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Friday the 13th: Jason's Revenge



 あの「13日の金曜日」文書(ということにしよう)を公開してから 3 日で、驚いたことになにやらとても不満げなメールが、山形を念入りに取材してくれた「週刊金曜日」の長谷川清美さんから届いた。ろくに取材をしていないという汚名をそいであげたので、感謝されるかと思っていたのだけれど。なんとこのメール、ページの主旨をも誤解なさっているうえに、その著者すら勘違いなさっているのです。山形の愛は、またもや伝わらなかったようで(涙)。というわけでその悲しい一幕を。

これが問題のメールだ!

山形 浩生様

お忙しいところ誠に申し訳ありません。
ちょっとお聞きしたいことがありまして、ご連絡差し上げました。
先日稲葉振一郎様から記事についてのご意見いただきましたが、彼のホームページ で今回私が山形さんにメールにて取材させていただいた一連のやり取りが全公開さ れています。
これに関して、私は稲葉氏から転載の申し入れをまったく受けておりません。
にもかかわらず公開されているのは、山形さんがこの件を許可されたのでしょうか ?
以前メールでも申し上げておりますが、メールの内容を記事に掲載するときは山形 さんの了承を得ると私はお約束しております。
メール内容公開許可はその本人に委ねられなければならないはずです。
でなければ、プライバシーの侵害で法に抵触するものだと思います。
これについてご説明いただきたく、ご連絡下さるようお願い申し上げます。

長谷川 清美

このメールからわかること。

 ここまで短い中で、示唆に富んだメールを書けるというのは、やはり実はこの長谷川さん、なかなか侮れない方なのかもしれない。あまり小細工や芸のきいた文章が書ける方ではないと思っていたのだけれど、どうしてどうして、お見それいたしました。以下は山形なりの解読。

1. この人は、urlとかリンクとかホームページとかいうものの仕組みをまったくご存じない。

 urlを見れば、あれがぼくの借りてるサイトにあるぼくのつくったwebページだというのはすぐわかるのだ。さらに、ソースのヘッダには作者名が書いてある。ちょっとでもインターネットとかについて勉強していれば、「稲葉氏から転載の申し入れをまったく受けていない」とかいうわけのわからない一文は出てこないはずなのだ。このメールを読んで、ぼくは最初、稲葉さんがなんか変な文書をつくったのかと思って、いっしょうけんめい探してしまったではないか。事態に気がついて、あまりにかわいそうなので、名前とアドレスをいくつか追加しておいてあげたのだ。

 長谷川さんは、週刊金曜日に書いた記事について、あちこちで「忌憚のないご意見」を求めている。たぶん稲葉さんは、あの性格だからかなりきつい「忌憚のないご意見」を書き送ったんだろう。(ここの3/2のいなばさんの書き込みでも「要点」なんだって。なら全文はどんなすさまじいものだったことか)それで彼女はトサカにきて、自分に都合の悪い(わけではないんだけれどね、あれは。一応は山形にも取材したということは主張できるじゃないか)ものはすべて稲葉からきたんだろう、というような短絡的な発想をしたんじゃないかと思う。

 さらにもちろん、ぼくがはじめて「13日の金曜日」文書の存在をアナウンスしたのは、稲葉掲示板でのことだった。だから彼女は、そのページ自体も稲葉さんのサイト(「ホームページ」と書いているけれど、そういうつもりなんだろう)にあるんだと思いこんだわけだ。リンクを張るということがぜんぜんわかってないわけだね。だいたい、その掲示板でだってぼくは、山形という本名でちゃんと書き込みを行っているんですけど。

 ジャーナリストなのに、ちょっと調べればわかるような事実関係を調べる能力がないか、あるいはその手間をおしむ(同じことだけど)のは相変わらずだ。しかもこれ、「ネットは公共圏かどうかの議論が必要だ」などと口走って、ネットについていっぱしにもの申そうという人なんだよ。寒い。もしこのメールが数日遅れていたら、ぼくはまた長期出張で、返事もできなかっただろう。そうしたら彼女はどうしてたかな? プライバシーと権利をふりかざして、トンチンカンな稲葉糾弾でも展開してたんじゃないかな? まあこれは邪推かもしれないけれど。

2. この人は、ジャーナリストとしての自覚がまったくない。私信と取材の区別がついていない。

 もし彼女の送ってきた一連のメールが私信であれば、そりゃプライバシーの侵害もあるかもしれない(これすらあやしいと思うんだけど。中村正三郎は、おれにメールを書くなら、すべて公開されるものと覚悟しろ、と書いている)。でも、彼女の送りつけてきたメールは、私信じゃないのだ。最初のメールを見ればわかるけれど、「週刊金曜日」としての取材なのね「週刊金曜日」でこの事件をとりあげることになって、彼女がその担当になった、と書いてあるでしょう。だから、彼女が取材としてやったことは、彼女のプライバシーなんかとは何の関係もない。彼女がぼくに送ったメールは、「週刊金曜日」という組織からのものであって、彼女個人のものじゃないのだ。  ぼくも仕事でいろんな人の話をきくけれど、会社の肩書きを使って話をきく場合は、会社の代表だ。その時に向こうに資料をあげて、それが勝手に流出されたら、文句はいうけれど、それは会社の法務や広報から文句がいくはなしで、ぼくのプライバシーがどうのとかいうくだらん話にはならないのだ。

 それにそもそも、この人は取材ってものをなんだと思ってるんだろう。取材に応じてしまったら、ぼくはそこでしゃべったことは基本的に公開されるものと考えている。ぼくが公開しないでくれと頼んでも、それが聞き入れられるという保証はない。取材されれば、都合の悪いことも書かれるかもしれない。ラブレターを出したら、掲示板に張り出されるかもしれない(そういえば今回も、掲示板に貼ってるんだなあ)。そのくらいの覚悟はあるのだ。
 そして取材する側も、ぼくが泣いて頼んだって、公開すべきものは公開する。たとえば今回の取材中に、ぼくが実は近所の子供を次々に強姦しては屠殺して、鮮血風呂に入って、しかもその死体は生ゴミなのに、なんと燃えないゴミの日に出していることが偶然わかってしまったとする。ぼくが「プライバシーだ」といって頼めば、長谷川さんはそれを公開しないでくれるの? それじゃ共犯だ。そんなことをしていたら、報道だのジャーナリズムなんか成り立たない。たいがいの事件は、だれかには都合の悪いことだし、だれかにはプライバシーの問題だ。でも、プライバシーは無制限に認められるものじゃない。「公共の福祉」ってやつとのかねあいで、制限されるものだ。だからこそジャーナリズムの傍若無人も許されるんだろう。

 そして、取材を受ける側だけがそんなリスクを負わなくてはいけない道理があるもんか。あれだけぼくに文章を書かせて、彼女は(週刊金曜日は)一銭も払ってくれないのだ。どうしてぼくが、なにを書かれるかわからないリスクも、手間も、時間も、すべて負担して、さらに取材する側のプライバシーだの権利だのまで気遣ってあげなくてはならないのだ。自分だけは安全な立場で、なにを口走ってもどんなトンチンカンなことを言っても、プライバシーでぬくぬく守られると思うな。ぼくはジャーナリズムの正義なんていうお題目なんか信じてないけど、あなたたちマスコミは一応、社会正義の実現を目指して、公共的な立場でいろんな団体や個人に対してアカウンタビリティを求めていく存在を自負してるんだろう。「週刊金曜日」なんか、実力皆無の退行左翼お題目雑誌で、トンデモオカルト科学にあっさり騙される頭の悪さをむきだしにしつつ、その自負だけは突出してるじゃないか。なら、隗より始めよ。自分たちも、自分たちのやる取材についてアカウンタビリティを持て。どんな取材をしてるか公開されたくらいで、なにをビビってるんだ。

 ただしもちろん、これまで取材される側がそんなことを考える必要はあまりなかった。だってメディアの権力を行使できるのは取材する側で、いくらでも聞きたい放題のデタラメをきいたって、それがされた側はなにを書かれても泣き寝入りする以外に手がなかったのだもの。でも、これからこうして、マスコミ側のやってることについて、書かれる側が反撃する可能性も出ているのか。インターネットでマスコミがつぶれるという議論があって、みんなマスコミよりもネットで情報が入手できるから、という議論だ。これは眉唾なんだけれど、マスコミが別の形で変化せざるを得ない契機がここにあるかもね。インターネットが普及したおかげで、メディアの地位は確かに変わりつつあるみたいだ。おもしろい時代になってきたなあ。

3. この人は、自分が自発的に勝手に約束をすると、相手も無条件で同じ約束を自分に対してしてくれると思ってる(らしい)。

 「メールの内容を記事に掲載するときは山形さんの了承を得ると私はお約束しております。」はあ、そうでしたね。それで? (しかも実はよく読むと、あなた約束はしていないのだよ、長谷川さん。「了承を得たいと思う」という希望を書いているだけだ)。いったいこの文は何のためにあるんだろう。自分はこう約束しているから、おまえもそれにしたがうべきだ、と言いたいのだ、とぼくは愚考するのだけれど。邪推なら失礼。

 でも一連のメールをごらんいただければわかるように、ぼくは彼女になにも約束していないのだ。そしてこんな約束をしてくれと長谷川さんに要求したことさえない。彼女が勝手にやったことだ。自分はコレコレと約束した、なんてぼくに言ってどうするんだろう。取材の中では、オフレコだと事前に言わなければすべてオンレコ(っていうのかな)だ。あなたのテープもまわってるけど、ぼくのテープもまわる。そして長谷川さんは、ぼくに自分から約束した以上、記事中で勝手にぼくのメールを使っちゃいけないけど、ぼくは別に何の義理もない。

山形の(とってもイヂワルな)お返事

At 00:02 99/03/04 +0900, you wrote:
> メール内容公開許可はその本人に委ねられなければならないはずです。
> でなければ、プライバシーの侵害で法に抵触するものだと思います。
> これについてご説明いただきたく、ご連絡下さるようお願い申し上げます。

 あなたはジャーナリストとしての自覚がまったく欠けているようなので申し上 げておきます。あなたがここでおっしゃっていることは、私信でならばあてはまりま す。しかしながら、あなたがぼくによこした数々のメールは、マスコミの取材であり 、私信ではありません。マスコミの取材とそれに対する返事は、基本的には公開が前 提です。取材先が取材された内容についてあとから公開を断っても、あなたはジャー ナリストとしての判断でそれを公開する場合もあるはずです。

取材する側についても同じことがあてはまります。あなたはマスコミという天下の公 器をバックにして取材を行っています。ですから、一連の取材はあなたの私信ではあ りませんし、あなたのプライバシーが適用されるものでもありません。

このメールを読むと、長谷川さんは週刊金曜日というマスコミの名を借りながら、人 には見せられないような恥ずかしい取材をしているという自覚がおありになるのでし ょうか? まさかとは思いますが、そうならば長谷川さんのメールの本文については 、ぼくのほうで引用まじりの要約をつくって置き換えてさしあげてもいいですよ。前 にももうしましたように、ぼくは長谷川さんの名誉を守る意図であれを公開している のですから。ただしもちろん、ぼくのメールに引用してある部分は、ぼくのメールの 中の正当な引用ですから変えるわけにはいきませんが。

取り急ぎ。

At 00:02 99/03/04 +0900, you wrote:
> 先日稲葉振一郎様から記事についてのご意見いただきましたが、彼のホームページ
> で今回私が山形さんにメールにて取材させていただいた一連のやり取りが全公開さ
> れています。

あれはぼくが公開しているのです。稲葉さん自身はそこにリンクすら張っていません。 ぼくが、長谷川さんがぼくに取材せずにいい加減な記事を書いているという誤解を とくためにやっていることです。urlを見ればその程度のことはわかるでしょうに。

今朝これを読みなおして、長谷川さんはインターネットがどういうふうに機能しているのか、url というのがどういうもので、「リンク」というのがなんなのか、「ホームページ」というのがどういう概念なのか、まったく理解していないにちがいないということに思い当たりました。さらに、html ファイルのソースを見てその作者を確認するというような作業すらしていない(おそらくはできないし、そもそもソースのなんたるかもご存じ無い)のも確実でしょう。

取材の中で、「ネットは公共圏か云々」などとおっしゃっていたので多少は勉強なさってここらへんくらいは当然おさえているものと思っていたのですが、どうもちがうようですね。そういう人にもわかるように、ファイルにもう何カ所かぼくの署名を追加しましたが、責任だとか許可だとか騒ぐのであれば、まずそこらへんの仕組みを理解したうえで、デューディリジェンスをおすませになってからものをおっしゃるようお願いいたします。あなたはジャーナリストのくせに、きちんと調査もせずに、まったく罪もない稲葉さんの責任追及などをしようとしていたのですよ。

あと、あの取材があなたの私信ではないことを明確にするために、あなたの最初のメールも追加しておきました。あなたは、「週刊金曜日であの事件をとりあげることになって、それを自分が担当することになった」と明言しておられます。したがいまして、一連のメール取材は長谷川清美としてのものではなく、「週間金曜日」としてのものであるのは確実です。

とりいそぎ。

明日はどっちだ!


 さて、この先どういう展開になりますか。たぶん、いちいちこうして公開されると恥の上塗りだというのはそろそろわかると思うので、もう黙ってしまうと思うのだが、まだまだわかりません。明日はどっちだ! 刮目して待て!

ちなみにあさっては、ぼくはまたバングラデシュなのです。あさっては南南西に進路をとれ!

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