最初の経済学者たち

原ページ
 
Google
WWW 検索 cruel.org 検索

 16 世紀ヨーロッパはルネッサンス末期で、大航海時代と宗教改革の開始もあって大忙しだった。この時代はきわめて重要な経済イベントが大きな特徴だ。すなわち、新世界における大量の黄金と銀の発見だ。結果として、ヨーロッパはすさまじいインフレに襲われた。物価水準は 15??年から16??年にかけて xxx から xxx まで急上昇した。だからこれは商人や政治家や一般市民にとって大きな懸念となり、その多くは当時の学者たちに、これはどういうことか説明してくれと訴えた。

 インフレは別に目新しい現象じゃなかった。インフレはこれまでにだってあったけれど、それは一定量の貴金属のストックをもとに、貨幣を過大に鋳造することから生じたものだった。貨幣の過大鋳造は、貨幣改鋳(つまり貨幣の貴金属部分を減らしてもっと安い金属を混ぜる)行為と、貨幣の削ぎ落とし(ちまり鋳造された貨幣のふちを削り落とすこと。これはヨーロッパ全土ですさまじい罰則対象となっていた)から生じていた。こうした手口はどちらも物価水準上昇を起こすものとして有名だったし、学者たちもそれは認識していた。

 でも、16 世紀の大インフレは、その範囲も原因も目新しいものだった。史上初めて、貴金属の総量が変わったからだ。結果として、もっと深い経済問題が問われるようになった。つまり、貴金属のストックと生産を決めるのは何か、これはずばりどうやって物価水準に影響するのか、そしてどうすればそれに対処できるのか? あらゆるインフレの原因は、貨幣供給の増大であるとはっきり指摘したのは、フランスの法学者ジャン・ボーダン (Jean Bodin) (1566) だとされることが多い。かれは、その供給増が、輸入だろうと海賊行為だろうと、改鋳だろうと削ぎ落としだろうと、どんな手段で起きても関係ないとした。ただし貨幣数量理論家の最初の人物と一般には言われるけれど、実はそれを思いついたのは、コペルニクスサラマンカ学派のほうが先だった。

 強力なカトリック教会にとって、インフレは第二の困難を引き起こした。つまり、それは負債の価値を引き下げたので、fledgingな資本家たちは、その損失分を補うために高い金利をつけざるを得なかった。これは教会の教義にとっては困った話だった。利息はあまりいい顔をされなかったけれど、インフレがある以上、利息を認めないことも不公正に思えた。 justum pretium (「公正価格」) をめぐる論争が Ecclesiastical 階級では復活し、適正な商慣行を明らかにしようとした。スペインのサラマンカ学派がこの改訂においては主導的な役割を果たし、「公正価格」というのは市場が決める通りのものだ、と論じた。この考え方を擁護するにあたり、かれらは効用主義的な倫理の考え方を採用し、議論の過程で価値の希少性理論を打ち出した――これはずっと後に、限界革命で復活してくる。

 宗教改革はヨーロッパの経済に大きな影響を与えた。宗教改革が育んだ新しい姿勢は、重商主義や後の資本主義時代の基盤を整えたとされる。でも、宗教改革の二大推進者、マルチン・ルターとカルヴァンは、経済問題については考えがちがっていた。マルチン・ルターは、論理学者フィリップ・メランクトン (Philipp Melancthon) の指導のもとで、経済問題については古いスコラ派的な立場から離れなかった。たとえば利息の禁止に合意し、独占商慣行、金融投機、贅沢品の輸入などを、スコラ派よりさらに強く糾弾した。教会的な権威が終わった以上、こうした規則を強制するために世俗の権威が介入すべきだとルターは主張した。こうした介入の呼びかけは、重商主義の国と商業の結びつきを説明できるかもしれないし、またかれの政治コミュニティ推奨は、さらにその国家主義的な味付けも説明できるかもしれない。

 それに引き替えジョン・カルヴァンの影響は、重商主義にはあまり関係なく、むしろその後の資本主義時代と関係が深いとされる。カルヴァンの神学は、国家主義や国の入る余地のないもので、どちらも宗教権威より下の存在とされていた。一方、商業と資本主義の入る余地はたくさんあった。カルヴァンは、「天職」という概念を通じてプロテスタントの労働倫理形成と強く関連しており、マックス・ウェーバーは後にこれをヨーロッパにおける経済発展パターンの説明として提唱した。経済問題の面で、カルヴァンはルターとちがって、スコラ派教義を丸ごと捨ててもまるで平気だった。かれは従来の利息に対する禁止に批判的で、過剰でなければ利息はまるで問題ないと論じた。

[15世紀以前の経済思考については、このサイトの古代思想家とスコラ派のページを参照。17 世紀の経済については重商主義のページと社会哲学者のページをどうぞ)

カトリックの論者

プロテスタントの論者

16 世紀に関するリソース


ホーム 学者一覧 (ABC) 学派あれこれ 参考文献 原サイト (英語)
連絡先 学者一覧 (50音) トピック解説 リンク フレーム版

免責条項© 2002-2004 Gonçalo L. Fonseca, Leanne Ussher, 山形浩生 Valid XHTML 1.1