汝の望むところを為せ。

© 1996 Jamie Zawinski <jwz@jwz.org>
do what thou wilt.


 ある雨降りの夜、ぼくはお気に入りのマンガ屋で買い物をしてた。もう時間も遅くて、店にもあんまり人がいなかった。せいぜい 12 人くらいかな、みんなだまってたなを眺めたり、ページをめくったり。

従業員のお二人 カウンターのところの従業員の一人が、店内スピーカーのスイッチを入れた。そしてまじめくさった調子でこう放送した。「コミック・リリーフ来店者のみなさま。いまから 5 分間だけ、抑制を解いて思いっきり好き放題やることを認めます。もう遠慮なく好きになんでもやってください」 間。 「5 分間だけですよ。どうも」

 ぼくは内心くすりと笑って、たなを眺め続けた。

 一分かそこらして、カウンターの店員もう一人が放送をした店員のほうを向いてこう指摘した。「みんな何もしてないよー」

 「そうだなあ。こわいのかも」と最初のヤツ。

 カチッ。「あと 4 分 30 秒ですよー」と放送。カチッ。

 二番目の店員が言った。「あるいは逆に、この人たち、これでもうすでにずばり好き放題やってるのかもよ。別におれたちに許可してもらうまでもないのかも。たぶんこの人たち、みんなとっくに己の運命を完全に支配しきってるんだよ」

 「かもなー」と最初のやつがつぶやいた。「おれたち、本当に啓蒙された時代に生きてるんだなぁ」。


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