CYZO 2006/7号。表紙は上野樹理 山形道場 復活第 ?? 段

今月の喝! おまぬけなグーグル翼賛論

(『CYZO』2006 年 7 月)

山形浩生

要約: グーグルがすべてを支配して知のあり方もグーグル検索ですべてすむようになると思っている人たちは、グーグルがどうやって検索結果を出すのか忘れている。あれは少数の人が既存の知的体系に基づいてページやリンクを作成するからこそ、それを参考に正しい検索結果が出る。したがって、それが完全に置き換わることはあり得ない。全員がグーグルに頼るようになったとき、グーグルはまったく役にたたなくなる。



 地球温暖化の話となると、現在ではアメリカを悪者にして溜飲を下げるのが常道となっている。アメリカは自国の企業の利益を優先して京都議定書を批准せず、二酸化炭素削減に協力しない。おかげで温暖化が進行してしまっている。だからアメリカはけしからん、という理屈だ。

 これは一見もっともらしい。他の先進国ががんばって削減しているのに、アメリカがその足を引っ張ってるんなら、他の国としては当然おもしろくないもんね。

 でも、他の国はほんとに頑張って削減してるの?

 ぼくは、やってるんだと思っていた。京都議定書を批准しないと言ってアメリカを非難しているいるカナダ等の諸国――そいつらはみんな、着々と京都議定書の削減目標を達成しつつあって、だからこそアメリカの傲慢不遜な態度に文句を言ってるんだと思っていた。

 ところが、こないだのクリスマスイブの日に東大の渡辺正教授が毎日新聞に書いていた記事を見て驚いた。ちがうじゃん。連中、全然削減できてないじゃん。

 削減目標は各国ともちがうけど、日本やヨーロッパは一九九〇年より六パーセントとか七パーセントとか減らすことになっている。ところが、現時点での各国は……カナダが二四パーセント増、スペインは四二パーセント増、ポルトガルは三七パーセント増だって? 日本もほぼGDP成長と同じくらいの増加ぶり。他の議定書批准国だって大してマシってわけじゃないぞ。議定書の目標年は二〇一二年だ。あと六年ほど。これからこのトレンドを逆転させてがんがん減らす? 明らかに無理でしょ。一方、アメリカは非難されるけれど、増加はたった一三パーセント。議定書批准国よりかなりましだったりするのだ。

 そもそも、二酸化炭素排出削減を、温暖化「防止」と呼ぶこと自体がまちがっている。どうがんばったってそれは温暖化「緩和」にしかならないし、京都議定書が批准されたとしてもその緩和具合は鼻くそみたいなもんだ。だが、それは置いておこう。鼻くそでもやらないよりはまし、ということにしておこう。

 でも二酸化炭素を減らすのが狙いなら、問題は紙切れにサインしたかどうかなんていう形式的な話じゃない。実際に減らせたかどうか、せめて増やし方を最小限に抑えたかが問題だ。減らすと約束したくせに、何の成果も挙げてないどころか目標なんかおかまいなしの排出増大をしてるような国々が、比較的増大ぶりの少ない国を非難できた義理かね。単にサインしないというだけで? いやむしろはじめからできないことにはコミットしないというアメリカの態度のほうがまだしも誠実なんじゃないの?

 京都議定書は二〇一二年までの話だけれど、そろそろ京都の次はどうしようという話が出てくるだろうし、それと同時に京都議定書はどんな成果を挙げたか、という総括も必要になる。そして現状から見る限り、それは確実に京都議定書の失敗をどうやってごまかして言い訳しようかという相談になる。賭けてもいいが、そのとき必ずや壮大なアメリカ叩きが始まるはずだ。実現できなかったのはアメリカが批准しなかったせいだと言って。でもそのとき、その叩いている国々が約束通りの成果を挙げたのかというのは、ちゃんとチェックしたほうがいいだろう。日本も含め。そして、そろそろ目標がまったく達成できないのは見えてるんだから、チームマイナス六パーセントとか勇ましいことを言うのはそろそろフェーズアウトさせたほうがいいんじゃないかなあ。

 まあ落とし方としては、成果があがらなかったことはほっかむりして、いろいろ削減っぽい小ネタを並べて「今後の本格的な削減に向けての準備ができた」とかいうんだろうが、そういうのが出てきたときには、読者のみなさんは眉に十分ツバをつけてほしいな。では。

近況:沖縄にくるとき、パスポートが不要だったのでつい驚いてしまいましたよ。でも、きてみたらえらく寒くてびっくり。なんだ、ここは年中夏だったんじゃないのか!


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YAMAGATA Hiroo <hiyori13@alum.mit.edu>
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