HotWired Japan Frontdoor / Bit Literacy Back Numbers /
Digital Freedom Interview
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

エリック・S・レイモンド
Eric Steven Raymond

情報そのもので金を取る
ビジネス・モデルは、もはや無効である

Interviewer: 山形浩生


 エリック・S・レイモンド。彼はオープンソース・ムーヴメントの最重要人物と言っていいだろう。オープンソースの推進組織であるオープンソース・イニシアティヴの代表であり、オープンソースの原典となった論文『伽藍とバザール』、『ノウアスフィアの開墾』の著者であり、ハッカー・コミュニティのスラング辞典『Jargon File』の編者であり、古くからのオープンソースソフトの開発者でもある。『伽藍とバザール』がネットスケープ社にコミュニケーターのソースコード公開を決意させるきっかけになったというのはいまでは有名なエピソードになった。
 そのエリックに、彼のいくつもの著作の日本語訳を手がけた山形浩生が訊く。



次の論文は『The Magic Cauldron』。
オープンソースは「魔法の鍋」なんだ


ESR: ああ、まずこっちから質問させてよ。ぼくの "Cathedral and the Bazaar"のCathedralって、なんて訳したの?特定の宗教色があることばだって聞いたんだけど。

――「伽藍 garan」ですけど。確かに仏教建築のほうのイメージがあるかもしれません。でも、ル・コルビュジェが「When the Cathedral was White」っていう有名な本を書いていて、それが「伽藍が白かったとき」と訳されてるもので、まあそんなに違和感もなかろうと思って。それと、あの文章は別にキリスト教の大聖堂であることが特に重要ではないと思うんですが。むしろ設計方針の問題ですよね。

ESR: うん、そうだね、なんか中央集権的なデザインがあって、それにすべてがしたがわされるという状態をいいたかったわけだから、別にキリスト教でなくてもかまわない。それに仏教のとくに日蓮系の一派は、世界の数ある宗教のなかで、武力による強制的な改宗を迫ったという点でキリスト教やイスラームと並ぶ悪名高い宗教だから、強権的という意味ではたぶん似たようなもんかな。

――日蓮……なんでそんなこと知ってるんですか?

ESR: ああ、宗教には興味があるし。ぼくは仏教徒ではないけれど、特に禅には非常に共感するところがある。特に格闘技をやっていると、精神的な面で禅から学ぶことは多いよね。むかしは朝鮮空手をやってたのだ。

――テコンドーですか。

ESR: いや、その名前は使わないようにしてる。テコンドーというと、みんな蹴り技だけだと思っちゃうだろう。でもそうじゃないのだ。それで最近では合気道をやってる。

――へえ、しかしあなたはガンマニアとしても有名ですよね。

ESR: いや、格闘技をやれば当然のことだと思うよ。ぼくは銃の使い方を修得しない武道家はインチキだと思うな。だって武道は、そもそもはある種の戦闘技術として生まれてきているわけだ。だからその時代で支配的な攻撃手段についてきちんと勉強して、それに対してどういうふうに対抗するのかを考えない武道というのは、現実に対して目を閉ざしているわけだ。銃ってものがあることを否定するわけにはいかないだろう。それがないふりをするのはごまかしだよ。

――ふーむ。さて「伽藍とバザール」についてよく質問を受けるのが、「あれではやはり開発者には金がいかないからソフト開発が止まってしまうのでは」というコメントなんですが。これは日本に限った話じゃないと思うんですが、どう答えてます?

ESR: うーん、だから金以外の原理があるんだってことを『ノウアスフィア』で書いたんだけどねー。それを読んでくれってことかね。だいたい、そういう考え方自体がよくわからないよね。人が金をもらわなきゃ何もしないと思うってことは、ほとんどすべての人間活動を否定するに等しいものね。必要だからつくる。おもしろいからやる。あたりまえのことだよねえ。それをお金以外の動機づけがあり得ないと思っちゃうというのはね。

――あと、あの論文の中で、伽藍とバザール、という開発方式の対比がみんな必ずしもよく理解できていないように思います。特に、「LinuxだってLinus Torvaldsがてっぺんにいてあーせいこーせいと言ってるではないか、伽藍とどこがちがうんだ」という疑問が一部にあるようなんですが。

ESR: いや、それはまったくちがうよ。だってかれはカーネルのことしか考えてないもの。Linuxシステム全体については、Linusはまったく関心がない。あーせいこーせいなんて言ってないもの。

 それにカーネルについてもかれがその時々でやりたいことはあるけれど(いまはSMPサポートとかね)、それはかれが自分でやる話であって、「こういう方向にカーネルを進化させろ」というのはぜんぜんない。やりたい人が勝手に「こうしたい」というのをだしてきて、Linusがやってるのはそれが他のところとぶつからないか、とか、将来的に変な制約を持ち込まないか、とかそういうところのチェックでしかない。かれが支配してるわけではぜんぜんないのだ。調停役っていうのがいちばん適切だと思う。

 確かにその点は、あまりわかってもらえてないのかもね。次の論文を書き終わったら、そこらへんをもっとはっきりさせるように前のやつも改訂するつもり。

――その次の論文なんですが、これまでの二論文はLinux開発モデルですよね。こんどのはビジネスモデルについてだそうですね。もしよかったら、中身について少し話してもらえませんか。ちなみに、ESRがこれを書いてると聞いて研究テーマを変えた人が最低でも三人はいるんですけど。

ESR: ああ、それは賢明だと思う(笑)。次の論文は The Magic Cauldronといって、cauldronというのは魔法の鍋なんだ。その中でオープンソースソフトがぐつぐつ煮たってて、そこからいろんな価値が魔法のように生まれてくるというイメージ。もうだいたい書き上がっている。たぶん6月中には公開できるんじゃないかな。

 中身は見てのお楽しみだけれど、基本的には、もう情報そのもので商売をするというモデルはダメだ、という話になる。情報では金をとれない。でもその周辺サービスや付加価値の提供で商売をすることは充分にできるんだ。そこらへんのビジネスモデルについて、ゲーム理論的なアプローチも入れながら説明してる。

――もし情報ではまったくお金がとれないなら、それはつまりすべてのソフトは今後オープンソース化する、と考えているわけですか?

ESR: いやぼくも、あらゆるソフトがオープンソースになるとは思っていないし、そうなるべきだとも思わない。
 たとえばこないだ、ある材木屋さんがきて、「うちの丸太切りソフトをオープンソース化したらどうだろうか」という相談を受けたんだけれどね。欲しいサイズの板を入力すると、丸太の切り方を最適化してくれて、無駄なく板がとれるようにするというなかなかおもしろいソフトだった。だけれど、まず利用者が限られているからネットワーク効果もない。信頼性って点でもクリティカルじゃない。多少おがくずが増えたところで、まあどうってことはないだろう。だから、これまで通りの開発でいいし、変なライセンスを考える手間の分だけ無駄ですよ、ということでクローズドのままでいくことになったよ。



ネットスケープのソースコード公開は、
成功だったと思っている


――いまのがオープンソースの条件ということでしょうか。

ESR: そう。ネットワーク効果と、あとは信頼性だ。
 ネットワーク効果というのは、多くの人がそれを使っていて、一人の発見した改善をみんなで共有することで、世界全体でものすごい改善が行われるようなことだと考えてほしい。そして信頼性というのは、まあ自明だろう。ある程度の基盤的なインフラになってきたときには、すべてのソフトがこれを要求されるようになってくる。そしてそのためには、オープンソースであることがとてもだいじになってくる。これについては『伽藍とバザール』で説明したよね。

――うーん、でもオープンソースのネットワーク効果と信頼性をベースにしつつ、独自拡張をすることで情報による商売も可能ではないでしょうか。各時代に頭のいい人がいて、オープンソースのものをベースに何か足して付加価値をつけることはできるはずですよね。

ESR: できる。できるけど長続きはしないでしょう。どうやって信用させるべきかって点がすごくむずかしい。オープンソースが勢力を増してきたときに、ある人がクローズドなコンポーネントをそれにくっつけたとする。特にそれがインフラ化しているようなものの場合、正体のわからないものを安易に使おうとするだろうか。信用できるものだってことを納得させるのがむずかしいと思うな。

――あと、ブランドイメージというのはいまでも大きいんじゃないでしょうか。市場、特にソフト調達担当者がどこまでソフト判断能力があるかは疑問だし、どうしてもベンダー名に頼ってしまう。その点でオープンソースの商業的な限界ってのはよく言われますよね。

ESR: その質問にはぼくが答える必要はないね。実際にLinuxが市場シェアをぐんぐんのばしているという事実をどう説明する? 時間はかかっても市場はそれなりに評価する力を持っている。だいたい、NT 5.0(2000、だっけ)が出荷できそうになくて、ベータ版もぜんぜんダメで、さらには開発もなんか収拾がつかなくなっている点は、ブランドなんかで補えるものかね。むしろオープンソースでないことがマイナスイメージになるんじゃない?

――しかしオープンソースだからって、なんでもかんでもうまくいくってものではないみたいではないですか。Mozillaをどう評価していますか? 開発者の一人だったJamie Zawinskiは、『Mozilla.org 顛末記:辞職と回顧』で、オープンソースそのものには好意的ですが、ネットスケープのソースコード公開は失敗だったと言っていますよね。

ESR: ああ、あれね。いや、ジェイミーは、最前線にいて現場に近すぎたんだと思う。かれがあの文章で言っていたことは本当だし、かれがとってもつらい立場に置かれていたのはよくわかるんだ。かれの気持ちはとってもわかる。ぼくもあのポジションにいたら、そう思っただろう。でも、ジェイミーは近すぎたせいで全体像が見えなくなっているとも思う。ぼくはmozillaは成功だったと思っている。

――うーん……なぜですか。Mozillaの最初の目標は、もっとどんどん新しいリリースが出てきてソフトが次々に進化していくってことではなかったんでしょうか。いまだにオープンソース化したものを反映したリリースは出ていないでしょう。

ESR: いや、ちがう。ネットスケープがソース公開に動いたのは、そういう狙いではなかったんだもん。

――(!!!)ちがうんですか?

ESR: うんちがう。あれの唯一最大の狙いというのは、マイクロソフトの物量攻撃によるブラウザ市場の制覇をくい止めることだったんだ。そしてその目標は、見事に達成されている。最新のIDGかどっかの調査でも、インターネット・エクスプローラのシェアは下がったはずだよ。ネットスケープのブラウザがこれからも残るんだというのを、信用できる形で世界にアナウンスできたという意味で、ネットスケープのソース公開は成功したと言えると思う。

――ふーむ。で、マイクロソフトの幹部が、NTをオープンソースにするかも、なんてことを言ってますよね。可能だとおもいますか?

ESR: まさか。ただの目くらましだよ。だってかれらがそんなことをするメリットってないもの。マイクロソフトはあくまでクローズドな環境で儲けるモデルになってるから。それにコード公開ったって、なんかすさまじいコードの量になってて、しかもまだ増殖中だって? いやあ、見たくないなあ。

――逆はどうでしょう。MSがBSD系のOSかなんかにLinuxエミュレータをのっけてMS Linuxと称してだすってのは。MSブランドで客を集めて、そのあとで独自拡張をつけてクローズド化して……。

ESR: わははははははははは。いやぁ、エイプリルフールのネタでたくさんあったけどね。そんなことをしたら、MSが負けを認めたってことではないの。そんなことになったら、まず世界のハッカー連中がいっせいにMSを笑いものにするでしょ。そしてその後クローズド版をだす? われわれとしては、こう言えるわけだ。「ほらごらん、かれらも基本的にわれわれのほうが優秀だって認めたよ。さて、この後どうしたい? またMS式のクローズドな開発につきあって、NTみたいな泥沼に入り込む、それともこっちのオープンで中身がわかって信頼性の高い方の道を選ぶ?」みんなどっちを選ぶと思うね?

――うーん。ところでOpen Source Initiative (OSI)というのはどういう組織なんでしょうか。財源とかは? OSIの認定を受けるにはどういう手続きがいるんでしょうか。去年の4月にできてからこれまで1年の活動履歴を説明してもらえないでしょうか。

ESR: いやちょっと待って、ネットスケープの一件で、OSIがその頃からあったように思われてるけれど、OSIができたのは去年の10月なんだよ。それはまちがえないでね。
 で、組織としては、任意団体というのがいちばんいい説明かな。いまはぼくも含めて完全なボランティア。だから財源なし。寄付とかもない。認定をだすのも完全に無料だ。われわれに電子メールを一本送ってもらえれば、相談に応じる。今後、相談の数がどんどん増えてきたら、少し料金をとってスクリーニングするとか、もっと組織体制をきちんとする必要は出るのかもしれないけれど、いまのところそんなことを考える必要は出ていない。ありがたいことに。
 これまで相談を受けたのは、一ダースほどだな。そんなに多くはない。ほとんどは、そんな大々的にアナウンスされたりはしないものばかりで、たまにアップルみたいなのがあると派手に騒がれるけれど、それ以外のものがほとんどだ。すでにオープンソース的なことをしているところは多いし、その企業がうちのライセンスはどうだろう、と相談にくる、とかね。
 最近の話題としては、IBMが近々大きなことをやるよ。だけれど、この件は守秘義務があるので、いまはこれ以上は話せない。



オープンソースの公開市場ができつつある
企業が注文を出して、それにハッカーが乗る


――最近のlinux.comのインタビューでは、オープンソースというのは銃と同じで、社会的な自由と平等を実現するための最強のツールの一つだ、とおっしゃってますね。社会正義実現ツールとしてのオープンソース、という言い方は、なんだか以前に比べてストールマン的な、ソフトウェアを使った社会的自由の推進という目標が強く出てきたように思うんですが。通常、OSIはFSFの理想主義に対するプラグマティックな動きと思われていますよね。でもどうなんでしょう。立場が少し変わったんでしょうか?

ESR: いや、ぼくは立場を変えたつもりはない。まず、ストールマンは、知的所有権という考え方はすべてまちがっていて、みんな自分の書いたソフトを公開しなければならないと言っている。ぼくは、知的所有権はすばらしいと思うし、保護されるべきだと思う。ただし、人がそれをあまり極端に行使しないことで、とってもいい有益な結果が出てくるんだよ、というのを主張しているわけだ。人が自主的に権利を放棄したり、自分の権利を限定したりするのはすばらしいんだけれど、その権利を最初っからあげないのはダメだね。自主的にやるのと、それを強制するのとでは雲泥の差があると思う。

 それともう一つ、ぼくは自由とかの話はあまりしたくないのだ。別にぼくだって、ゆずりあいと共有に基づく社会がいやだと言うんじゃない。でも、自由のためにオープンソースを使っていただく、というのは変だと思う。オープンソースはそれ自体メリットのあることで、だから採用しましょう、というのをきちんと説得できなければ、絶対に行き詰まるよ。だってそうでないとしたら「オープンソースは実はダメなんだけれど、自由な社会のために我慢して使ってください」ってこと? ダメダメ。そんなのSustainableじゃないでしょう。そしてぼくは、オープンソースはそれ自体で理にかなったものだと思っている。そうじゃなきゃこんなのやらないよ。

 ただし、オープンソースが広まることによって、ある主の社会的政治的な自由が拡大するという副作用があるかもしれないってことについては、否定する気はまったくないし、そういう事態になってくれれば、ぼくとしてはもう願ったりかなったりだね。「オープンソースはこんなにいいんですよ、ああそうそう、それともしこれがうまくいけば、社会政治的な意味ってのも出てくるかもね」、というのがぼくの立場なんだよ。

――ブルース・ペレンスとの一件はどうなったんでしょう。特にAPSLの不備というのは、あれは結局どうなんですか? ほんとうに不備だったんでしょうか。

ESR: 不備ではなかった。あのOSIの公式回答でも説明した通り、アップルが倒産したときの扱いが不明だとかいう話は、ほかの条項との組み合わせでカバーされていたんだ。ただし、いくつか不明瞭な記述があって、複数の条項の組み合わせで記述されていた部分もあって、それが混乱を招いていたのは事実。それはAPSL 1.1ではなおした。いまはもう、ペレンスたちもあれについて文句は言っていないし、満足してると言っている。だからあの一件は片づいたと言っていいんじゃないかな。

 あとペレンスとは、ほかの点でも和解に達してる。はやとちりや誤解もあったけれど、どっちも同じコミュニティのために活動しているのは事実だし。

――「仕事、かわってくんない?」とかを見ると、あなたはSlashdot.comとかニュースグループの投稿なんかについて、わかってないガキどもの青臭い発言と言いつつ、全部目を通しているみたいですね。なぜです? ああいうところの書き込みのほとんどはろくでもないし、ふつうはしばらくするとまともには見なくなると思うんですが。あなたにとってああいうのはやっぱり大事なんでしょうか。

ESR: うーん、あれはぼくがマーケットリサーチできる唯一の場なんだよ。フィードバックがないとなんでも腐るからね。だからクズみたいな書き込みばかりだけれど、我慢して読まざるを得ないのだ。S/N比が低すぎるし、読んでいるとほんとうに頭にくるし、がっかりさせられることばかりだけれど、大事といえば大事。電子メールとかでくるのは、ほとんどがきちんとしたものだし、もっと支持してくれるものが多いんだけれどね。

――その他、大きな動きというのはなにかありますか。

ESR: まず、オープンソースの公開市場ができつつある。このインタビューが出る頃にはもう動き始めてるかもしれない。ハードの開発元とかがたとえば「このネットワークカードのドライバを8月までに書いてほしい、お値段300ドル」とかいう注文をここにアップする。するとそれをだれかが「のった!」と言って引き受けるようになるんだ。

――できなかったらどうすんです?

ESR: いやまだ動いてないから細かいところはこれからだけれど。でもまず、あまりに非現実的な申し出だったらだれも応募しないだろう。そうしたら企業側が、条件をよくしてやればいい。そして複数の人が手を挙げた場合、そこで競争が起こるようにすることで、お互いに刺激されあって条件内でものを作ろうとしたり、あるいは協力しようとしたり、いろんな形でソフトが完成するようにもっていけるだろう。
 さらに、もし期日までにできなければ、その人はお金はもらえないけれど、少なくとも途中まで書き上がったものはあるだろう。それをベースに別のだれかが開発を進めることもできる。完全に無駄にはならないよ。ああもちろん、ここでは書いたソフトはすべてオープンソース化するという条件つきね。

 あと、それ以外でもう一つ動いているのが、サポートを提供しようというページ。これはまだ着想段階でっどうすべきかもわからないんだけれど。FAQのでかいやつにするのか、あるいはもっとサポート企業を紹介するようなものにするか、あるいはそのサイト自体がいつもオンラインで、だれかから質問があったら24時間いつでもすぐに答えを出せるようにする、とかね。これもなんらかの形で動くはず。

――休暇中に久しぶりにコードを書いた、と別のインタビューで言ってましたが、それはこのプロジェクトのためのものだったんですか?

ESR: いや、いまの2つのプロジェクトはぼく以外の人がやってるんだ。最近は自分ではGNOME用のソフトを書いてる。あれはおもしろいよ。ネットワークモニタ用のソフトを書いたんだ。あとは、あちこちのアーカイブサイトがほとんど収拾つかなくなりつつあるのをなんとかしたいと思っていて、それを解決するためのソフトを考えてる。いろんなソフトがあって、もうわけわからなくなっているだろう。アップロードしたソフトにちゃんとした説明がついて、それがちゃんとインデックスに自動的に登録されて、管理者に負担がかからないようにするんだ。

――自動的ってったって、システムのほうでソフトの解析して説明を書くわけじゃないでしょう? さっきのオープンソース市場みたいなのがあれば、あらかじめ仕様が書かれているからそういう作業も自動化できるだろうけど。

ESR: うんうん、自動ってのはもちろん、人間がやるしかないんだけど、これまではサイトの管理者がそういう作業を負わされていた。これをアップロードする人にやってもらうようなシステムを考えているんだ。きまった書式で仕様つけて。確かにこれも、強制はできないけれど、でもそういうデータ入力や説明書き作業がしやすいような環境をつくってあげることはできると思う。その、オープンソース市場との組み合わせってのは思いつかなかったな。それは使えるかも。

――実は日本のあるお役所が、日米ソフトウェア格差というものについてとても心配しています。なぜLinuxのようなものが日本から出てこないのだ!というわけで。日本のソフトウェア事情についてはたぶんご存知ないでしょうけど、なにかアドバイスはありますか?

ESR: その人たち、Linuxがアメリカのソフトじゃないってのはわかってるのかなぁ。それはさておき、日本のソフト事情について知ってることが一つあるぞ!
 まず、あのドメイン名がらみのバカな規制をさっさとなくすように言ってやってよ。登記ずみだかなんだかの団体か企業じゃないとドメインがもらえないんだって? あきれたね。そんなもんホイホイあげればいいではないの。そんなつまらん規制をするから、jpドメインでソフト開発する気が失せるんじゃない?インターネット上のオープンソースで国を考えて意味あるかは疑問だけれど、jpドメインのホームページを本拠にするソフトが増えたら、その人たちとしても、もっと嬉しいと思うぞ。


Copyright (C) 1999年、山形浩生

 以上の文書(「エリック・S・レイモンド インタビュー」)は、フリー・ソフトウェアです。あなたは、Free Software Foundation が公表したGNU 一般公有使用許諾の「バージョン2」或いはそれ以降の各バージョンの中からいずれかを選択し、そのバージョンが定める条項に従って「エリック・S・レイモンド インタビュー」を再頒布または変更することができます。

 当文書は有用とは思いますが、頒布にあたっては、市場性及び特定目的適合性についての暗黙の保証を含めて、いかなる保証も行ないません。詳細についてはGNU 一般公有使用許諾書をお読みください。

■GNU 一般公有使用許諾書:
http://www.gnu.org/japan/gpl-2e-plain.txt
http://www.gnu.org/japan/gpl-2j-plain.txt(日本語訳)



- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

Bit Literacy Back Numbers

ご意見・ご要望は編集部
go to Frontdoor

Original articles: Copyright(c) 1999 NTT-X All rights reserved.