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44.

いかにも模範的な青年重役然としている(したがって)チームワークの信奉家たるボビーは、彼のモルモットたちのために、連帯して行なわなくてはならないテストを考案。きょう私はこの知的チェーン・ギャングを初体験した。白状すると、私はこれを他愛もなく楽しみ、ボビーのほうは、テレビのクイズ番組の司会者ごっこをする嬉しさに我を忘れていた。われわれの一人が格別に難解な質問に答えると、彼はやんやと囃したてる――「そいつは凄いよ、ルイ――きみは断然、とてつもないことをやっているんだよ! 大変なものではありませんか、みなさん?」

かわいそうなスキパンスキーは、私と共にこうした競技をするよう拘束されているのだが、われわれのゲームをまるっきリエンジョイしていない。「彼はぼくを何だと思っているんですかね?」と私に愚痴をいった。「何か芸をする猿だとでも?」

クワットたちの間でのスキパンスキーの渾名はチータという。顔だちに、生憎なことにチンパンジーに似たところがあるのだ。



T. M. ディッシュ『キャンプ収容』 野口幸夫訳     平成18年7月16日