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●いまやテクノユートピア的な見方に失望している

で、EFFだ。ここは昔から、反クリッパーチップのロビイング活動を積極的にやった り、特に実害のないクラッキング活動に対する弁護などを進めてきた、とっても役に たつ有益なところだった。でもそれ以上に、ここはオンライン上の自由やリバータリ アニズム的なインターネットの見方の大きな砦でもあった。インターネットは自由で あるべきだ、インターネットへの政府介入を許すな――そういう考え方の一大牙城が EFFだったし、EFFがすごかったのは口先だけ声明を出したり、オンライン署名なんて いうちんけなことをして悦に入るのではなく、実際に金を集め、支援者を動かし、ロ ビイングをして、さらには自前の調査研究までして活動できる、そういうパワーのあ るところだった。たとえば『DESのクラッキング』み たいな実際の開発研究までやってしまう、いまでも非常に優れたところではある。た だ、ケイパーがWiredの表紙に出た初期の頃には、むしろネットのあるべき姿、理念と いった面での声明がすごく多かった。

でも、最近はもうそういうのはほとんど見られなくなっている。

そしていつの間にか、ミッチ・ケイパーはこのEFFを退いていたんだね。いま、かれの 名はEFFの役員や評議員の一覧に載っていない。そして最近、「あの人はいまどこ へ?」記事でかれのインタビューが登場した。

http://www.zdnet.com/intweek/stories/news/0,4164,2631352-5,00.html

このインタビューはなかなかおもしろい。ミッチ・ケイパーは、ロータス社を興し、 研修を通じたプロモーションと販売というビジネスモデルを確立した優れた実業家で ある一方で、あのトンデモな超越瞑想(TM)を教えていた時期もあるんだね。テク ノ、オカルト、リベラリズム――そんなのが混在した、まさにあのインターネット普 及初期のあの変な雰囲気にはマッチした人物、ではあったんだね。そのかれが、おそ らくはこのEFFの時代を念頭におきながら、こんなことを言っている:

「わたしはかつて、テクノユートピア的な見方をしていた。たとえば、インターネッ トが中央集権でない、ジェファソン的な民主主義を実現する、とか。いまでは、テク ノロジーででっかい社会変革がもたらされるとは思わない」

もちろんケイパーはまちがっていて、テクノロジーは常に社会を大きく変革する。た とえば銃、鉄、文字、紙、宗教といったテクノロジーがどのように社会を変えたかに ついては、ぼくなんかがいい加減な説明をするよりもジャレッド・ダイヤモンド 『銃、病原菌、鉄』(草思社)を是非とも読んでほしい。これはすごい本だから。テ クノロジーは世界を変えるし、長期的にはテクノロジーしか世界や社会を変えない、 とすら言っていいくらいだ。

ただし、ミッチ・ケイパーの言っていることは、そういう一般論ではない。かれはネ ットの持っていた、初期の社会変革理念に、絶望はしないまでも失望しているんだ。


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