ユージーン・F・ファマ (Eugene F. Fama), 1939-

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 マーコウィッツシャープあたりに次ぐ現代ファイナンス理論の雄がこのユージーン・ファマだ。もともとタフツ大学ではフランス語専攻だったのに、株式の売買指示を事前に出す指標の開発に熱中する教授の手伝いをしたとき、それらの指標が過去については非常に予測力があるのに、将来についてははずればかりだったことから金融市場に関心を抱いてビジネス・スクールに進む。シカゴ大学で博士号を取得し、30 歳前にしてシカゴ大学の終身教授となった。

 ファマは理論家というよりは数値計算・データ分析家としての性格が強い。かれの名声を一挙に確立したのは、1965 年の博士論文だ。この論文は、株価のランダムウォーク説を検証している。つまり、将来の株価は過去の株価とはまったく独立であり、過去の株価の動きを見て未来の株価を予測することはできない、という議論を定式化したものだ。この理論自体は前世紀の早すぎた天才モーリス・バシュリエがすでに提唱していたし、コウルズなどそれを定量的に実証した人も多かった。ファマはこれを最近のデータとコンピュータを使って確認しなおした。シカゴ大学の権威あるJournal of Business は、1 号を丸ごと使ってこの論文を掲載 (1965)。その後、それを一般向けに説明した "Random Walks in Stock Market Prices" (1965/66) は一夜にしてウォール街の罫線師たちの権威を失墜させた。

 でも、なぜそこに関係があり得ないのか? それは株式市場の価格がすでに出回っている情報を完全に反映しているからだ。これが有名な効率的市場仮説 (Efficient Market Hypothesis) だ。投資家が新しい情報を手に入れて「お、この会社の株は上がるぞ!」と思った瞬間には、すでにその情報は株価に織り込まれている。だから情報格差を使って(系統的に一貫して) 儲けることはできない! もちろんどんな「情報」を考えるかでも話はちがって、弱い形の効率的市場仮説では過去の株価動向で株価は予想できず (テクニカル分析では儲からない)、中くらいだと公開情報でもダメ(公開情報は公開された瞬間に株価に織り込まれるので、それを利用しても儲からない) 強い形の効率的市場仮説では、インサイダー情報を使ってもダメだ、となっている。実際のところは、弱い形と中くらいの間程度だろうと思われている(現実に、情報が伝わるには時間がかかるし)。ちなみにここでも、バシュリエは数十年前に同じ知見に到達してはいたし、マンデルブロも同時期に類似の洞察を行っている。

 その後、各種の研究に手を染めていたファマが、再び大きく脚光を浴び始めたのは、1980 年代末から現在にいたる、ケン・フレンチとの一連の共同研究のおかげだ。効率的市場仮説を前提に株価など資産価格を求める理論式としては、シャープリントナーの CAPM (Capital Asset Pricing Model) が主流となっていた。が、このモデルには大きな問題があった。ちっとも当たらないのだ。ファマとフレンチはあれこれ株価の動きを見ていると、二種類の株の期待収益が CAPM での予測値よりかなり高いことをつきとめた:総市場価値 (market capitalization) の小さい株と、株価に対して簿価の高い企業だ。これを織り込んで、株の期待収益を求めるに際してベータに加えてこれらの要因も考慮したのが 3 factor model だ。

 これは実によくあたり、実務家方面には猛然と普及した。が、このモデルの弱いところは、なぜこれがそんなに強い予測力を持つのか、という理論的説明がぜんぜんないことだ。とにかくそうなっていて、とにかく当たる、という以上の話はない。人によっては、この「理論」は理論の名に値しない戯言だとまで言う。

 最近では、ファンド会社の研究部門長としての仕事と教職とで時間を二分している。またファマは、経済学界で有数のスポーツマンでもある(下の動画版インタビューではフットボール選手時代の画像なども出ている)。なぜ教師をやめてファンドのビジネスに注力しないのか、と聞かれて、ファマは「だって教師以外に午前中ずっとウィンドサーフィンしていて怒られない仕事があるか?」と答えているほど。

ユージーン・F・ファマの主要著作

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