(朝日新聞 土曜版 be 2003/04/12号)
山形浩生
いまさらこの戦争がいいとか悪いとか言ってもしょうがなくて、早めに終わっ
てくれるといいな、くらいが正直なところではある。それにこうなってしまった
以上、大事なのは戦争が終わった後にどうなるかだ。そしてこれには立派な先例
がある。
今回の戦争は「イラクの自由」作戦という名前がついていた。この戦争の「理 由」というのも、途中でコロコロ変わったけれど、とにかくいまの独裁政権を倒 して自由な民主国家を作る、というのが能書きだった。そういう能書きは聞いた ことがある、あれは確か……そうだ、アフガニスタンとかいう国だった。あそこ はどうなったんだろうか。
ほとんどどうもなっていないのだ。
あそこもタリバンが消えたら、復興と民主主義確立まで面倒を見るようなこと をアメリカは言っていた。ところが、ニューヨークタイムズのクルーグマン連載 によれば、二〇〇四年のアメリカ政府の予算案で、アフガニスタン復興予算は、 なんとゼロ。あとから議会のほうがあわてて3億ドルほど追加したほど。
イラクはマシな扱いを受けるかな? まさかね。爆撃が終わったら、アメリカ はおいしい利権だけつまみ食いしてあとはそれっきりだろう。で、後は? コケ にされた国連は復興には参加するるようだし、日本もお金を出すらしいけれど、 でもそれが長く報われない道のりになるのは明らかだ。
やれやれ、だから早めに切り上げて、あまり壊さないでほしいなあ。そのツケ を払うのは、たぶんぼくたちなんだから。