえなくもないかもしれない。
その後も二人は、エクイティプレミアムや国際的な株のクロスホールディングの少なさなどについて、数多くの論文を発表し続けている。
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