ジョン・メイナード・ケインズ『雇用、利子、お金の一般理論』 (1936) 観光に対する反応は即座にあらわれ、かなりの論争を招いた。そして若き経済学者たちと高齢の経済学者との亀裂がすぐに生じた。
ケンブリッジからはケインズの弟子たちが、かれの考えをさらに説明すべく、次々に論文を出した。ジョーン・ロビンソン (Robinson, 1937) やジェイムズ・E. ミード (Meade, 1936, 1937) という ケインズ「サーカス」の二人は、『一般理論』のことさら上手な「再説」を発表した。サーカスの三人目オースチン・ロビンソン (Robinson, 1936, The Economist) の論文はもっと広い読者層を得た。
だが、ケンブリッジの教授陣の間では、その結果は悲惨なまでに対立的なものとなった (その記述としては Kahn, 1984; Skidelsky, 1992 を参照)。J.M. ケインズは、かつてのカンタブリッジの同僚たち - アーサー・C・ピグー、ヒューバート・D・ヘンダーソン、デニス・H. ロバートソン、ラルフ・G. ホートレーなど——をほぼ完全に敵に回してしまった。この争いはもっぱらケンブリッジの構内における個人的やりとりにとどまっていたが、怒りの一部は活字にもなった。A.C. ピグー (Pigou, 1936, Economica) は『一般理論』で「悪玉」にされてしまい、即座に反撃に出ようとしたが、その反攻は弱々しいものだった。H.D. ヘンダーソン (Henderson 1936, Spectator) は、輪をかけて個人攻撃まみれの反論を連発した。これに対し、デニス・ロバートソンの反論 (Robertson 1936, QJE) はずっと中身もあるもので、ケインズとのちょっとした誌上論争につながった。
ケンブリッジの外でも、『一般理論』需要の世代的なちがいは明らかだった。イギリス(およびオーストラリア)では、若きアバ・ラーナー (Lerner 1936, Int Lab Rev), W.B. レダウェイ (Reddaway 1936, Econ Record), ジョン・ヒックス (Hicks 1936, EJ)、ロイ・ハロッド (Harrod 1937, Econometrica) はかなり好意的な書評を書いており、D.G. チャンパーノウン (Champernowne 1936, RES) はちょっと批判的だった。
不思議なことに、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスでのケインズのかつてのライバル、フリードリッヒ・A. フォン=ハイエクもライオネル・ロビンスも、ケインズの新著の書評を書いていないどころか、コメントすらしていない。だが被害は甚大だった。最も有望な学生たち——特にラーナー、ヒックス、そして後にはカルドア——が『一般理論』に夢中になったことで、イギリス経済学の王座をケンブリッジから奪取しようという LSE の試みは終焉の始まりとなったのだった。
アメリカからは、当初の反応は冷淡だった。初期の書評は、ほとんど完全に否定的なものばかりだった——ジェイコブ・ヴァイナー (Viner 1936, QJE)、アルヴィン・ハンセン (Hansen 1936, JPE)、ジョセフ・シュムペーター (Schumpeter 1936, JASA)、フランク・タウシグ (Taussig 1936, QJE), Wassily レオンチェフ (Leontief 1936, QJE), C.O. Hardy (1936, AER) フランク・ナイト (Knight 1937, Canadian JE) がそうした例だ。こうした書評の中で、ケインズが敢えて反論したのはヴァイナーのものだけで、これがいまや有名なかれの論文"The General Theory of Employment" (Keynes, 1937, QJE) だ。
ナチスドイツを不幸な例外として(ここでは翻訳が「通常よりよい紙質で、通常よりさほど高くない値段で」とケインズ自身は述べている)『一般理論』は大陸ヨーロッパではほぼ黙殺された。刊行された書評数編、特にスウェーデンのグスタフ・カッセル (Cassel 1937, Int Lab Rev) とオーストリアからのゴットフリート・ハーバラー (Haberler 1936, ZfN) によるものは、かなり批判的だった。フランスでは、ジャック・レフなど影響力の高い保守派経済学者の専門的な(そして個人的な)反発のせいで、同書は1948年まで翻訳すらされないこととなった。
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