「事実というのは何ですか?」と私は彼に訊いた。
「事実とは、起ることだ。きみが書いていたように――ここの連中について、そして彼らについてきみが考えることについて」
「でもぼくは考えたりしませんよ、彼らについては。こうした人たちのことは。そうせずに済せられる限りはね」
「えいくそ、サケッテイ、わしが何が欲しいかわかっとるはずだ! 私に理解できるようなものを書くのだ。こんな……こんな……まったく反宗教的だよ、きみのこの代物は。 私は信仰深い人間ではないよ、だがこれは……きみはやりすぎなのだよ。これは反宗教的で、私は一語も理解できん。良識ある、知的な日誌をもう一度書きはじめるのだ、さもないと私はきみとは縁を切らせてもらう。縁切りだぞ、いいな?」
「スキリマンがぼくを追っぱらいたがってるんですか?」
「彼はきみをかたづけたがっているのだよ。混乱させる影響源としてね。きみは自分が混乱のもとであることを否定できまい」
「ぼくの日誌があなたにとって何の役に立つんです? なぜあなたはぼくをここにとどめておくんです? スキリマンはぼくを求めてはいない。彼の小さな子供たちはぼくに混乱させられたがってはいない。ぼくが求めるものは一瓶の酒、ひとかたまりのパン、そして一冊の本だけですよ」
これはいうべきではなかったようだ、おかげでハーストに私を動かすのに必要なレバーを与えてしまった。どう頭を働かせようとも、私はいまも同じ棧を押す同じ箱の中の同じ鼠なのだ。