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サマーズ、バーナンキ他『景気の回復が感じられないのはなぜかー長期停滞論争』(世界思想社) 日本語版サポートページ

サマーズ、バーナンキ他『景気の回復が感じられないのはなぜかー長期停滞論争』山形編訳

 元財務長官サマーズが唱えた新長期停滞論に、元FRB議長バーナンキが反論し、ノーベル経済学者クルーグマンが割って入った! 論争の様子をたどり、日本経済への処方箋を提案する、日本オリジナル編集版。提唱者ハンセンの元祖長期停滞論付き。

目次

  1. 正誤表
  2. 掲載論文の英語オリジナル
  3. その他リソース

1.正誤表

各種訂正 (2019/04 現在)

Page 位置 正 (改訂部分は)
*1

*1:

2.掲載論文の英語オリジナル

2.1. サマーズ「アメリカ経済は長期停滞か?」
Larry Summers, "IMF Fourteenth Annual Research Conference in Honor of Stanley Fischer" (2013.11.08)
 ローレンス・サマーズが、新・長期停滞論を初めて提案した講演。リーマンショック/大不況後の回復の遅さが異様であり、大恐慌が避けられたことを自画自賛するのではなく、回復の不在について真面目に考えるべきだと提案した皮切りの講演。恩師スタンリー・フィッシャーの業績を称える趣旨のイベントだったけれど、単なる恩師のヨイショと思い出話はせずに、彼の業績の精神に則った新しい問題提起を行ったおもしろい講演。実際の講演のビデオはこちら

2.2. サマーズ「遊休労働者+低金利=インフラ再建だ!」
Larry Summers, "Idle Workers + Low Interest Rates = Time to Rebuild Infrastructure" (Boston Globe, 2014.04.11)
 ローレンス・サマーズが、ボストンの新聞Boston Globeに発表した、アメリカのインフラ(教育も含む)の惨状とその解決策としてのインフラ投資の必要性を述べ、現在の低金利・高失業環境がその絶好の機会だと訴えた論説。長期停滞の解決策のアイデアが初めて登場した論説。一般紙の記事なので、長期停滞という考え方そのものは登場していないけれど、サマーズの中でそれがすでにまとまっていたことがうかがえる。

2.3. サマーズ「財政政策と完全雇用」
Larry Summers, "Fiscal Policy and Full Employment." (Center on Budget and Policy Priorities での講演、2014.04.02)
 ローレンス・サマーズが、新・長期停滞論を理論として明確にまとめ、回復の遅れとそれが慢性化しつつあるのではという懸念、そしてそれを打破するための大規模財政出動という流れを提示した最初期の論考。

2.4. バーナンキ「なぜ金利はこんなに低いのか」
Ben Bernanke, "Why are interest rates so low?" (2015.03.30)
 バーナンキが世界的な金利の低さについてとりあげ、中央銀行が金利を引き下げているとは言えないことを指摘してそれが経済の状態によるものだ、と主張した論説。FRB議長退職後に開設したブログの (開設の辞を除けば) 最初の投稿。

2.5. バーナンキ「なぜ金利はこんなに低いのか 第二部: 長期停滞論」
Ben Bernanke, "Why are interest rates so low, part 2: Secular stagnation" (2015.03.31)
 バーナンキがサマーズの長期停滞論について明示的に取り上げ、それを批判したブログ。金利がマイナスになっているというサマーズの指摘自体がおかしい、そんなことはあり得ない、だってそれならどんな無駄な投資も儲かることになってしまうと指摘。金利は低いのだから、儲かる投資対象はいくらでもあるはずで、大規模投資が不足しているので政府がそれをやれというのはおかしい、そのための資金は外国に流れることだってできると述べてたもの。

2.6. バーナンキ「なぜ金利はこんなに低いのか 第三部: 世界的な貯蓄過剰」
Ben Bernanke, "Why are interest rates so low, part 3: The Global Savings Glut" (2015.04.01)
 長期停滞論以外の低金利の要因として、バーナンキは世界的な貯蓄過剰をあげる。低金利なのは産油国や中国やドイツが貿易黒字の外貨をやみくもにためこんでしまっているからで、それを放出させれば金利は正常化する、と主張している。この三回のブログ投稿は1日おきで、実際にはまとまった一つの投稿として解釈すべきもの。

2.7. サマーズ「バーナンキによる長期停滞論批判に答える」
Larry Summers, "On secular stagnation: Larry Summers responds to Ben Bernanke" (2015.04.01)
 バーナンキに対して、ローレンス・サマーズが反論。ゼロ金利は歴史的にもあったしいまも起きている、他に投資先はあるというが、日本もヨーロッパも低金利で、アメリカの資金が外国で高収益を得られる様子はないことを指摘。同時に、バーナンキの主張はまちがいではないけれど、それは長期停滞論と決して相反するものではないことも述べている。

2.8. クルーグマン「一国と世界で見た流動性の罠」
Paul Krugman, "Liquidity Traps, Local and Global (Somewhat Wonkish)" (2013.11.08)
 クルーグマンが、サマーズとバーナンキの論争についてコメント。特に、ゼロ金利ならどんどん投資が起こるのは当然、というバーナンキの見方について、実はデフレ状況だと名目金利は低くても実質金利は高いという現象が起こるため、これが投資を引き下げることを指摘。したがって外国の高収益案件への投資が起こるというバーナンキは必ずしも正しくないと述べている。これはかつて、日本のゼロ金利と流動性の罠について指摘した論文の核心にあった知見であり、結論として、どちらもまちがってはいないけれど、政策提言としてはサマーズのほうがポイントを突いていると軍配をあげる。

2.9. クルーグマン「なんで経済学者は人口増加を気にかけるの?」
Paul Krugman, "Demography and the Bicycle Effect" (2014.05.19)
 人口の影響に関するクルーグマンの考察。長期停滞論とは直接関係ないものの、次のハンセン論文の内容と少し関係するので収録。
有志翻訳サイト「経済学101」でのoptical_frog訳はこちら (本書でほぼそのまま使用してます)

2.10. バーナンキ「日本の金融政策に関する考察」
Ben S. Bernanke, "Some Reflections on Japanese Monetary Policy" (2017.05.24)
 バーナンキが2017年に日本銀行で行った講演。日本の黒田日銀によるインフレ目標と金融緩和についての評価を述べ(もちろん大いに肯定的)、それが少し苦戦している背景として、長期停滞論と貯蓄過剰論をアウフヘーベンさせ、どちらも正しいことを認めている。そして最後に、今後日本銀行として何ができるか、2%のインフレ目標はがんばって達成させるべきであることを主張。
 有志翻訳サイト「道草」でのanomalocris訳はこちら。本書のものは、これを下敷きにしています(が全面的に手を入れました)。またもちろん日本銀行の公式訳もあります。こちらの訳に問題があるわけではありません。

2.11. バーナンキ「ハンセン「経済の発展と人口増加の鈍化」
Alvin Hansen, "Economic Progress and Declining Population Growth" (1938.12.28)
 1930年代に初めて「長期停滞」という用語を提案した、アルヴィン・ハンセンのアメリカ経済学会会長講演。大恐慌後のアメリカ経済回復の遅さを指摘し、それがアメリカ経済の構造変化によるものではないかと提案。すでに19世紀の大発明時代は終わり、人口増加も停滞しているので、高度成長を前提にしたこれまでの経済学は見直しが必要では、という21世紀によく見かける議論を、まったく同じ形で述べている。その後、第二次世界大戦やニューディールという大規模公共投資、金融緩和、イノベーションの大波により、ハンセンの見通しは完全に外れ、一般にはボケ役として使われることが多い。でもそれは、第二次大戦その他の大規模な投資があればこその話であり、そのまま進めばハンセンの見通しは自己成就してしまったのでは、というのがサマーズの重要な指摘となる。

3.その他リソース

3.1. ローレンス・サマーズ長期停滞論まとめページ
 ローレンス・サマーズ自身による、長期停滞論関連の各種論文・講演をまとめたページ。本書に収録したものよりはるかに多くの論説がリンクされており、またあまり長期停滞が問題視されなくなってきたあとも、サマーズが現在に到るまで一貫してこれを問題視して大規模財政出動を訴えてきたことがわかる。
3.2. バーナンキのブログ
 本書収録の長期停滞論争を皮切りに、バーナンキが各種の話題について語っているブログ。各地での講演の原稿なども随時アップロードされておりたいへん勉強になります。2018年後半から閑古鳥状態ながら、2019年にまたエントリーが出た。

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