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山形浩生の『ケイザイ2.0』

第22回 ホワイトカラーだって実はがんばっていたのか
――企業の間接部門は、生産性が低いという定説はウソ


 ご無沙汰。しばらくバタバタしていたのと、ネタ切れで手がまわらなかったのだ。オンライン雑誌のよさは、スペースとか期日とかにあまりとらわれないですむことだけれど、逆にこうやってネタがないと、ついつい書かなくなってしまうし、あと紙の雑誌とちがってそれがないと誌面に穴があくわけでもないので、編集者も比較的鷹揚だったりする。これはいいことなのかな、悪いことなのかな。人は締め切りがないと仕事をしないとも言うけれど、その一方でいろんな紙雑誌の連載を読んでいると、明らかに生煮えのやっつけなぐり書き文章にもたくさんお目にかかる。こんなものを載せるくらいなら、著者と雑誌の両方の名誉のためにも、落として穴をあけたほうが効用が高いんじゃないかと思えるような記事はいっぱいある。発表間隔を一定に保ちながら、質は大きくばらつくのと、質的にはある程度の水準を保つけれど、発表間隔は大きくばらつくのとではどっちがいいのか――そしてここに、たぶん紙ベースの媒体とネットベースの媒体とを差別化するヒントがあるような気がする。 が、もちろん一定間隔で質の高いモノを書き続けるのがいちばんいいわけではあるので、これはかなり手前味噌のいいわけではあるのだけれど。


●ホワイトカラーの生産性は低いっていう定説

 それはさておき、今回は久々だけどチョイネタだ。中島隆信『日本経済の生産性分析』(日本経済新聞社)という本が出て、これはとってもよいぞ、という話とともに、この本の結論の一つがなかなか意味深でだってことを示しておきたいのであるよ。

 この本の前半は、生産性って何、という説明と、その考え方や実際の計算の仕方についての概論。まあ多くの人は自分で生産性計算をやったりはしないだろうから、ここは流すくらいでもいいでしょ。後半が実証部分だ。そしてその中でも特におもしろいのが、ホワイトカラーの生産性について検討した部分。

 世の中の定説では、ホワイトカラーの生産性は低いってことになっている。低いだけじゃなくて、ここ数十年にわたってまったく改善されていない、ということになっているのだ。ホワイトカラーといってもいろいろあるけれど、こういう話でふつう想定されているのは企業の間接部門ってやつ。人事とか総務とか経理とか。こいつらの生産性は低いし、仕事は旧態然としてまったく効率もなにも上がっていない、というのが一般の認識。

 これにはまず生産部門の恨み辛み、というのはあるんだよね。生産してるところは、ぜんぜん稼いでもいない人事部が勝手に人を動かすもんだから、「けっ、寄生虫のくせに現場の苦労も知らないで」と思ってしまう。経理が出張精算の書類を増やしたりすると「稼ぎもしてねー連中が稼いでる連中の仕事を増やすとはなにごとだっ!」と思ってしまう。そして「何も生産してない連中なんだから、生産性ゼロに決まっておーる! いやそれどころか、連中はおれたちの働きに寄生してコストばっか作っているんだから、生産性はマイナスだぁ! 稼いでいないあの連中が消えたら、ウチの生産性はずっと上がるに決まっておる!」と思うのは人情ってもんだ。 そしてこういう部門の生産性があがってはいないだろうなぁ、という気はなんとなくする。だって、経理なんて、領収書のチェックだの給与明細だの作ってるだけじゃーん。あるいは人事。生産性って、何すんの? リストラ増やしたから生産性上がりました、なんていえないし。研修部なんかどうだろう。企業の生産性に貢献してるんだろうか。うーん。コンピュータ入って効率化が進みましたって言うけど、社印の押印申請だって、交通費精算だって、申請書はオンラインになったけれど処理はぜんぜん早くなってないし……

 ただ、ホントにこういうところの生産性が低いんだろうか、証拠があるのかといえば、実はあんまりなかった。なぜかと言えば、データがないからだ。だって、人事部の生産性ってどうやってはかる? コストはわかるけれど、売り上げとかもないし、仕事の成果を計測するためのデータもないし。だから、いろんな議論はかなりの部分で、粗雑な印象批評の域を出るものじゃなかった。


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