ハーストが変った。大失敗の夜以来、穏かになってきた。老いたアメリカの重役連に実に特徴的なあのきんきらきんの青年ぶりが顔から去って、あとに残されたのは浜に打上げられたストイシズム。足どりは重い。みなりには無頓着。長い時間をデスクで虚空を凝視して過す。何を見ているのか? 疑いもなく、おのれの死の確実さだ、それを今までは決して信じなかったのに。