Voice 2009/12号 連載 回

外交オンチな岡田外相

(『Voice』2009 年 12 月 pp.120-1)

山形浩生

要約: 民主党の外交政策は、アメリカ軍への海上給油をやめるといいつつ、それについての根回しを直前までまったくしておらず、岡田外相がまぎわに突然あちこちでかけたが相手にまったく相手にされず醜態をさらしていた。センスなさ過ぎ。



 本誌が出る頃には、オバマ大統領来日騒ぎが佳境だろう。そしてもちろんそこでの大きな争点となるのは、アフガンへの海上給油問題となる。で、ぼくの予想だけれど、おそらく鳩山政権はいまの給油中止の方針を撤回させられるか、そうでない場合には他のところですさまじい譲歩や便宜供与を余儀なくされるはずだ。

 というのも、鳩山政権はこれについて何の準備もなければビジョンもないとしか思えないからだ。

 アメリカ側はもちろん、大統領来日できちんと成果をあげようとして、十月初めからアメリカの高官がかなり日本に対する根回しをしているとの報道が入っていた。ところが日本側は、当初この点についてもあれこれ見解が錯綜。そして一応給油停止を決めた十月半ばに、岡田外相がいきなり、アフガニスタンとパキスタンを訪問した。アメリカ側がかなり強硬に押してきて、泡を食ったんでしょう。

 さて……まず、この時期にアフガニスタンのカルザイに会いに行くという国際的センスのなさは致命的だ。現在、アフガニスタンは総選挙がインチキだらけで、カルザイに対しては国際的に非難囂々。アフガンの正当な政権としての地位すら多少疑問視されている状況だ。

 さらに、アフガンやパキスタンに説明してどうする? 海上給油はかれらの要請でやってるわけじゃない。あくまで米軍と日本との問題だ。イオングループは、出入り業者がどこのガソリンスタンドを使おうと知ったことじゃない。アフガンでは給油が話題に出なかったそうだけれど、それは別に給油停止を了承したのではなく、単にかれらの知ったことではないからだ。というか、岡田外相のほうからそれを議題として提示するのが本来の筋でしょうに。そしてパキスタンでは給油継続を強く要請され、それに対して岡田外相は、なんと社民党がどうしたとか内輪のもめごとを愚痴ったとか。テメーの国内の不手際を他国の大統領に聞かせてどうするの? 同席していたパキスタン外相は一言も口をきかなかったという。よほどあきれていたんだろう。

 ちなみに岡田外相は、帰りにジャカルタにも立ち寄って、スマトラ地震被災地の視察にもでかけた。でも、別に支援をアナウンスすることもなく、見ただけ。何をするかはこれから考えるというんだけれど、視察の時点で発生からすでに二週間、それから対策を考えても手遅れもいいところだ。見てるがいい、どうせ何も出てこないから。ちなみにぼくは当時ジャカルタにいたけれど、現地では岡田の訪問なんか一言も報道されていない。

 とにかくすべて目的意識皆無で、とりあえず出かけただけで中身がまったくない。でも、これは明らかに鳩山外交の基本方針らしい。その前にアメリカにいった赤松農相も、相手と日米FTAの話すらせず、今回は握手しにきただけという趣旨のことを平然と言っていたし。すべて形式だけだ。アメリカの入念な根回しとはなんたる差だろう。

 でも外交に限った話じゃない。鳩山政権はすべてこれだ。形式にばかりこだわり、中身がまったくない。脱官僚、国債を出さない、天下り禁止、みんな手法だ。でもその手法で何を実現したいの? それが皆無なのだ。そしてやがて中身が問題になって収拾がつかなくなると、その形式までグズグズに崩れてしまう。

 ちなみに前号の本誌で、竹内薫氏は鳩山首相が理系だから「科学的な最適戦略」を採用しているのだと主張していて、ぼくは唖然とした。竹内氏はいろんな意味で先輩なのでケチはつけたくない。でもぼくに言わせれば、鳩山政権に最も欠けているものこそ、まさにこの最適戦略の考え方なのだ。だって鳩山政権には、何をもって最適とするかという基準が何もないじゃありませんか、竹内先輩。国家戦略局は、OR的な科学的最適戦略を意味する、と竹内氏は書いていたけれど、その戦略局が一向に動かないのは、まさに鳩山政権に最適戦略がないことを見事に象徴しているんじゃないだろうか?

 補正予算見直しでも、「無駄」はほとんど見つからない。非常時用のリザーブまであれこれ取り崩して、それでも山ほど出てくるはずの削減分は三兆円にもならない。前号でぼくの言った通りでしょ? ちなみに理系でなくても、最適戦略くらいみんな直感や試行錯誤で実行している場合も多いのだ。ORは重要だけれど、あまり過信するのは考え物ですよ。

 が、それはさておき給油問題はどうなるだろう。鳩山は給油やめるという。アメリカは、続けろと言う。鳩山は、岡田がアフガン行った話をする。アメリカは、そんなの関係ないし意味もない、パキスタンは続けろと言っただろ、テロ対策をどう世界にアピールするんだ、とギリギリ詰めてくる。で、結末はどうなると思います? いま、郵政問題で民主は天下り廃止まで反故にした。さて、かれらが次に反故にするのは何だろう?


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YAMAGATA Hiroo <hiyori13@alum.mit.edu>
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