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: 六月十一日 : 六月十日 : 六月十日   目次

追記――

ご注目あれ。私は今、別れてから数分とたたぬ内にハーストが使いの者に持たせて寄越した、錬金術に関する一冊の書物を読んでいる。ルネ・アローの Aspects de l'alchemie traditionelle で、タイプ原稿の翻訳と一緒に〈極秘〉のフォルダーに綴じこまれている。

愉快なことに、匿名の脅迫めいた投書のような感じに読める。たとえばこんなふうな書き出しの――

 

「編集者殿

あなたはおそらくこの手紙を活字にするだけの勇気をお持ちではないでしょうが、しかし……」



T. M. ディッシュ『キャンプ収容』 野口幸夫訳     平成18年7月16日