{Halloween VII}

ハロウィーン VII: 調査曰く

原文は http://opensource.org/halloween/halloween7.php をどうぞ。

 以下に再現した文書は、2002 年 9 月にベルリンのマイクロソフト事務所で開催された、マイクロソフト内部の Linux 戦略レビューで発表されたものだ。ぼくがこれを受け取ったのは 2002 年 11 月 5 日だ。

学べること

 このメモから見て取れそうな、オープンソース支持者に対する戦術アドバイスをまとめると、以下のようになる:

 メモの雰囲気は全体としてかなり防衛的だ。パニックの様子はあまりないけれど、でも研究者たちはオープンソースのコミュニティに対して勝っていることを、自分自身の数字が示しているような論点を指摘できずにいる。

 それどころか、数字を見るとぼくたちは勝っているようだ。どうやら、このまま道をはずれないようにするだけでいいらしい。

メモを読む

 お役だち用語集。最初のうちは BDM と IT Pro をまちがえてたのだ。こうした用語の定義は、マイクロソフト経験のある人々が訂正してくれた。

BDM
Business Decision Maker (ビジネス意志決定者): IT やソフトウェアの調達に関する方針決定をする人物。重要な特徴としては: (1) 技術上の購入についてのお金と意志決定権限を有すること、(2) 当人は技術に詳しくないこと。言い換えると、まぬけな上司、ですな。

開発者
コードを書いて生計を立てている人。これは大企業(フィデリティ投信や電話会社のヴェライゾンなど)向けカスタムコードでもいいし、ISV (Intuit やアドビみたいな「独立ソフトウェアベンダー」)用コードでもいい。コードを書かない技術者は含まないし、それで生計をたてていない人も含まない。

IT Pro
システム管理者、ネットワーク管理者、DBA など、運用に主に関わる技術者。ときにはこの人物は開発者でもあるけれど、そうでないことも多い。

Issue Elites
どうやら教育や政府での政策立案者や(ちょっと確実ではないながら)戦略レベルの企業重役の中で影響力の強い指導者を指すらしい。

 マイクロソフトのいつもながらイカレた HTML ツールによって生成された、腐ったマークアップは修正してある。赤字 の部分は、ぼくが特筆すべきだと思ったところ。ぼく自身のコメントは緑字だ。


調査 E-Bulletin: 共有ソースとオープンソースに対する態度研究調査

本情報は取り扱い注意を要するため、回覧は本文書が明らかに有益となる人物のみとしてください。Linux 戦略レビューコアとバーチャルチームのメンバーにおいては、本情報は Linux 戦略レビューにおける背景情報としての利用/理解のためのものです。

{ふむ、たぶんぼくは本文書が「明らかに有益となる」人物には該当すると思う。いやあ、法的に立場が認められてありがたいね!}

Executive Summary

 本メールは、Kathryn Marsman の監督下で David Kaefer と Jason Matusow により行われた「共有ソースとオープンソースに対する態度研究プロジェクト」の詳細まとめを提供するものである。共有ソースプロジェクトは、主要顧客がオープンソースや Linux、共有ソース、GPL をどう認識しているかについて、よりよい理解を得て、各顧客層ごとにどんなメッセージが有効かについてさらなる理解を得るために実施された。 調査はアメリカ、ブラジル、フランス、ドイツ、スウェーデン、日本で行われ、開発者、IT と非IT の BDM、IT Pro, Issue Elite たちを対象とした。アメリカを除いては、個別の国と顧客サンプルの数がきわめて小さかったことについてはご留意いただきたい。本調査アンケートとサンプルは、レッドモンドの本社と子会社および調査会社が共同で開発したものである。すべてのデータ収集は電話インタビューを使った。調査は 2001 年の 7 月末から 9 月にかけて実施された。以下の詳細サマリー では、OSS と Linux についての認知度と好意の度合い、人々が OSS や Linux を支持する理由として人々が何を挙げたか、共有ソースに対する馴染み深さと好感度、および、OSS と Linux、共有ソースのメッセージについて調査が行われた。以下に主要な結論を示す。

 まとめると、OSS と Linux を知っている人々は、これらに対して好意的に傾いている。本調査を個別研究と結びつけると、多くの場合にここで報告された「好意性」は合理的というよりはもっと感情的なものだろうと想定できる。この状況では、OSS、Linux、GPL の対する支持の削減を狙った合理的議論は、うまく機能するとは考えにくい。すると短期的には、マイクロソフトはOSS と Linux を直接批判することは避け、今後も継続的にいずれ TCO 議論で勝てることを目指した開発を続け、はっきりした個別観客ごとの論点証明を持つ肯定的な共有ソースのメッセージ提供に焦点をしぼるべきである。

{なに、連中は総所有コスト(TCO)議論でこっちに勝とうとするわけ?! うーむ。ここまではかなり正気だったのになあ。相手方が主要な問題点について相変わらずあさっての方向を向いてるのを知るのはうれしいね。それともかれらは単に、マイクロソフトがいま手を焼いている最悪の顧客反乱が、新しい XP ライセンス方式が TCO にとって持つ意味をめぐってのものだ、ということをあっさり見落としているんだろうか?}

詳細サマリー

オープンソースソフトウェア (OSS) と Linuxの認知度と好感度

オープンソースソフトウェアと Linux に対する支持

マイクロソフトの共有ソースアプローチの認知度と好感度

オープンソースと Linux のメッセージ

共有ソースのメッセージ

まとめ

追加情報(調査結果/個別国および Executive Decks):

調査についての問い合わせ先: Kathryn Almendarez Marsman, Research Manager, kathalm


Eric S. Raymond <esr@thyrsus.com>


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YAMAGATA Hiroo (hiyori13@mailhost.net)