Valid XHTML + RDFa cc-by-sa-licese

『高度一万メートルからの眺め』 連載 15 回??

民主党ははやくも無能を露呈させすぎ

月刊『GQ』 2009/11月号

要約:民主党政権になって一ヶ月目、すでにひどすぎるんじゃないの?


 たまにはまじめな話をしようか。民主党が政権の座について、執筆時点で一ヶ月弱。その間の推移を、ぼくは信じがたい思いで見ている。

 民主党は、官僚主導の政治から政府主導の政治へ、などと主張している。それ自体としては、特に文句はない。ただし、官僚主導の何がまずいのか、そして政府主導だとそれがなぜ改善される(と思われる)のか、ということは明確にしておくべきだろう。

 驚いたことに、民主党はそれをまともに説明したことがない。が、一般には、何やら官僚がいろいろお手盛りで悪いことをやっている、というのが通念となっている。かれらが、自分たちの利権を増やすべく、自民党の代議士と料亭でごそごそ密談して、あれこれ無駄なことに税金を使っている。そういう官僚のお手盛りをやめさせて、国民に選ばれた政府がもっと開かれた形で政策決定をやるべきだ、というのが官僚主導から政府主導、という話の基本線だとぼくは理解している。

 さて、ぼくは官僚がそんなに悪いことをしているとは思っていないし、この図式は誇張されていると思う。が、それはとりあえずおいておこう。この発想に基づくなら、政府主導の政治というのは、もっとアカウンタビリティの高い政治でなくてはならない。各種の政策をやるにも、なぜそういう政策が実施されるのかを、官僚主導のときよりきちんと説明して行わなくてはならないはずだ。

 ところが……民主党の考える政府主導というのは、そういうことではないようだ。それぞれの分野について何の知識も経験もない素人大臣が、自分の思いつきだけでまったく根拠なしに勝手な「政策」と称するものを、何の説明もなしにふりかざすというのが、政府主導ということらしい。

 たとえば亀井静香が、いきなり中小企業向け融資の返済猶予を、と主張してその法制化を図っている。なぜ返済猶予が必要なのか? どのくらいの中小企業が困っているのか? モラトリアムをやったら金融機関は融資を一層引き締めるだろうけれど、その影響は? そうした説明は一切ない。官僚が政策をたてるときには、どんなものであれ一応それなりの説明資料があり、もっともらしい理由付けはある。亀井静香にはそれがまったくない。何の説明もないまま思いつきのごり押しだ。それで銀行がやばくなったら? そう問われると、公的資金を注入すればいいと、これまた何の検討もなしに思いつきで気軽に口走ってくれる。アカウンタビリティはかえって下がっているじゃないか。

 あるいはいま八ツ場ダムの建設中止をめぐる騒動。今さら工事を中止する方がお金がかかることがわかり、地元からも猛反対をくらって身動き取れないのに、とにかく中止は絶対。理由は? 民主党のマニフェストにあったから。でも、なぜ無駄遣いをかえって増やすような政策がマニフェストに入っていたんですか? その説明は一切なし。とにかく民主党様がそう決めたから、是が非でも押し切ります、というだけ。これまたアカウンタビリティ皆無。中止することが万人、少なくとも多数の人々にとって本当によいことなんです、だから地元の方たちは泣いてください、保証はしますから、ということをはっきり言うことが、真に説明責任を果たすことであるはずなのに、そうした努力はまるでない。とにかく中止です、話し合いましょう、でも話し合っても結論は変わりません――なんですの、これ?

 そしてその思いつきをどう実現するかについては、素人大臣の皆さんは何らアイデアをお持ちでない。それどころか、断片的な政策と称するもの以外には、その官庁の担当分野をどういう哲学でどう切り盛りするか、という大きな見取り図も一切持っていない。これが政府主導? 素人の説明もつかないような支離滅裂な思いつきを並べ立てるのが?

 これがスタート時点の混乱にすぎないと信じたいところではあるけれど、ぼくにはとてもそうは見えない。そしてこれがこの先何年も続いたら……



前号 次号 GQ コラム一覧 山形日本語トップ


YAMAGATA Hiroo <hiyori13@alum.mit.edu>
Valid XHTML + RDFa クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
このworkは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
の下でライセンスされています。