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: 96. : 二冊目 : 94.   目次

95.

〈大団円の構成要素〉

ハースト/モルデカイは私を昔の劇場のすぐ脇の部屋へ案内、私があの〈事実の博物館〉を築いていた際、彼の〈マグナム・オパス〉の装備が保管されていた場所だ。衛守たちは私よりも忠僕に気を奪われていた。忠僕は彼らの手荒な扱いに大声で、たじろぎながら抗議した。

装備は、大失敗(だと私はあのとき判断したものだが)の晩にあったままの姿に組み上げられていた。忠僕と私が、それぞれ、ハーストとモルデカイの席に着いた。あらゆる推論を、もごもごと感謝をこめて棚上げしながら、私は身をゆだね、絆創膏を貼られ、固定された。それまでに、何が進められているのかに、かすかにではあれ、気がついていたに違いなく、自分を抑えて結果を非難しなくてはならない。スイッチが入れられた時、心が 空白になっていったのをおぼえている。眼を開けて、私は見た……

そして、それが半分の驚異だった――私は見たのだ! ……私自身の肉体、袋一杯の病気と古びた肉、まさに死の寸前にあるものを。その肉体は轟いた、その眼が開いた――闇に。その両手がその顔へと動いた。その顔は絶叫した。私は殆ど気絶しそうな感嘆をこめて私自身の肉を見おろした。これを私自身のものと呼んでいいのか? それとも、まだ大いに忠僕のものなのか?



T. M. ディッシュ『キャンプ収容』 野口幸夫訳     平成18年7月16日