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山形浩生の『ケイザイ2.0』

第18 回 アマゾンがもしつぶれたら

文/山形浩生


『アマゾン・ドット・コ ム』の書評がのったけど・・

 いや失礼。ご無沙汰をいたしておりました。しばらくモンゴルのいなかめぐりをしていて、原稿を送るどころか書く余裕もなかったのでありますよ。なんといっても、連日十時間くらいオフロード を四駆で走るような状態がつづいているし(モンゴルの道というのは舗装どころかはっきりした路面もなく、草原と荒れ地のなかをなんとなく轍(わだち)が十本くら い、ばくぜんと同じ方向に向かって並行して走っている、という程度のものなの だ)、ネットはおろか電気さえ、県庁所在地ですら夜11時以降は切れるようなところ。まとまった原稿を書いている余裕はほとんどなかったのだ。さらに食事は……だが、この話はまたいずれ。

 さて、帰ってきてみると、ぼくが解説を書いたスペクター『アマゾン・ドット・コ ム』(日経BP)の書評が日経新聞にのっていたという話だったので、さっそく読んで みた。日経新聞の8月13日の書評欄だ。書評したのは、一橋大学の米倉誠一郎だ。

 米倉誠一郎。ぼくはこの人の『ネオIT革命 日本型モデルが世界を変える』(講談 社)という本について、ブック1(http://www.bk1.co.jp/) の連載書評で酷評した。 だって、最初のやつだってまだどこまでモノになるかわからないのに、もうネオだ ぁ? 中身も思いつきだけなんだもの。

 その仕返し、かどうかは知らないけれど、この書評ではぼくの書いた解説について、 こんなつれない言及があるのだ。「また、ひとりよがりの解説(山形浩生)はなかなか鋭くおもしろいが、なくてもよい。」

……なくてもいい、だと。ひとりよがり。うーむ。

 さて、こう書かれたことを根に持つわけではないんだけれど(いや、ちょっとは根に持つな。だって「おもしろい」なら、ふつうに考えればないよりあったほうがずっといいじゃないか。鋭いならひとりよがりでは必ずしもないってことじゃないか。それに個人的には、あの解説はアマゾン・コムについての説明としては類を見ないくらいコンパクトで包括的で、ひょっとしてあの本文よりも役に立つんじゃないかと自負しておるのだ)、うーん、この書評にはそれとは別に、とっても困ったところがあるな、とぼくは思う。そしてそれは米倉一人じゃなくて、ある種、この手のネットなんとかを語るときの、一種のはやりみたいになっている言いぐさでもあるのだ。だから今回は、ちょっとその話をしておこう。


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