Voice 2011/6号 連載 回

無駄な復興会議よりも復興行動を!

(『Voice』2011 年 6月 pp.40-1)

山形浩生

要約: 復興ですべきことなんて、ほぼわかりきっている。頭でっかちの哲学者集めた復興会議なんかやってる間に、実際の復興活動をすぐはじめないと。



 震災から丸一ヶ月が過ぎて、被災地の支援活動や大量の募金など、力づけられる話はたくさん聞いた。一方で、社会的な影響力を持つ人々が、パニックやデマの片棒担ぎを演じて失望させられるケースも、これまた多い。とはいえ一時の混乱を経て、いまや東北では復興の槌音高く……といった話を今回は書けるものと思っていたのだが。

 どうもその状況がよくわからない。現場ではもちろんいろいろ活動は行われているけれど、その中身や全体像があまり見えてこないのだ。

 そして首相その他は原発にばかり気をとられ、被災地支援はお留守のようだ。珍しく復興がらみの話と思ったら、これが得たいのしれない復興構想会議とやら。初会合などでは梅原猛がお気楽な文明論を語り、五百旗真は中身も決まらないうちに復興税の新設を主張。なんですか、これ。

 ホント、そんな会議なしでも、今やるべきことの大枠は見えているのでは? こんな具合:

 まず国民としては、いまは被災者の救援がどうなっているかろくにわからない。事態は全体としていい感じで改善しているの、それとも泥沼の無間地獄なの? もっと募金やボランティアした方がいい? まだ被災地の一部は取り残されているという話もきくけれど? そういう判断がつかないからみんな不安でしょうに。

 だから被災の状況を地図でざっくり見せてよ。壊滅状態のところから、多少片づけと資金があれば自力でふんばれるところまでランク付けして塗り絵でも作って欲しい。県レベルでは、結構これが進んでいるから、それをまとめるだけでも国民は安心するし、ボランティアだってどこに行こうか判断しやすいのに。それで支援進捗につれてその塗り絵地図を更新すれば、「おお、なんか復興してるぞ!」とみんなの士気もあがるでしょう。菅首相には、塗り絵のプレゼンターでもやらせてあげるよ。

 個別のミクロの支援方策は、当然個別地方に任せればいい。国は御用聞きに徹して、人や物や金をばらまき、地方ではきつい道路と物流等の復旧を重視。一応人々がなんとか自立して暮らせるようになって、やっと復興のスタート地点でしょう。

 さて復興は、震災前から過疎と高齢化に悩んでいたところも多かったし、冷たいようだが全部完全にもとに戻すのは無理。だからいくつか拠点決めて、そこに集中投資するしかないでしょう。集積確保のため、国の機関(特に復興関連部門)はそこに置く。さらに経済活動が戻りやすいように復興地区特別規制緩和でも作って、本社機能移したら十年間法人税免除といった、アジア諸都市の企業誘致みたいな各種優遇措置。一方、やりなおす元気がない人々は、土地家屋等を買い上げして、一部はやる気のある人に払い下げ。これで同時にまとまった国有地をつくり、将来のインフラ整備用地にする。

 えらい先生集めたところで、これに毛が生えた程度のものしかできないでしょ? あとはこれを地図に落とすだけ。必要な費用や財源について言うべきことは、本誌前号で飯田泰之氏が一通り語り尽くしている。ほら、これでおしまい。高い謝礼払って変な会議させるまでもない。

 ちなみに、原発事故の被害者は東電の責任だから、国による救済はするな、という議論もある。むろん東電にはちゃんと責任をとってほしいが、でもぼくはこの種の話は、しょせん会計上のお遊びだと思う。結局、ツケを払うのはぼくたちなのだ。すべて東電が賠償するにしても、かれらの収入は過去と未来のぼくたちの電力料金だ。料金には転嫁させないと息巻く論者もいる。でも……それならその賠償金はどこから湧いてくるわけ? 税金か料金か、国民から見れば支払う経路がちがうだけだ。

 あと国債発行による復興資金捻出について、後代にツケを残してはいけないと言って反対する人々もいる。ばかばかしい。そのツケを上回る遺産を残せばいいだけの話じゃないか。ぼくたちにはその程度の知恵はあると思うんだけどな。

 いずれにしても、とにかくはやくしようよ。叡智を結集して必ずや力強く復活を、とかいう精神論のお題目は聞き飽きた。救援も復興も、とりあえずでいいからさっさと計画決めて動こうよ。いまがんばっている現場を、もっとみんなで助けられる体制作ろうよ。……と書いている間にいくつか法案が出てきたけれど、ほぼ似たような路線だ。わかってるじゃないか。だったらそこで、現場知らずのお偉いさん会議のお墨付きなんかいらない。どうせ完璧な計画なんか無理だから、いい加減なもので始めて進捗を国民に見せつつ、少しずつ修正しながら進めようよ。PDCサイクルってやつだ。原発のほうは、政治家が口出ししたところで何も改善しないし、そっちはもう技術屋にまかせて、実際に政策でできることをきちんとやろうよ。


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YAMAGATA Hiroo <hiyori13@alum.mit.edu>
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