ハーバート・A・サイモン (Herbert A. Simon), 1916-2001

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 ハーバート・A・サイモンが、ミクロ経済学に革命じみたものを起こしたと主張する人は多い。その革命とは、組織の中の不確実性下における「意思決定」という概念だ。サイモンによればこれは、主流ミクロ経済学で想定される「合理的人間」とはかけ離れたものだ。こういう批判を述べたのはもちろん、サイモンが始めてというわけではないが、でも知名度はサイモンが圧倒的に高い——そしておかげで1978年には ノーベル祈念賞をもらっている。

 サイモンが経済学に手を染めたのは、 コウルズ委員会 でのことだった。だからその最初の論文いくつかは、同委員会の色が濃い。特に重要なのは、非負正方行列の「ホーキンス・サイモン条件」を明らかにした1949年論文だ。

 サイモンはその後、産業組織の研究をはじめ、あれこれ見つけた中で特に注目されたのは、企業の内部組織と、企業の外的な事業上の意思決定が、新古典派理論にいう「合理的」意思決定にはちっともあてはまらない、ということだった。1950年代にかれは怒涛のように本や論文を発表し、そこでは意思決定の問題にかなり専念している——そして「限定合理性」に基づく行動理論を考案した。サイモンによれば、エージェントたちは将来について不確実性に直面し現在情報を得ようとすると費用に直面する。つまりこの二つの要因が、エージェントによる完全合理的な意思決定の度合いを制約してしまうのだ。したがってサイモンによれば、エージェントたちには「限定合理性」しかなく、意思決定は「最大化」によるのではなく、「こんなもん化」("satisficing" 訳注:satisfy とsufficeのかばん語)、つまり「こんなもんか」というがんばり水準を設定し、それが達成されればそこそこの成果ということで満足し、達成できなければ当初の期待水準を下げるか意思決定を変えるかすることによるのだ、という。こうした「限定」され不確実な現実世界では、こうした「経験則」がエージェントたちの達成できる最大限なのだ。

 サイモンは、研究のほとんどを、実際の企業における意思決定の無数の調査で裏付けている。この中から「最大化」エージェントとしてではなく「こんなもん化」エージェントとしての、企業の「新」理論が産業組織論に根付き始めた。一般に、サイモンの限定合理性理論は、いわゆる 「新制度学派」経済学の重要な一部となっている。

ハーバート・A・サイモンの主要著作

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