ロナルド・H・コース (Ronald H. Coase), 1910-
コースはLSEで教育を受けた、シカゴ学派の一員だ。経済理論への貢献では、二つの点でとても有名な人物だ。コースは、企業の性質に関する研究 (1937) で、企業は経済システムの内部にある主体として考えるべきだと論じ、その存在が唯一正当化されるのは生産の取引コストがあるからなのだ、と述べた。企業などの経済組織や制度は、要するにエージェントたちが、取引コストを最小化する手段として便利だと思うから存在するんだよ、ということだ。
第二の貢献は、有名な「コースの定理」 (1960) を世界に訴えたこと。経済取引や生産の外部性を「内部化」するには政府が税金や補助金を使うしかない、というピグーの理論に対して、コースはもし機会費用を十分に考慮したら、そんな仕組みは要らないよ、と論じた。民間の勝者も敗者も、こうした外部性を協議によって自分で「内部化」できるし、出てくる結果はその外部性の原因の所有権をどっちが持っているかとは関係なく、まったく同じになる。一言で言えば、財産権の最初の割り振りは、リソース配分の効率性には影響しない。一つだけ例外があることはコースも認めていて、それは協議に取引コストがかかる場合だ。
この二つの定理は、経済学で広く応用されるようになっている――さらには法学、社会学、政治科学(特にそれぞれのシカゴ派閥)などにも活用されているし、「新制度学派経済学」という分野を立ち上げることにもなった。これによってロナルド・コースは、「帝国主義者」、つまり経済分析を、経済学以外の分野にもどんどん応用しちゃおうという派閥の筆頭格の一人となった。こうした定理の功績により、R.H. コースは 1991 年にノーベル賞を受賞している。
ロナルド・H・コースの主要著作
- "The Nature of the Firm", 1937, Economica.
- "The Marginal Cost Controversy", 1946, Economica.
- British Broadcasting: A study of monopoly, 1950.
- "The Problem os Social Cost", 1960, Journal of Law and Economics.
- "Durability and Monopoly", 1972, Journal of Law and Economics.
- "The Lighthouse in Economics", 1974, Journal of Law and Economics.
- "Marshall on Method", 1975, Journal of Law and
Economics.
- "The Wealth of Nations", 1977, Economic Inquiry.
- "Economics and Contiguous Disciplines", 1978, Journal of Legal Studies.
- "The New Instittuional Economics", 1984, Journal of Institutional and
Theoretical Economics.
- The Firm, the Market and the Law, 1988.
- "The
Institutional Structure of Production", 1992, AER
- "The Institutional Structure of Production", 1993, in Williamson, editor, Nature
of the Firm.
ロナルド・コースに関するリソース
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