CYZO 2005/01号。表紙は田辺はるか 山形道場 復活第 ?? 段

今月の喝! 神保哲生のインチキ煽り報道。

(『CYZO』2005 年 1 月)

山形浩生



 ぼくは本誌の記事は巻頭グラビア以外ほとんど見ないんだけど、今回たまたま中の方を見て、目を疑ったね。なんだい、この神保哲生という人物の連載は。かれが 12 月号の連載で書いていたのは、今年の日本でのクマの大量出現や台風上陸に便乗してマスコミが地球温暖化の煽り報道をしないのはけしからん、という話なんだけど、ここまでひどい歪曲は、最低の恫喝エコ団体しかやらないぞ。

 まず、今年は台風上陸は多かった。でも、上陸するかはたまたまのコースの話で、そのコースだって十分に例年の変動範囲内だし、それが地球温暖化と関係あるなんてまともなやつは誰も言ってない。だいたい台風そのものは別に極端に増えたりしてない。

 途中の話もあやしげなものばかり。気候変動と言う表現が最近? 何言ってんの? 十年以上も前からある IPCC の CC って何の略だと思ってるの? これはむしろ、温暖化の有無がはっきりしなかった時期の表現でしょ。そしてその IPCC が「向こう百年の間、地球は激しい気候の変動を繰り返しながら最大で気温が 5.8 度程度上昇するだろうとの見通しを明らかにしています」(強調引用者)だって。どこで? いまの連中の気候シミュレーションに「激しい気候の変動」なんて言える精度ないのに。まして「干ばつや大洪水、熱波に寒波、砂漠化等々を繰り返しますよ」なんて無責任なことは絶対言わない。少なくともそれが温暖化のせいだ、なんてことは。勝手な脚色するなよ。そして実際問題として、世界的に見てもそんな天変地異増加の様子はない……という話は全部、ぼくの訳した『環境危機をあおってはいけない』に出てるから読めよ。

 さらに議定書に関しても「中国やロシアはもともと排出量が少ないので、議定書が発効しても経済活動が制約を受けることはありません」だって。ほーぉ。中国が排出量を抑えるのが簡単? 8 パーセントの成長を続けて、燃料価格がつり上がるほど石炭石油を大量に輸入してるところが? それに京都議定書の最大の問題が、今後成長して二酸化炭素の主要排出源となる途上国が加わっていないことだ、ということもわかっていない。

 そしてマスコミがクマや台風に便乗して温暖化問題を煽らないのは排出努力をさぼりたい産業界の圧力ではという邪推が結論。やれやれ、最後は定番の陰謀論ですか。まずね、日本はもともと欧米と比べてかなり二酸化炭素の排出が低い。日本はオイルショックの影響でがんばって技術革新したもん。それにエコロは宣伝に使えるから、きつい中でも各社すでにかなり削減努力をしてるんだよ。国の予算だって、温暖化関連事業がどんだけあると思う? 煽ってくれたら予算がつきやすくてありがたいくらいだ。だいたい削減コストが税負担に転嫁されるのを心配してるけど、どのみち企業が排出削減努力をしたら、そのコストは製品価格にのって、結局それを負担するのは一般消費者なんだよ。

 つかみも、途中も、結論もすべてまちがい。なんだいこのヨタは。そして、そういう悪質な我田引水の便乗偏向報道をしないからといって他のメディアを批判する? 本末転倒もいいところだ。

 さて他人がそういう偏向歪曲報道をしないといって批判する神保自身は、おそらく平気でそういうまちがったことをするだろうと考えていいだろうね。この記事でやっているような、聞きかじりの誤情報や歪曲を混ぜて、身勝手な主張の旗をふるような真似を、今後も絶対やるだろう。かれの狂牛病がらみの「報道」だって似たりよったり。で、だれなの、この神保って。ビデオジャーナリスト? へえ、ぼくはこういう人をジャーナリストとは呼ばないんだけどね。



近況:名古屋で台風直撃食らった! アマチュア無線三級落ちた! いいことないっす。



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