血も涙もない損得勘定だけの冷血ファイナンス屋養成講座
講師:山形浩生(野村総合研究所 社会産業研究部、内線0-6227)
更新:1998.07.02 02:13 次回講義案内更新!
次回案内:
テーマ:ケーススタディのおこたえ
日時:1998年7月16日(木) 18:30-20:00
場所:新大手町ビル NRI 旧社会産業研究部会議室
目次
1. 目的:
経済のグローバル化とサービス化にともない、日本経済も未曾有の大競争時代に突入し、さらに金融ビッグバンにともなって、新たなファイナンスの専門性が情報世紀の創造企業たる弊社にも、ますますシビアに要求されつつある・・・・・・
なーんてのは笑止! ファイナンスは、実は非常に単純な原理に基づいていて、専門性なんかあんまり必要なかったりする。ファイナンスの原理は以下の3つ。
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手の中の1羽は、藪の中の2羽に優る(が3羽なら考えちゃうかもしれない)
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今日の1ドルは明日の1ドルより価値がある
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卵は一つのバスケットにいれておかないほうが安心
こんだけ。これを数字でギチギチ理屈づけたのが、ファイナンスのすべてである。そしてそのために必要な能力はほんのわずか。
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心配事をギチギチほじくりだしてくる能力(物事を悪い方へ、悪い方へと考える能力)
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疑心暗鬼能力(他人が裏切るんじゃないかと心配する能力)
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手元に入ってくる金をしっかり考える能力
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お金として表現されないものは信用しない能力
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すんだ話はくよくよしない能力
ただし、これはぱっと見ると簡単だけれど、それを実際に徹底させるのは、慣れないうちは難しい。
そこで今回の講義では、上の考え方をさまざまな場面で妥協なしに適用できる、血も涙もない損得勘定だけの冷血ファイナンス屋養成を目的とする。
2. この講座を受講してなにができるようになるか:
約束はできないが、以下のようなことができるようになるはず。
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われらが親会社に対する軽侮の念を抱けるようになる。
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ファイナンスなんか、実はたいしたことない、というのが理解できる。
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ファイナンスのいろんなメカニズムがわかるようになる
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ファイナンスでできないことをちゃんと理解してもらう。「証券化」と聞いてもおそれいらず、「それがどーした」と言えるふてぶてしさが身に付く
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事業のキャッシュフロー分析ができるようになる
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事業収支が組めるようになる
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リスク分析ができるようになる
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現在価値、IRRなどの計算ができるようになる
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ファイナンス的な企業の経営判断ができるようになる
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新規事業に手を出すべきかが判断できる
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いろんな資金調達手法のメリット、デメリットがわかる
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世界のファイナンス屋と(ほぼ)対等にわたりあえるようになる(態度さえでかければ)
3. 対象者と受講条件:
原則として野村総合研究所の社会産業研究本部に属する、おれより若い(入社年次的に)子。社産と情通の知り合い中心で募集しているが、他にも興味を持ちそうな子がいたら声かけて。また、あまり生意気でなければ、年寄りも参加可能。
条件としては以下の通り;
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宿題はやれ。
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手は動かすこと。
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立派なレポートより、その場の簡単な殴り書き計算を重視すること。
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英語はある程度読めること。
4. 場所と時間:
原則として木曜の18:00-19:00,どっかの会議室で。正式なアナウンスはこのページで発表する。たぶん隔週くらいになるでしょう。
5. 内容とスケジュール予定
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ハイリスク・ハイリターンとは?
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IRR と NPV と 割引率
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相手によって割引率がちがうのはなぜ?
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情報と値段、立場と値段
5月:事業収支をつくる:(宿題、教材、解答もどき)
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会計的な収支とキャッシュフロー
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sunk cost
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ダメな事業をファイナンスで救うことはできない
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リスクはどこからくるか:事業ごとのリスクの差
5月:リスク評価の場としての証券市場(2回)(宿題、教材、解答もどき)
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株ってなに?
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株のお値段はどうやって決まっている?
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投資と株の値段
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ランダムウォーク仮説(とカオスっぽい話)
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Diversificationとポートフォリオ
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CAPMとベータ
6月:Capital Structure(宿題、教材、解答もどき)
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企業の借金:我々のローンとのちがい
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レバレッジとはなんぞや
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企業は、どのくらい借りればいいのか
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最適な資金構成とは
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Modgiliani & Miller (M&M)の法則
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税金の役割
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WACC (Weighted Average Cost of Capital)
7月:オプション(宿題、教材、解答もどき)
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オプションとは手付け金である
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オプションの種類
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オプションのお値段(結果が2通りしかない場合)
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ブラック・ショルツの公式(マジにはやんないよ)
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オプションの組み合わせによる変なオプション
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企業や事業の中でオプションを考える意味
7月:先物と外国為替(宿題、教材、解答もどき)
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先物ってなんだ
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先物市場の仕組み(一日ごとの精算、差額だけが動く)
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外国為替の仕組み
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PPP
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為替リスクを避けるために:オプション、先物、スワップ
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ドル経済圏? ユーロの脅威?
7月以降:ケーススタディ
To be announced...
6. 参考文献:
Brealy and Myers Principles of Corporate Finance
(5th Edition, 1996, McGraw Hill)
よい本。ボストン近辺のMBAどもはみんなこれでお勉強する。なにか議論になったときに「でもブリーリー&マイヤースに書いてあったもん」といえば、向こうはだいたい引き下がる。
Paul Krugman 『期待しない時代』
山形浩生訳、メディアワークス近刊。ただし、山形のプライベートバージョンは、単行本には入らない章がいくつか含まれているので、持ってない人はもらいにくるように。無料。
YAMAGATA Hiroo (hiyori13@mailhost.net)