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39.

〈小説よりも奇なり〉

ジェリー・ブリーンの Traje de luces ――つまり、光の服――が、ファッション雑誌三誌に、新たな流行を定着ミせる秋期号の表紙に男女両方をモデルにして載せて、特集されたことで、このファッション革新は実質上、成功のお墨付を得ている。光の服とは、微細な燐光性素材の透明な蜘蛛の巣状の網にほかならず、たえずパターンを変えながらキラキ ラまたたき、その輝きの大小ば着る人の動きと気分によって決定される。親密さを示す特定のジェスチャーをすれば、瞬間的な「消灯」 がもたらされて、その間、着用者が彼または彼女自身の臨機応変の才能に全面的に頼るしかなくなる、というようにプログラムすることもできる。ブリーン氏はヴオーグ誌に公表されたインタビューで、ワイオミング州シャイアンにある現在の家から引越ししないとの決意を表明、同地で長年、同氏はトラジェ・ド・リュセの製造元、I・W・ライルのウエスタン衣料のデザイナーを務めている。



T. M. ディッシュ『キャンプ収容』 野口幸夫訳     平成18年7月16日