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: 二冊目 : 六月二十二日 : 六月二十二日   目次

追記――

ハーストが逼迫の末、もはやどうあろうと隠しようのないこと、ただただ私自身の絶望的な、故意の盲目によってのみこんなにも長く私から遠ざけられていたこどを追認。それを知っている今、自分がそれを知っていると知っている今、私は真実ほっとしたものをおぼえる。裁判が何週間も長びいていた殺人犯がようやく評決を、まったく疑うべくもなかった評決――「有罪」――を、そして同じ、く確実な宣告、「死刑」を聞くのにも似て。あれは夢ではなかった、そしてメッセージは本物だったのだ、私は五月十六日以来、パリジンに感染していたのだ、ここにいる誰もが、私以外は、知っていたのであり、そして私は囁きに、それが世界に満ちる轟きとなるまで耳を傾けようとはしなかったけれども、私もまた知っていたのだった。



T. M. ディッシュ『キャンプ収容』 野口幸夫訳     平成18年7月16日