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●市場化の落とし穴:アジアの例
 が……そうはいかなかったのはご存じのとおり。1997年のアジア通貨危機で各国の経済が落ち込んだときに、この買い取り保証というのがものすごい負担になって各国にのしかかってきた。経済が下がると電力需要も落ち込むのに、買い取り保証で使わない電力も買わなきゃならない。さらに、それがドル建てだ。通貨危機のおかげで、現地通貨にすると、これまでの5倍、10倍のお金を払うことになり、一部の国では状況はかなりひどいことになった。うーむ、IPPとか民営化とか市場化も、そんなにいいことではないのかもしれん、という声も少し出てきたわけだ。
 が、それに対してはもちろん、「いや、こういうトラブルは市場化の不徹底によるものだ、そんな買い取り保証なんかで公共が無用なリスクを背負うようになっているのがいけない、もっとリスクの分担をしっかりさせれば、そんなことにはならない」という声が当然出てくる。市場は基本的にはオッケーで、それがゆがみのない形で機能すれば万事うまくいく、というのはまだ信念として残っているし、いまでも世界銀行とかの援助方針はこのままだ。


●先進国の電力自由化
 さて、この仕組みを採用したのは途上国だけじゃない。先進国でもこれは導入されている。たとえば日本でも(日本はここらへんの規制がすさまじく強く、そのため電力料金はすさまじく高い)、大口需要家向けの電力小売りは自由化されようとしている。そしてその根拠となっているのは、一つはイギリス、そしてアメリカのカリフォルニア州をはじめとする地域での事例だ。こうした地域では、すでにかなりIPPの導入と競争型電力市場が進められている。ここでは、途上国みたいにIPPが電力不足に悩む政府のあしもとを見て難題をふっかけるようなことはない。リスク負担もきちんとして、市場はきちんと機能するはずだった。
 が……いま、カリフォルニアは深刻な電力不足に陥っている。あまりに深刻で、市長さんみずから、市のクリスマスツリーの電飾のスイッチを切っちゃったほど。そして一方で、カリフォルニアの発電所を見ると、電力不足が深刻な中で、なぜか1/4の発電所がたまたま、故障していたり、定期点検にあたったりして、稼働していないんだって。もちろん、おかげで電力価格は高騰。電力会社は大儲けをしている。
 これは必ずしもいけないわけじゃない。まあある程度は予想されたことだ。電力が完全に市場化されると、発電会社としても、なるべく需要ギリギリのところしか発電所をつくらないようにするだろう。だぶつくと売れなくて困るからね。電力が完全に公共セクターに属していると、ピーク時の需要に対応するために、かなり余裕をもって発電所をつくっておく(それでも儲かるように保証されているから)。日本の電力のかなりは、夏のクーラーとテレビのピーク時需要に対応するためにつくられている。みんなが暑くてもクーラー我慢すれば、一部の人が嫌う原子力発電所なんかいらないんだよ(まあ原発はとめられないから、ピーク時対応用には使われないけどね)。快適な文明生活を送りながら反原発を唱えるなんてぼくにしてみればちゃんちゃらおかしくて、反原発を唱える人は、反クーラー運動でもやればいいんだけれど、それはさておき。市場化・民営化されると、電力の余裕は減る。だけれど一方で、ピーク時には電力価格があがって、みんなが使用量をおさえるから、それはそれで結構だし、あまりあがりすぎるようだと、電力会社はそれを見て、じゃあもっと発電施設をつくろうと思うはずだ。だから、これはこれでいいはずなんだけれど……


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