「あかい、あかい、朝日はあかい」という櫻画報と は何の関係もない朝日新聞が何をトチ狂ったか、この山形を書評委員にしてしまったですよ。その他の書評委員は、似た名前の山崎浩一、川上"山田"弘美、高橋源一郎、池尾"インフレ目標でキャピタルフライト"和人、種村季弘、坂村"TRON"健、津野"晶文社"海太郎、リービ英雄など。なんか、浮いてませんかぁ? 任期は 2 年だそうだけれど、何ヶ月で切られるかトトカルチョをしてみるのも一興かと。
なお、ぼくは基本的に、自腹を切って買った本でないと書評しません。献本された本は、原則として書評対象からはずします。例外的にもらった本が気に入ってどうしても取り上げたい場合は、二冊自分で買って、まだ割高感がない場合に限り取り上げることとなりますが、そこまでお値打ち感のある本はめったにありません(最近では「エレガントな宇宙」が数少ない例外)。送りつける前によく考えましょう。(2002 年 4 月 1 日. なおその後、さすがに2冊買うのはあほくさくなりましたが、でも書評する本は1冊は自腹で買います。手元に一冊あって、さらに追加で買いたい本はなかなかないぞ。)
実際にどう進むかというと、隔週で委員が集まって、編集部の人たちが選んだその期間のめぼしい本の一覧を渡されるので、その中で自分の読んでみたい(そして書評してみたい)本を、丸~三重丸をつけて選ぶのだ。もし自分として推薦しておきたい本があれば、事前に言っておけばそれが含まれることになる。で、バッティングしたら、丸の多い方が優先、丸の水準が同じなら、出席している人が優先、それでも決着しなければ、まあ大人ですから適当に譲り合ってきまる。おもしろいことに、取り合うより譲り合うようが圧倒的に多いんだよね。みんな「ちょっと興味あるな」というくらいで丸をつけるから、他人を蹴倒してまでそれを読みたい例は必ずしも多くないようで。で、みなさんその本を持ってかえってガシガシ読むわけです。そして気が向けば400字か820字で書く。月に一本くらいは最低書け、ということになっている。もし読んでつまらなかったり、あるいは自分にはきちんと書評ができないということであれば、次回の会議で放出。他に読んでみたい人がいたら、その人に書評権が移る。
書評の対象になるのは、発行から 2ヶ月以内の本。そうでないと店頭から引き上げられてしまって、地方部での入手が困難になるから、だそうな。だから原理的にいえば、嫌いなやつの本が出ていたらそれを抱え込んでしまえば、いずれ時間切れになってその本は書評されない、ということもできなくはない(が、それほどみんな暇じゃねーよ)。(追記:さらに、最近抱え込みによる時間切れをなくすために、二週間で書評するかどうか目鼻をつけろ運動が展開されている。よいことです)あと、書評委員の著書は、公平さのため書評対象にはならない。委員が一部寄稿している論集やアンソロジー、訳書は、微妙なところ、とのこと(でも避ける場合が多い。『コモンズ』も対象外)。それと、再刊ものは原則としてダメ。20 年絶版だった名著が再刊、くらいならオッケーだけれど、2 年前の本が文庫落ちでは絶対ダメですな。委員会に欠席したら、事前に候補本一覧を送ってくれるので、当日までにそれに丸をつけて提出すればいいので、別に出なくてもいい(が、たまには顔を出すように、とのこと)。出席すると、お弁当が出るのと、足代が出るのと、終わったあとに飲み会があるのとがよいこと、かな。てな感じ。
Gibas/Jambek『実践バイオインフォマティクス』、 マッキンゼー社『企業価値評価』(ボツ)、 笠井潔『オイディプス症候群』、 大室幹雄『月瀬幻影』、 ウィルマット/キャンベル/タッジ『第二の創造』、 関満博『現場主義の知的生産法』
セン『経済学の再生』、 スティグリッツ『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』、 小谷野敦『聖母のいない国』、 藤本和子『リチャード・ブローティガン』、 クレイス『食糧棚』、 ブックラック(橋本治「浮上せよと活字は言う)、 マッカーティ『ノーベル賞経済学者に学ぶ現代経済思想』、 アジェンデ『パウラ』
篠田『幻想建築術』、 いしいひさいち『現代思想の遭難者たち』、 ローティ『リベラルユートピアという希望』、 賈英華『最後の宦官秘聞』、 石丸次郎『北のサラムたち』、 ラファティ『地球礁』、 竹森『経済論戦は甦る』、 星野力『甦るチューリング』、 ブックラック(『海洋堂クロニクル』)、 梅津『あなたはコンピュータを理解していますか?』、 マン『ソーシャルパワーI』、 今年の3冊、 放出した本についてのコメント
ナボコフ『透明な対象』ボツバージョン、 ナボコフ『透明な対象』掲載版、 岡本『異議あり! 生命・環境倫理学』、 スチュアート『2次元より平らな世界』、 金水『ヴァーチャル日本語、役割語の謎』、 森川『趣都の誕生:萌える都市アキハバラ』、 放出した本についてのコメント
4月から委員入れ替え。リービ英雄、山崎浩一、池尾和人、坂村健(一回しか見なかった)なんかが消えて、 青木昌彦、宮崎哲弥、松原隆一郎、なんと天下の種村季弘、その他いろんな先生方が参加。人数がやたらに増えて、しかも古参の方曰く「新しい人は大学の先生とかまじめな人ばっかでつまらん! 山形くんが、わけのわからんのの最後の一人よ! がんばれ!」だそうですので、わけわからんようがんばります。が、全体に社会科学系が多すぎて、自然科学系がぼくと新妻昭夫の二人しかいなくて薄いのがつらい。が、世の中の関心を考えるとそんなもんだという気もする。あと、学者先生が多くて、コテコテのビジネス書なんかがなかなかカバーできないがつらい。だからぼくがサラリーマン代表もやんなきゃいけないんだが、うーん。ここらへんの苦労は、このめちゃくちゃな本のセレクションにもよく出ていると思う。なお、担当編集者は、担当した人の書評する本には一応目を通してまちがったこと書いていないかチェックすることになっているそうなんだけれど、いやあ、ご苦労なこってす。
小塩『教育を経済学で考える』、 エンタイン『黒人アスリートはなぜ強いのか』、 伊藤 嘉昭『楽しき挑戦:型破り生態学50年』、 ジュリアーニ『リーダーシップ』、 放出した本についてのコメント
ケーガン『ネオコンの論理』、 山本義隆『磁力と重力の発見』、 大平『プラネタリウムを作りました。』、 バラード『千年王国ユーザースガイド』、 スタージョン『海を失った男』、 イースタリー『エコノミスト、南の貧困と闘う』、 キャリントン『耳ラッパ』、 西川『環境ホルモン』、 ピンカー『心の仕組み』、 放出した本についてのコメント
原田泰『奇妙な経済学を語る人びと』(ボツ版)、 原田泰『奇妙な経済学を語る人びと』、 田中他『エコノミスト・ミシュラン』、 シュワルツ『エンロン内部告発者』、 今年の三冊、 放出した本についてのコメント
チョムスキー『生成文法の企て』、 米田雅子『田中角栄と国土建設』、 クッツェー『夷狄を待ちながら』(1200 字ボツ版)、 クッツェー『夷狄を待ちながら』、 マゲイジョ『光速より速い光』、 コウ『マヤ文字解読』、 クルーグマン『嘘つき大統領のでたらめ経済』、 パウロス『天才数学者、株にはまる』、 アーリック『トンデモ科学の見破り方』、 ビッスン『ふたりジャネット』、 放出した本についてのコメント
また 4 月から委員入れ替え。山形も任期切れだったけど、留任が決定しました。川上弘美、与那原恵がいなくなると、かなり雰囲気変わったねー、というのが武田さんと言ってた感想。特に朝日社内の人がえらく増えた。あと、専門科学畑の最後の砦だった新妻さんがいなくなったのはとても痛い。かわりに入ってきたのが、最相「絶対音感」葉月、野村進、あれやこれや、そして一部の人に衝撃を走らせた天外伺郎。天外氏は AIBO 開発の土井さんとしてではなく、作家天外としての参加。うーむ。朝日新聞書評欄における正統科学の最後の砦がぼく一人になってしまったではないか!
またよく見ると、山田さんや堀江さん、さらには北上さんがいなくなって小説方面もだいぶつらくなったのだった。中条さんは田口ランディ絶賛の前科があって、また柳下本の書評とかもピントはずれだったし、少し不満なのだ。北上氏は SIGHT の書評なんかでもダメダメぶりをさらけていて、まったく評価していなかったんだけれど、それでも通俗小説分野をカバーしてくれる人がいないのは痛い(追記:すまん、これを書いたとき池冬さんを忘れてた)。高橋源一郎だけでは限界もあるし。文藝方面を期待されて(だと思う)入ってきた小池さんは未知数だが、活躍してくださいよー。さてどうなりますことやら
田所他編『国際機関と日本』、 ボールドウィン『デザイン・ルール』、 放出した本についてのコメント
浅羽通明『ナショナリズム/アナーキズム』、 ギブスン『パターン・レコグニション』、 バーン他編『マキャベリ的知性』、 川島 レイ『上がれ! 空き缶衛星』、 松本 仁一『カラシニコフ』、 放出した本についてのコメント
根岸康雄『万国「家計簿」博覧会』、 ピンカー『人間の本性を考える』、 中西準子『環境リスク学』、 ランド『肩をすくめるアトラス』(800 字ボツバージョン)、 ランド『肩をすくめるアトラス』(400 字バージョン)、 ハンフリー『獲得と喪失』、 2004 年の 3 冊 放出した本についてのコメント
前田建設『前田建設ファンタジー営業部』、 レム『高い城・文学エッセイ』、 赤澤『ネアンデルタール人の正体』、 放出した本についてのコメント
1 年の期間延長の後、ついに書評委員の任期完了。快哉を叫ぶ人もいる一方で、惜しむ声もあるだろう。個人的にも、うーん、残念だな。書評委員やってることで、原稿料(800 字だと 6 万円)に加えてお車代だの委員会謝礼だのが出て、年間 260 万円くらいもらえてるんだ。それがなくなるのかー。まあそれで困るわけじゃないが。一方で、今年夏にかけて訳書がいっぱい出るので、書評してもらえる可能性が出るのはありがたい。レッシグやロンボルグは、紹介してほしかったもんね。
一方で、じゃあだれが紹介することになったろうか、と考えると荒涼たるものがあるようなないような。ぼくが最初に入った当初と比べても、かなり書評欄としての実力は低下しているのはまちがいない。まともな科学担当がだれもいない。リーマン系も、都市建築系もいないし、音楽芸術系は青柳さん一人(だけど彼女もたぶん今年限りでしょ)。ブンガク方面も、種村さんを失ったのは痛かったなあ。高橋源一郎は、勉強家でエンターテイナー的な目配りもあって逸材だが、かれも退任、かな? また、今年になって大量に流入してきた朝日新聞の論説委員方の半分は、ぼくは不要だと思っている。ある人が言ってた「姥捨て山」というのは言い過ぎだとは思うけれど、その気持ちはわかる。さて、それがどうてこ入れされるのか。来期のアレがだれになるのか、というのが興味あるところ。いずれまたおはちがまわってくることもあるかもしれない。
で……来期のメンツが内定になって、まず科学方面は強化されて安心。また建築方面もよくなった。うれしやうれしや。高橋源一郎はなぜか留任で、これもオッケー。でも、ブンガク系は、今後しばらく人脈優先のつまらない紹介になりそうだなあ。あとテツガク系は、まあいっかって感じ。
さてこれで終わりと残念に思っていた人もホッとしていた人も、話はこれでは終わらないのだった。なんと驚愕の第二期が実現。こうご期待!