On Planet Earth: Travels in an Unfamiliar Land

惑星地球にて:異世界の旅

 
 

写真 ジャン・スタラー
小説 リュック・サンテ
山形浩生訳


氾濫原

リュック・サンテ
 

 日没から一時間後、一行は影響圏域に降下、探査を開始。かつては車だったものの見る影もない車体はサーチライトの弧の到達範囲から十メートルほど外、ちょうど目的不明の空地領域のすぐはずれで、その領域は蛇腹型有刺鉄線をてっぺんにつけた台風用の囲いで仕切られ、それを右手に見る遺棄された補修用道路は、カバーで止めた砕石山に仕切られ、その裂け目には草がはえ、道はかつてのコカイン精錬所の三号ビルの基礎の埋もれた残骸でできた人工の尾根に沿って走り、すべて枝が奇妙に右方向に曲がったニワウルシのおいしげるスラグ山のふもとをかすめて半ば崩れた広告看板の柱を縫い、広告看板の表面はなおもいくつかの数字と文字が散在し、宇宙船のノーズコーンとたばこフィルターが共存した絵がぼんやりと残り、さらに道は向こう側の植生を越え、そこは砂利が積まれて線路留め具の微かな痕が刻まれ、気まぐれに不規則な塩湿地の中を右往左往し、そこにはドアのない冷蔵庫やふたのない洗濯機が不自然な角度でポーズをとって散在し、一時的に休止したのは安全未確保の空き地で、そこには日焼けした不格好なオレンジのプラスチック製パイロンと束ねた鋼鉄ケーブルによる実験のあとらしきものがあった。

 深夜、サーチライトの軌跡が通過する範囲の地表は、状態も粗さもほとんど識別不能。その範囲の外となると完全に見えなくなって、空はくすんだ粘土の赤、東西南北の地平はガス状のオーラで下から照らされて輝いているが、その光は無数の化学プラントの同時爆発かもしれず、その集合的爆音があまりに強すぎて(逆説的だが)沈黙がたれこめるに等しくなっていて、実は8キロ南にある古代の吊り橋式道路の半ば腐りかけた橋桁の上を流れ続ける車が生み出すFシャープの振動音の連続であたりは埋もれている。正体不明の地響きが足下を間欠的にふるわせ、そのため計器の針は派手にふれて照明グリッドも不定期に点滅し続ける。摂氏30度、湿度90%、東の風、硫黄臭にかすかに潮が混入、オゾン濃度高。沼地の瘴気、鬼火、メタン炎上等々。ときに形のない臭気も音もない不可視の存在。脈拍異常。呼吸困難。

 夜明け前。目下、黄緑色のねばつく泥地を北西に向けて進行中。泥はさわると光る。ガイガーカウンターがカチ、カチと鳴ってから、鳴り続ける。隊の一員(隠蔽植物学者)行方不明。地図座標によればこの地域はスポーツ複合施設に隣接した多層式駐車場用地だったはずだが、これはどうも怪しい。座標の計算ミスか。極端な温度の変動箇所があり、地下の化学湖や瀝青燃焼が続いているためと想像される。発掘を試みたものの、装備が失われたにとどまる。地表が固さを取り戻すにつれて植生が復活、ただしその正体は怪しい。あちこちに切り株に似たコンクリートの残骸が散り、アスファルトの島が散在し、だんだん増えてきて道らしきものとな、それが続く先は広大な地形で大なり小なり直線に囲まれている。隊(今は3人が行方不明)はキャンプ設営。

 夜明け。直近の領域を軽く探査開始。目標は、端的な文化プロファイルの概略を見極めること。目下の在庫:さまざまなスタイルのクローム製ホイールキャップ、陶器のかけら、台所の投棄ゴミ(脛骨、ガラス片、カートリッジ式カミソリの刃、ヒューマノイドの歯)、継ぎ目がわかり、穴も缶切りを使って手で三角形に開けてあるスチール缶から、一体成形のアルミ缶でプルリング式やステイオン式の栓のものまで、さまざまな作りのビールの空き缶、フリントや花崗岩の槍頭、頭頂部に丸いくぼみのできた頭蓋骨、曲がる腕時計のベルト、透明ビニール袋、ラジエータのホース、ウシの顎骨。塩にまみれた自転車のチェーンの一部、ナイロンシート、砥石、お守り、トウモロコシ挽き器、塩化ビニールのサイホンチューブ、印刷された紙切れが相当量。タイヤがトラック用73と乗用車用が228。カニの殻、黒曜石のナイフ、こじ開けることのできないハッチの非常に大きなチタン合金の円盤。収集した物体は、記録して採番してから防水シートの下に集める。

 午前半ば。隊(現在4名が行方不明)は高架高速道路をくぐってさらに北西へ進行。混雑は中から高といったところで、追い越し車線にトラクター・トレーラーが居座っていたために若干のボトルネック的な遅延。空は低い雲に覆われ、湿度最大、降水なし。広告看板は熱帯リゾート、ビール、自動車および各種がらくたの取り合わせを宣伝。地形がいきなり傾斜したので、現場隔離用のコードを応用したロープ装置の助けを借りて降下。黄土色の霞が東から吹き付け、このため前進は遅延しはじめ、やがて前進が危険となり、ついには厚い雲に包まれて、放棄された高速ランプの上で隊は停止。残りの隊員たちは、前進防護服と酸素補給装置を装備していたものの、呼吸困難となり、さまざまに鮮明な幻覚に襲われ、抑圧された深いな幼児記憶の復活を報告。喧嘩が起き(防護服のおかげで殴打の被害は低減された)。隊員一名は腐食したエキゾースト・パイプを抱えて狂ったように走り回る(やがて疲労し、他の隊員に取り押さえられる)。一名は重度のけいれん発作に苦しむ(顔面シールドを外せないので、舌をかまぬよう押さえられないことが懸念されたが、恒久的な障害が出ないうちにトラウマは終了)。一名は防護服を破り捨てて、裸でせきこみながら走り去り、100メートルほどで倒れ、二度せきをして絶命(遺体はパラシュートにくるまれて、しかるべき埋葬場所まで運搬の手はずを整える)。やっと平静が戻り、残った隊員たちは静かにすわり、風向きが変わるのを待つ。

 真昼。焼け付く太陽の下、隊は自動車の墓場をぬって進み、マッチしたライムグリーン
のフォード・フィエスタ二台の空疎な外骨格でできたボールトに、死んだ検死人類学者を安置するため停止。高さ5メートルに積み上がった、ペチャンコのもと自動車からコアサンプルを採取。ボンネット飾りの一時的分類に関する理論的基盤について、しばし議論。白のドッジ・キャラバン残骸の口近くに最近消された料理用のたき火を発見。中を調べたところ、フォームラバーのベッディング、散乱した衣服、プロレス雑誌、未開封のソーセージ缶、半ば化石化したピザの外周、儀式用神殿、ヤギのへその緒が入ったびんが発見された。現場を現状のまま残すという決定を下したものの、隊員一名が窃盗行為を行っていたため、決定は即座に破られる。当該隊員は手錠をかけられたが、それ以外には罰則なしで探検継続を許される。隊はマットレスの量販店、大サイズ紳士服専門店、靴の工場型落ち品専門店、そして競合しているとおぼしき台所用品店数軒を迂回して前進。隊員は植え込みの茂みに身を隠し、顧客が車を停めて入店し、時には荷物を抱えて出てくるのを観察。特に興味が持たれたのは、大型商品をひもで車のルーフに取り付ける、いい加減な手法。気温は摂氏40度を超え、空気は低質、地形は蛍光性のコケが密生しているためスポンジ状。隊員三人が西の方角に巨大な輝く歩行生物の姿を、おそらくは同時に目撃したものの、それがヒューマノイドかは虫類かについては意見が分かれる。

 正午過ぎ、隊は深度不明の塩湿地に入ったため、現場隔離用コードを切ったもので、お互いの腰を結ぶことに決定。これは動きを鈍くしたものの賢明であった。湿地に沈んだ物体が絶えず前進を妨害したからである。隊員一名の足がはさまれ、つぶされかけたが、それは空調設備のサイドパネルだった。別の隊員は、防護服が爆破されたダイボルド金庫のぎざぎざのふちで裂けた(裂け目は即座にダクトテープにより十字型に補修される)。向こう岸で、隊員たちが命綱をほどくと、綱の末尾が焦げて切れていた――最後尾にいた構造地質学者失踪の唯一の印がそれである。隊は半減して六名となった。志気もその分低下している。広大な死蔵倉庫の広大な地域があらわれて、関心が奪われる。多くはほとんど訪れられていないらしい。そうした建物から任意に一つを選び、計測して進入口を捜索。仲間が我先にカロリーメイトにかぶりつく中、エンジニアは通用口の南京錠を切断。中に入ると、懐中電灯では濃くたちこめた塵を見通すのにほとんど役にたたず、隊員たちは不規則に投げ出された巨大な木箱につま先をぶつけたり、脇腹にあざを作ったりして右往左往する。ほかの箱から離れて置かれ、鉄のストラップで縛られた箱の中身を調べることに決定。こじあけると、まずは深くうなるような音がして、それから強い白光とも言うべきものが生じ、間近に立っていた隊員三人の目をつぶす。全隊員がパニックに陥って倉庫から駆け出す。外に出ても、視力を失った気象学者、応用現象学者、理論言語学者の三人は走り続ける。

 日没直前。残った隊員は悩んだ末、座標位置を確認して降下地点へと戻ることに決定。説明不能なほどに巨大な、青灰色でもたつく微風にそよぐ苔類の密生した地帯を通っての前進は遅々としていた。通勤交通が、高速道路のインターチェンジ付近での化学物質流出のため何キロも渋滞。頭上を蒸留酒製造業者の点滅広告が通過。右端車線の車が一時的に流れた時、手錠をかけられた疫学者が突然高速道路に駆け出し、パン屋のトラックにひかれる。太陽はいまやうんざりする融けたオレンジののど飴のように見え、西の地平線に怠惰に広がっている。鳴きながらカモメが旋回し、奇形のムール貝を未完の高架のコンクリート杭に落として割っている。生存者二名は掘削機の平野をさまよう。視力を失った隊員三名のうち一人が、遠くで幻の高架をよろよろと、たまに倒れつつ横切っているのが目撃されたが、ふくれた黄色い防護服のため、だれだかは識別不可能。生存者たちは、三つの道路が合流してできた行き止まりにて、コンパスの針が激しく回転を続ける中で、降下地点の方角について口論。道路は移動し、上がっては下りるように見える。怒号は顔面シールドのスピーカーユニットからは、聞き取れないピンクノイズとなって送信される。古化学者はシャベルを取り出し、エンジニアは長さ六〇センチのドリルの刃を持ち出して、殴り合う。防護服は長く帯状に裂けるが、肉体的な傷を負わせるほどの力はなかった。動きはますますぎこちなく、両者ともよろめいて卒倒。

 深夜。エンジニアは気がつくと四つん這いになって、配電所の中を這っていた。もう一人の姿はない。しばし止まり、ダイナモ装置のてっぺんの、球状照明の交接パターンを観察。黄白色のエネルギー球が、蠱惑的に送電線に沿って、分かれては再融合を繰りかえす、複雑な求愛ダンスに見とれる。徐々に空の暗さに気がつき、視界の中に電気照明が一つもないことに気がつく。トゲの多い茂みが散乱する、よくわからない地形を這いずる。切り傷がぼんやりと感じられ、時々血が噴出して一瞬我に返る。クリスマスの七面鳥を切る自分を想像。ろうそくに照らされた部屋に家族が集い、子供たちがのどをならして笑い、鳥の死骸が不思議なことにふくれあがって部屋いっぱいとなる。長期間意識を失う。ヘリコプターが頭上を滞空し、はしごが下りてくるのを見るが、手が届かないし、それが現実に存在しているのかどうかも確認できない。絶望がパニックとなり、腕が勝手に動く。何か物体と衝突してそれをつかむ。ショッピングカートだ。立ち上がる。カートを押して通路を下る。文房具、女性用品、児童用品、大工道具の棚、自動車用品の棚、ベランダ用家具の棚。次から次へと通路。気分がだんだん高揚し、陽気な環境音楽にも聞き覚えがある。値段も魅力的、値引率も高くて買い気をそそる。買い物リストはなんだっけ。
 



 

作品に与えてくれた数々のインスピレーションと支援に感謝して、本書をわが両親に捧げる
 

写真の鍵

2-3 電磁パルス試験施設。ニューメキシコ州アルバカーキー市、カートランド空軍基地核兵器研究所。水平に置かれた、巨大なヤコブの梯子のような装置を使った科学実験。平行して配置されたワイヤーグリッドの間には実物の飛行機を置いて、電気チャージが試験対象にかけられ、核爆発の電気パルスのシミュレーションが行われる。わたしは風景がグリッドで仕切られているのに惹かれた。風景画を描くときに正確なパースとなるよう使われるグリッドを思わせたからだ。

4-5 セダン・クレーター、ネバダ試験場。原子力委員会は、1960年代の「核の平和利用」計画で、核爆発に対してもっと好意的な世論を喚起する方法を探していた。そこで賢明にも実験してみたのが、爆弾の民生利用だった。たとえば地面に大きな穴を開けるのに使ったりしようというわけだ。

6-7 波打ち鉄パイプ、牛の水飲み場に使われている。

15 地面穿孔機、ミシガン州ミッドランド。地面に穴を掘って、段ボールのパイプを入れるのに使われる。パイプはその後、コンクリートで満たされる。

16 黒フェルト上の岩。新しい高速道路脇の工事現場、おそらくは洪水対策用。

17 金属板。ニューヨーク市下水処理センターの屋根修景で植えられる、木のアンカーとなる。

18 杭の上のれんが。

19 タール紙のコーン。これらはニュージャージー州の工事現場を訪れた際に見た光景を写真で再現するため、わたしが自分でつくったものだ。これと同じように、地面の小さな穴にタール紙のコーンが刺さっているのを写真に撮ろうとしたが、黒いタール紙がフィルム上で識別できなくて失敗した。だからここでは、タール紙の片面を銀色に塗って自前のコーンを作り、こんな写真を撮った。

20 ニューメキシコ州アラマゴード。

21 月と星、ワイオミング州デュボワ。近くの小屋から風景にこぼれる微かな光を、7時間露光して撮影。夜がふけるにつれて空を横切っていった星と月の軌跡が見える。

22-23 風車。カリフォルニア州モハビ。20秒露光。

24 窓枠。ネバダ試験場。大気圏内核爆発試験が行われた砂漠に配置される、典型的な建築物の一つ。各種の建設材料や工法に、核爆発がどのような影響を与えるか試験するためにいろいろな構造物が使われた。

25 コンクリート杭。

26 トリニティ・サイト、ニューメキシコ州。世界初の原爆試験場は、オベリスクで標されている。この戦慄すべきできごとを記念しているのは、郊外の裏庭に似合いそうな貧相な記念碑なのだ。ちょうど反対側から撮影を終えた時、背後に月が出たのに気がついた。反対側にまわって照明のスイッチを入れると、小さな鉄の保護枠越しに光が出て、その影が砂の上の変わった図となった。運のいい偶然の一例である。

28 埋葬所、ジャージー・シティ。

29 廃棄テレビ。ジャージー・シティ近くの湿地に投棄されていた。ブラウン管の裏を割って、そこから車に積んであった非常用発炎信号筒を焚いて画面を照らしている。

31 「かごの岩」。ニュージャージー州サミットの国道248号線に近い工事現場にあった遮音用の壁。

32 堡籃。前ページの写真のような、岩壁を作るのに使われる針金のかご。

33 用途不明(わたしには)の不詳の物体。おそらくはボイラーか濃縮器だろう。人工照明で照らしてある。

34-35 埋め立て地。夕暮れにゴミをおろす清掃車。ニューヨーク市ブルックリン。

36 工事現場、橋脚。

37 放棄された鉄道用構脚、ジャージー・シティの遺棄された鉄道施設にて。

39 ガラスファイバー製の球形ガスタンク。ニュージャージー州。ニュージャージーを探検している時に、こんなボールが何百個も工場の物置ヤードにあるのを見つけた。たまたま日曜日で、特に柵もなかったので、一個を脇に転がすことができた。いつも車に積んである、駐車場用の金属ハロゲンランプ2個を使って、ボールを前後から照らしてある。

40 海峡トンネル。フランスのサンガッテ。

41 タイヤ付き三脚。ニュージャージー州ポートレディング。この構造物は、失われたラウシェンバーグのアッサンブラージュといった風情だが、どうやらこの三脚の下にある塩ビパイプの目印と保護をかねているらしい。たぶん、地下水試験採取用のパイプだと思う。

42 警察の射撃場、ジャージー・シティ。

43 螺旋階段、ニューヨーク市ブルックリンのウィリアムスバーグ橋。

44-45 フレンチマン・フラット、ネバダ試験場。核爆撃を生き延びる防空壕のプロトタイプ。大気圏内核実験計画が行われていた60年代に作られたもの。

46 下水処理場、俗に言う「糞が扇風機にあたる」(事態が爆発して収拾がつかなくなることをさす)前の状態。ニューヨーク市ブルックリンにおける初の試験運転。

47 グラウンドゼロ(爆心地)。ニューヨーク市。

48 天然ガス貯蔵施設の屋上、ニューヨーク市ブルックリン。

49 ガスタンク、ニューヨーク州エルムハースト。

50 爆発した石油タンク。ワイオミング州。

51 廃墟となったゴルフの打ちっ放し。ニューヨーク市。

52-53 核兵器研究所、ニューメキシコ州アルバカーキー市、カートランド空軍基地。

54-55 フレンチマン・フラット、ネバダ試験場。核爆撃を生き延びる防空壕のプロトタイプ。大気圏内核実験計画が行われていた60年代に作られたもの。

56 核兵器研究所、ニューメキシコ州アルバカーキー市、カートランド空軍基地。

57 油田、ニューメキシコ州カールスバッド。

58-59 マヤのピラミッド。ニュージャージー州ポートレディング。

60 石の山。ニュージャージー州ワーナケ貯水池のダム建設現場。

61 中止された原子力発電所の工事現場。

62 ワイオミング州マルティネスに昇る月。

63 塩の山、ニュージャージー州パース・アンボディ。

64 農家のサイロ、ドイツ。

65 タピオカ貯蔵庫、メイン州ポートランド。ビニール製の風船式構造体は浮き世離れして見えるので、長いこと惹かれてきた。これは外から撮るつもりだったが、撮影を始めるとまるでインスピレーションが得られなかった。好奇心で中を覗いてみて、この写真を撮った。

66 ジョーンズビーチの駐車場。

67 ホートンの楕円貯水タンク。ロングアイランド、ポイント・ルックアウト。この場所と次の写真の場所は、わたしが10歳まで過ごしたところで、この写真のために帰った。

68 廃車、ジャージー・シティ。

69 サンドブラスト。

70-71 発射用バンカー、ケープ・カナベラル。

72 遊休製鉄所、ニューヨーク州バッファロー。

73 配管、ウラン処理施設。

74 ローブリング製鉄所の廃墟

75 工房、州立刑務所廃墟、ペンシルバニア州フィラデルフィア。

76 中止となった原子炉、テネシー州ハーツヴィル。

77 配電所、テキサス州ヒューストン。

78 タイの温室。

79 タピオカの木、タイ。

80 ウシ、タイ。

81 ウシ、ルイジアナ州。

82 コンクリート杭、ニューヨーク市ハドソン川。

83 型枠式のコンクリート下水合流升。

84 ガスパイプライン、水深目盛り板、古タイヤ。ニュージャージー州ポートエリザベス。あくまで推測だが、これは海底用ガスパイプなのだろう。プラスチックの浮きによって、湾まで浮かべて運び、そこで浮きを切り離してパイプラインを沈めるのだ。

85 未完の下水処理プラント、フロリダ州タンパ。

86-87 ロケット遠隔測定装置。ニューメキシコ州ホワイトサンズ・ミサイル発射場。

88-89 配電所。

90-91 浄水場、ロングアイランドのヘンプステッド。

あとがき

 わたしの写真は、それを撮った現場の忠実な再現とはなっていない。被写体はしばしば、照明や色彩、フレームのとりかた、スケールなどによって、わたしの写真では一変してしまっている。
 15年間にまたがる本書の作品では、工事現場や工業用地で見られるさまざまな材料の偶然の配置を写真に撮ってきた。軍事施設や核施設も、作品の源となっている。わたしの映像のすべてに共通しているのは、なんらかの人間活動によって改変された風景だということだ。無駄にうち捨てられた自然のという衒学的な問題を、ドキュメンタリー写真のように直接とりあげるのではなく、わたしの写真はその現場に謎と予兆を吹き込もうとしている。天然写真やミニマリズムの伝統を離れ、何らかの実用的な機能を果たすように意図された物体に見られる、記念碑的彫刻の力と美を見つけようとする。
 わたしの写真に見られるシュールな輝きは、作業場となった場所の多くに見られる光源に対するフィルムの反応の結果である。夕暮れと工業用照明の組み合わせで、照らされた物体の色彩はゆがむ。焼き付けの時に、こうした影響を修正しようとすると、空の色が変わり、別世界のような雰囲気が出る。少数の例外をのぞき、わたしは写真の現場には手を加えていない。オブジェ・トゥルヴェ(手を加えない自然物をそのまま美術として鑑賞すること)の伝統にかなり忠実に、わたしは被写体をフィルムに収めることで、彫刻的な認識をとらえようとしているのだ。
――ジャン・スタラー



惑星地球にて
――異世界の旅
 

写真 ジャン・スタラー
小説 リュック・サンテ
 

 『惑星地球にて:異世界の旅』は、全米および世界中で撮影された、ジャン・スタラーの奇妙に魅惑的な写真集である。廃工場から軍事試験場、ハイテク浄水場から外宇宙落下物のような重機械――スタラーの正方形の版型とパノラマ的写真は、色彩と光のシンフォニーを背景に、工業社会の異様で忘れられた建造物をあらわにする。

 スタラーの映像には謎の感覚がつきまとう。なんでもない建造物や機械部品が、シュールレアリズム彫刻のオーラをまとい、ただの工事現場が古代文明の聖地を思わせる。長時間露出と光源の組み合わせ――夜明けや夕暮れの写真が多い――により、スタラーは息をのむほど豊かな色彩とパワーをもった写真を生み出す。

 『惑星地球にて』の映像を補うのが、リュック・サンテによる語りである。かれもまた、スタラーと同じく都市や工業の荒地とその歴史、そこに秘められた謎に魅了されている。スタラーの写真とサンテの文の組み合わせは現代風景の涯てにある、未知の世界の刺激的な天然色ツアーを提供してくれている。
 


ジャン・スタラーの写真は数々の賞に輝き、ニューヨークタイムズをはじめとする一流雑誌にも掲載されている。1988年の処女作『New York Frontier』は広範かつ熱烈な反響を呼んだ。写真に加えて金属製の家具やランプ、オブジェのデザインと製作にも従事。ニューヨーク市在住。

リュック・サンテは、『Low Life』『Evidence』『The Factory of Facts』の著者。ニュー・リパブリックと、ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックスに写真について執筆。


表紙写真:ホートンの楕円貯水タンク
裏表紙写真:トリニティ・サイト、ニューメキシコ州ホワイトサンズ。初の原爆試験場。

「本書を開くと、宇宙船のドアを開けてはるか彼方の荒廃した惑星に踏み出したかのようだ。その風景は、異文明の異様な形態や説明不能の構造物に支配されている――その意味は失われ、使い方もわからない。
 ページをめくるたびに、謎めいた説明不能の風景が見いだされる。どれも見慣れたもののはずなのに、そうではない。ジャン・スタラーの写真が変えたのが、風景のほうなのか、それともそれを見る者のほうなのか、わたしにはよくわからない。しかしわかるのは、スタラーがわれわれ自身の世界の周縁を旅する機会を与えてくれたということだ……しかも異星人として。」

――テリー・ギリアム、映画作家
「大胆かつ謎めいた(スタラーの写真は)、物言わぬ私的な風景をとらえている」
――ニューヨークタイムズ