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山形浩生の『ケイザイ2.0』

第19回 ミッチ・ケイパーいまいずこ
――ネットの現実化と、ミッチ・ケイパーの失望


● EFFのミッチ・ケイパーという人

この hotWired の親雑誌、とでも言おうか。Wired(本国版)が創刊されたのは、 1993年だった。そしてその第二号(の片方。Wired創刊二号は二種類あったのだ)の表 紙を飾ったのは、ロータス社の創設者にして、Electronic Fronteer Foundationの創 始者でもあるミッチ・ケイパーだった。

Wiredは基本的には、テクノロジー万歳の自由放任政府排除支持型ビジネス雑誌だっ た。いまはもっとそうで、それがこうじて完全にただのテクノロジー色の濃いニュー エコノミー翼賛雑誌になっちゃっていて、コンデナスト社に買収されてからは、ほか の雑誌がだんだん技術っぽい話ができるようになってくるにつれて、いまではもう特 色を出すのに苦労している感じ、だろうか。でも、昔はテクノロジーとビジネスっぽ い話をそこそこまともにからめて扱える数少ない一般雑誌はWiredくらいだった。

ケイパーがWiredの表紙に出たのは、その EFF の代表としての顔からだ。そして当時 の EFF というのは、反クリッパーチップ運動でものすごく盛り上がっているところだ った。クリッパーチップというのを知らない若い子のために書いておくと、これは通 信機器のセキュリティを高めるために設計された暗号チップだった。ただし、すべて 暗号化されると、犯罪捜査のときに捜査当局が困る。だから裏口をつけて、政府が必 要なときには盗聴できるようにしよう、という代物だった。これはもちろんあらゆる 通信機器に採用を義務づけなきゃならないし、ほかの暗号は使われないようにする必 要がある。EFF は、これはプライバシーの侵害だ、政府による自由なインターネット への介入だとして、ものすごい反対運動を展開した。 ただしほとんどの人は、この「政府が盗聴できる裏口」という部分にすごく反応した んだけれど、でも一方でセキュリティをどうするかという話についてはぜんぜん考え なかった。クリッパーで政府に盗聴されるのはいやだ、といまでも平文のメールはい っぱいやりとりされていて、やろうと思えば裏口なんかなくても多くの人の通信は見 られる(企業ではいくらでもやられている)。でもまあ、それはまたべつの話。


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