要約: TICAD IV ではアフリカ援助倍増がうたわれていたが、実はそんなに簡単なものではない。というのも、実際に意味のある援助をするためには、援助を受ける側がいろんな事業を実施するだけの能力が必要だが、アフリカでは能力的にも政府予算的にもそういう実施能力が欠けているからだ。無駄遣いをしないように援助を増やすのは、実は大変で課題山積みだというのはご理解ください。
先日、横浜でアフリカ開発会議を開催中にぼくはちょうどガーナにいたのだった。そして福田首相がアフリカに援助の大盤振る舞いを約束したという話が聞こえてきた。もちろん現地にいれば、課題が山積みなのは知っているし、日々いっしょに仕事をしている現地の人からは、日本はもっと援助してよー、と愚痴のように言われている。一見すると、渡りに船だ。だが……現地の援助関係者は、必ずしもこれで欣喜雀躍したわけではない。むしろ、とまどって顔を見合わせた、というのが実情だ。
なぜか? それは援助というのが実はみんなが思ってるほど簡単なことじゃないからだ。そしてアフリカになかなか援助がいかない大きな理由は、実は先進国がシワいから(だけ)ではないから、なのだ。
というと、多くの人はぽかーんとした顔をする。だって……アフリカはお金がないから困っているんでしょう? 学校も病院も道路も人材もみんな不足しているんでしょう? 援助でそれをたくさん提供すればいいだけの話でしょうに!
はい、そうしたものが足りないのは事実。しかしながら、それは単にお金の問題じゃないのだ。現地の実施能力というものが大きく効いてくるのだ。
たとえば学校援助を考えよう。学校を建てるだけなら援助で何とかなる。日本がどーんとお金を出して、学校の数を倍にすることはできるかもしれない。でも、重要なのは学校そのものではなく、そこで行われる教育だ。先生もいるし、教材もいる。学校が倍になったら、先生の数がいきなり倍に増え、人件費も倍増するし、校舎の管理費とか光熱費も跳ね上がる。それは現地の教育省あたりがちゃんと予算をつけなきゃならない。でも、予算は役所の力関係もある。いきなり一つの役所だけ予算を増やせと言っても、すぐに通る話じゃない。むしろ以前この欄で説明したファンジビリティの話が効いて、「教育省さんは日本からいっぱい援助もらってるから予算カット!」という事態になりかねない。
さらに学校を倍増するにしても、どこに学校を作る? 学校が必要な場所を見極めるのは大変だ。さらに工事は日本のゼネコンをつれてくるわけにもいかないので、現地で調達するしかない。結局のところ、日本が援助すればするほど、予算をとる、図面をひく、土地を収用する、工事を手配するといった現地の人たちの仕事は増えることになる。そして、現地の役所には、それだけの人的、財政的な余裕がない。つまり日本がお金をいくら積もうとしても、現地の人たちがそのプロジェクトを受けて実施する能力がないと、援助のしようがないのだ。
こう言うと、先生も教材もすべて日本が援助しろ、と言い出す人もいる。でも現地の意向を無視してそんな文化侵略みたいなまねはできないのだ。だいたいアフリカに行きたがるような酔狂な日本人だって限られているんだし。現地の人材育成すればいい、ともいわれる。もちろんそれはやる。でもぼくたちはせいぜい研修してあげるくらいしかできない。それですら時間がかかるし、何度か研修を受けたくらいで現場でつかいものになる人材ができるわけでもない。
まして、今回福田首相が掲げたのは、無償援助(お金をあげること)だけじゃない。借款もある。あげるだけなら、向こうが使いこなせるかおかまいなしに押しつけることは不可能ではない。でも借金となると、相手だって二の足を踏む。すでにアフリカの多くの国は、過去にいっぱい借金をして首がまわらなくなり、債務棒引きしてもらった過去を持つ。向こうもそんな経験を繰り返したくはないだろう(と思いたい)。そして日本の関係機関だって、首相がなんと言おうと、そんな相手にホイホイ貸すわけにはいくまい。十年先に返済が滞ったら、怒られるのはだれだと思う?
それを考えると、いきなり援助を増やすと言われても、いったいどこのどのプロジェクトにお金をつけたものやら、と現地の状況を深く知る人ほど困ってしまうんじゃないだろうか。現状ですら、アフリカは「足りないモノは多いんだけれど、案件化できるタマがない」というのが各種機関の悩みなのに。
もちろんこれは、アフリカに支援がいらないということじゃない。そして今回の福田首相の約束が、援助自体よりはむしろ中国の援助外交に対抗した資源外交的な面を重視したものだというものも知っている(首相は否定するが外国ではそう見られている)。ただ、まともな援助はそうそう急ごしらえでできるものじゃない。これが短期的に、何か歪んだ無駄遣いにつながらないといいな、とは現地関係者の端くれとして願う次第なんだが。
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