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六月九日

いやまあ、あれは数ある明日の一つという ことで――エントロピーの勝利を感じる時に でも。この明日に感じるのは、満面のにやにや笑いとウィンクと雛だらけの張り子のお面、のような虚ろな気分。実のところは――ほんとうの事実は――そんなに大仰なものでもなくて、仮面も、被ってみたくもないほど虚ろだというわけではなく、そこに見えるのは下層意識が上層意識の欠陥受信機へと放送している、眼球震盪症のようにちらつくイメージ、イメージ、イメージ。きょうはだめだ、よくない、うちのめされている。気分が悪い。

来客あり――モルデカイ、ミード、そしてジョージ・Wからのメモ――しかしあくまでもひとりで過ごす。私は私でないと唱えて。

では誰なのだ?

生命の源、太陽からあまりにも長い間遮断されている。それが間題だ。

二つのことを連続して考えることはできない。はてさて。



T. M. ディッシュ『キャンプ収容』 野口幸夫訳     平成18年7月16日