ホルブルックとエルマーのワーキング兄弟は、どちらも優れた統計学者で、計量経済学 の初期の発展に大いに貢献した。
ワーキング兄は、スタンフォード食料研究所で農業経済学者だった。かれの需要に関する初期の研究 (1925 - これは シュルツ よりはやい) は「識別問題」(identification problem) の最初期の実証だったが、ワーキングはこれを単なるデータ上の問題とみなし、理論的な問題とは考えなかった。スラツキー と「確率アプローチ」に対して早い時期に共感を示したのも先見の明があった。
でもかれをもっと有名にしたのは、ファイナンス理論のほうだろう。ここでかれは先物市場とヘッジに関する理論を進めた。特にワーキングは、先物によるヘッジをする人々はすべてのリスクを逃れるために投機家にリスクプレミアムを払うのだ、という ケインズ (1923, 1930) の見方を否定した。ワーキング (1953, 1962) は、ヘッジをする人々はそれでもリスクを負っている――が、そのリスクの種類はちがって、quantity risk を負うのだ、と主張した。だからヘッジをかけるのは、ワーキングに言わせれば、ふたつの市場――スポット市場と先物市場――の間のアービトラージでしかない、というわけだ。
計量経済学における「識別問題」(identification problem) 問題の本当の性質を実際に発見し、その解決法が少なくとも部分的には理論的なものだと初めて示唆した。かれの具体的な提案は、データを先に補正するために理論を使う、というものだった。ワーキングの需要をめぐる統計調査のサーベイ (1934) は権威となっており、計量経済学が経済理論と政策の双方にとって重要だということを示すのに大いに役立った。
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