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キャンプ収容
Camp Concentration

T. M. ディッシュ1著 - 翻訳: 野口幸夫2

本書は感謝と共に

二人のよき作家

ジョン・スラデックとトーマス・マンに捧ぐ
 

さて、読みびとよ、これにてわが夢はすべてお聞かせ申し上げた。

いかがかな、これを解きあかしてみては下さるまいか、それがしに

或は貴君自身にか、また隣人に。ただくれぐれも

誤釈はなさらぬよう。さもなくば、ためになる

どころか、貴君に弊害のあるばかり故。

解き誤れば悪しきものいで来たる。

 

 またくれぐれも行き過ぎたもうことなかれ

わが夢のうわべに興ずるその上で。

わがなぞらえや、ものの讐えに

笑うたり恨みたりなどしたもうな。

そは稚き者、愚か者らに譲られよ。そうして貴君におかれては、

わが事の本質をこそ見られたし。

 

 帷かきわけ、わがヴェールの裡を見て

わが隠喩をそば掘りおこしたまえ、誤ることなく、

そこに、尋ぬれば見出しうべき事どもが

正直なる心の扶けとなるであろう。

 

 見つけしがわが鉱洋ならば、容赦なく

捨てつべし、されど黄金は納められよ。

わが黄金が鉱石の裡に包まれてあらば何となさる?

芯あればとて林檎捨てさる人はなし。

されどもし貴君が空しとてすべて擲げさらんや

われ知らじ、ために再び夢に帰ることあらざらんとは。

 

    ――ジョン・バニヤン「天路歴程」





T. M. ディッシュ『キャンプ収容』 野口幸夫訳     平成18年7月16日