カール・グスタフ・カッセル (Karl Gustav Cassel), 1866-1945.

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Portrait of G. Cassel

 グスタフ・カッセルは、影響ある経済学者の中でも、万人に毛嫌いされているという独特な一群に属するというかわいそうな存在だ。かれが何年も教えてきたストックホルム学派は、かれらの敬愛する師匠であるクヌート・ヴィクセルとカッセルが険悪な競争を繰り広げたため、カッセルとは距離を置こうとあらゆる手を尽くしてきた。ワルラス派はカッセルの一般均衡に関する研究を絶賛したが、効用理論に対する攻撃については眉をひそめた。マーシャル派はその正反対の理由でかれを嫌った。オーストリア学派は、カッセルがベーム=バヴェルクの資本と利子の理論を葬り去るのに一役買ったことで恨んだ。そして最後にケインズ派も、ケインズ革命の最も声高な反対者の一人に対して好意などあるわけがない。それに拍車をかけたのは、カッセルの他人の神経を逆なでする性格と、他人の業績を認めようとしない態度だった。ハンス・ブレムスが言うように:

「カッセル以上に手厳しい著述家はなかなか見つからない。マルクスは少なくとも、ケネーやリカードを評価はした。カッセルはだれも評価しなかった。一般均衡の初の連立方程式系を書いたのはワルラスだ。パレートはそれを刈り込んで、一切の感覚を取り除いた。カッセルは二人の成果を使いつつ、どちらにも言及しない。(中略)私たちは、カッセルが他人に示した態度をカッセルに対して取ってはならない。カッセルも先駆者として敬意を表さなくてはならない。」(H. Brems, 1981: p.158)

 それでも、これだけの敵意を受けながらも、グスタフ・カッセルはいまだに20世紀経済学の静かな巨人ではある。カッセルは、その見事な『社会経済の理論』Theory of Social Economy (1918) で ローザンヌ学派の栄光を維持し続けた。だがそこでも奇妙なひねりが入っていた。限界生産性が捨てられて、固定係数技術が採用されている。効用理論は、かれの1899年の研究を受けて、脇に押しやられている。かれの意見では:

「このまったく形式的な [効用] 理論は、いかなる形でも実際のプロセスに関する我々の理解を広げるものではないし、価格理論にとってはどのみち余計なものでしかない。(中略)この単一原理から需要の性質を導くという手口については、実に多くの児戯めいた喜びが引き出されているが、それが可能になっているのはわざとらしい構築と現実のとんでもない歪曲のためだけでしかない」 (Gustav Cassel, Theory of Social Economy1918: p.81).

 それでも需要関数に基づくカッセルの一般均衡系は、1930年代ウィーン学団の必読文献だし、カッセルがこの本を書いていなければ、現代の新ワルラス派経済学構築に大いに貢献したジョン・フォン・ノイマンやエイブラハム・ワルドの多大な貢献は存在しなかっただろう。「安定状態成長」均衡 ("steady-state growth" equilibrium) の概念が導入されたのは、かれの研究によるものだ。 ワルラス=カッセル 系についてはリンクをクリックしてほしい。

 他の貢献としては、為替レートの「購買力平価 (purchasing power parity)」理論 (1921) とビジネスサイクルの「過剰消費」理論 (1918) がある。また『利子の本質と必要性』(Nature and Necessity of Interest (1903)) は、ワルラスの資本理論復活の試みだった。またドイツ戦時賠償金問題についても検討している。ケインズ『一般理論』書評 (1937) は、最も手厳しいものの一つだ。

グスタフ・カッセルの主要著作

Resources on Gustav Cassel


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