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: 70. : 二冊目 : 68.   目次

69.

ハーストが私に明確な説明を要求。私はメモ帳類と、疫病の進展の度合に関するさまざまな観測を示した。

バスクのアドヴェンチュアが、キャンプを去った(六月二十二日)直後に始まったものと仮定すれば、彼女の播いた種子の最初の果実は、八月の半ば乃至は末頃までには姿をみせはじめていたでしょう。進展の度合についての私の見積りはキンゼイの新版にもとづくもので、そのため、おそらく保守主義の方向に誤りがあるでしょう。乱交 (および性病) が同性愛者の間ではより一般的だという事実は、これまた同様に、このプロセスを加速する傾向があるでしょうし、ことにその初期の段階では、急速な伝播が決定的ですから、なおさらでしょう、私の博物館にある諸々の事実は、同性愛が最も盛んなあれらの領域――芸術、スポーツ、ファッション、宗教、そして性犯罪の領域に於る、「大躍進」の優勢を示したものなのです。

あと二か月以内に、成年人口の30乃至55パーセントが、天才への急上昇の途上にあることになりましょう。政府が直ちにこの件に関するすべての事実を明らかにしない限りは、です。性病に対する、明確さに欠ける警告ぐらいでは、乱交に対して、三十年間、軍の訓練映画がそうであったのと同様、効果はないでしょう。それ以下でしょうね、なぜなら当節、われわれはコンドームよりもむしろペニシリンに信を置くようになってきているのですから。ぺニシリンは、悲しい哉、パリジンに対しては何の効果もないのです。



T. M. ディッシュ『キャンプ収容』 野口幸夫訳     平成18年7月16日