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木を見て、森も見てみると:森林は増えている

(The Economist Vol 381, No. 8504 (2006/11/18), "Seeing the Wood" p. 84) Ciel mon samedi !
Photo by **Fanch** [ Manannan ]


山形浩生訳 (hiyori13@alum.mit.edu)

森林の新しい数え方によれば、思っていたより樹木は多い。

  農業や林業のための森林の伐採は、世界中でとても不安な速度で進んでいる。でも話はそれで終わりじゃない。新しい研究によれば、少なくとも比較的豊かな国では、切り倒されるよりずっと多くの木が生えてきているとのことだ。

  フィンランドのヘルシンキ大学の、ペッカ・カウッピ (Pekka Kauppi) 率いる研究者団は、世界の森林にずばりどれだけ炭素が蓄えられているのかをつきとめようとした。そして1990 年と 2005 年時点の、世界の 50 ヵ国における森林の状況について国連食糧農業機関 (FAO) のまとめた報告書を分析した。また、何百年も昔からの各国のデータベースからの情報も使った。

  単に世界各地の森林面積を推計するにとどまらず(伝統的に森林被覆率を計る方法はこれだった)、樹木の大きさ、有機物の重量、木の密度まで考慮にいれて、「森林アイデンティティ」なる代物、つまり森林の炭素保持力の指標をかれらは計測した。結果は、Proceedings of the National Academy of Sciences に掲載されたが、一人あたり GDP 4,600 ドルを越えるすべての国――いわばチリより豊かな国すべてということだ――では森林は回復している、というものだった。これより貧しい国の一部でも、森林育成を推進する政策を持っているところは、炭素を同化する能力が全体として向上していた。

  世界的に見ると、樹木やそれに伴う有機物は毎年減少していて、一部の場所では記録が残っている期間ずっと減り続けている。特にブラジルとインドネシアの管理のまずさは頭痛のタネだ。アメリカや中国はこの両国より大量の材木を伐採しているけれど、でも失った樹木の量で見るとこの両国のほうが上だ。

  でも他のところでは様子はこれほどひどくない。エルサルバドルやドミニカ共和国などの熱帯地域での樹木被覆は最近増えている。ロシアとスカンジナビアの木も増えている。それどころか、温帯林と亜寒帯の主要森林はすべて広がってる。研究者たちによると、「森林アイデンティティ」は世界の森林国上位 50 国のうち 22 ヵ国において、過去 15 年で拡大しているとか。

  森林はまた、世界で最も人口の多い国二つ、中国とインドでも広がっている。まだ貧乏国とはいえインドの森林は縮小が止まった。中国では、森林の密度は 1949 年以来全国各地で低下したが、森林地域の面積は着実に広がっている。それらを相殺してみると、中国に生えている樹木の数は増えている。森林減少から増加へと転じた国としては、他に韓国やベトナムがある。

  研究者たちによれば、このトレンドは部分的には各国が発展して豊かになるときに生じる社会変化の結果だという。たとえば、地方在住者が都会に出てくることなどだ。都市化は、暖房や建築用に森林が切り倒される確率を減らす。世界がもっと繁栄すれば森林も増える。森林がすべて消滅するといったニュースはかなり誇張されているらしい。


解説

へえへえへ~~~え。木のボリュームまで考慮にいれるとそうなるのか。

 あと本稿で重要なのは最後の部分。都市化すれば森林破壊は止まる! 高密に住めばエネルギー効率その他は上昇するし、高層化もするから、地方部に人がぶわっと広がるよりも森林は増えやすい! これは意外に思える。エコロで森林を愛する人はたいがい、アンチ都会で C.W.ニコルみたいに田舎でログハウス生活なんてのをやりたがるもんね。でもそういう生活のほうがかえって森林破壊をもたらしやすいのか。森林破壊を止めるためにも都市移住を進めたほうがいいわけだ。言われてみれば納得。森社長パオロ・ソレリくん、あなたたちの言う通りでございますね! しかし冗談ぬきで、本当に重要な論点だと思う。


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